パンセの諸版
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第1写本にないB35ファイルをふくむ。これは単なる第1写本の写しではないことを示す。

原則として各ファイルのページは別々だが、一つのページ内で、あるファイルが終了後、続けて次のファイルが始まる場合がある。p.102でA11からA12、p.129でA15からA16、p.433でB3からB4。(およびピエール・ゲリエの筆写とみられる部のpp.400,401)

第1写本との筆写関係

第1写本に原文判読の苦労のあとがある多くの場所は、第2写本できれいに書き直されている[5]。つまり第1写本(またはメナールの言うゼロ写本)から第2写本への筆写が推定される。

ただし単なる第1写本の写しではない。

B35ファイルがある。

第1写本に「次の同一語までの見落とし」があり、第2写本ではなおっている個所がある[注 6]

これを説明するため、メナールは「ゼロ写本」から第2写本に写されたと考えた[2][注 7]。他に、田辺の指摘[7]のように、筆写家が自筆原稿を再読して書き直した可能性もある。
制作時期・制作意図

おおよそ第1写本(またはゼロ写本)の写しであるので、自筆原稿の解読校正作業が終了した時以後。

第1写本内の加筆のうち、ポール=ロワイヤル版発行のための文章の改変は反映されていないので、それが行われる以前。

上記の制作時期が推定されるため、第1写本がパスカルの原文の一応の完成原稿となった時点で、清書として作られた可能性が考えられる。
追記加筆

第1写本に比べて加筆は少なく、校訂者はほぼ一人で、エチエンヌ・ペリエとされる。

pp.399-402(および第2写本が終わったあとの、pp.539-554のB19の複写)は別人(ピエール・ゲリエとされる)の筆写となっている。

製本時期

第2写本は『パンセ』とは無関係な文書を後ろにふくめて製本されている。現在の形に製本したのはピエール・ゲリエの所有後であり、1730年代以後とみられる。
ファイルの順序を決めたのは誰か?

筆写終了後まもなく、正式な製本はされなくとも、仮綴じはされたはずである。ポール=ロワイヤル版編集の分業体制から、B群ファイルを一番読み込んでいたとみられるのはエチエンヌ・ペリエである。かつ清書写本をペリエ家に保存することを企図する人物としても、彼は有力候補である[注 8]
両写本のファイルとページ数

両写本の各ファイルのページ数を示す。以下のAファイルの題は「目次」の題(塩川訳[1])。Bファイルの題は塩川による仮題。

ファイル第1写本第2写本
目次00
A1 順序1-313-15
A2 むなしさ5-1417-32
A3 みじめさ15-2333-42
A4 倦怠2745
A5 民衆の意見の健全さ 現象の理由31-3647-56
A6 偉大さ37-4157-61
A7 矛盾45-5265-74
A8 気晴らし53-6075-84
A9 哲学者61-6285-87
A10 最高善65-6691-93
A11 A・P・R69-7595-102
A12 始まり77-80102-105
A13 理性の服従と使用81-84107-111
A14 優越85-86111-113
A15 移行89-101115-129
自然は損なわれている (これは対応ファイルなし)
A16 他宗教の誤り105-110129-136
A17 愛すべき宗教113139
A18 基礎117-122143-149
A19 表徴としての律法125-140151-168
A20 ラビの教え141-144171-174
A21 永続性145-149175-179
A22 モーセの証拠153-154183-185
A23 イエス・キリストの証拠157-164187-194
A24 預言165-172197-206
A25 表徴173207
A26 キリスト教の道徳177-182209-215
A27 結論185-187217-219
目次その2189
B1 総覧191-1991-10
B2 護教論的論説 1 賭201-208411-418
B3 護教論的論説 2 宗教的無関心の反駁209-220419-433
B4 護教論的論説 2の2221-222433-435
B5 護教論的論説 3 堕落と贖い225-232437-445
B6 ユダヤ人の状態 1233-234447-449
B7 ユダヤ人の状態 2237451
B8 ユダヤ人の状態 3241-244455-459
B9 ユダヤ人の状態 4245-246461-463
B10 ユダヤ人の状態 5249465
B11 堕落253-258469-475
B12 預言 1259-265477-484
B13 預言 2267-268485-486
B14 預言 3271-277489-497
B15 預言 4279-283499-504
B16 預言 5285-286507-509, 400
B17 預言 6289-297511-520
B18 預言、ユダヤ人の状態など301-303523-525
B19 表徴305-309527-531
B20 権威と信仰など313-314405-407
B21 幾何学の精神と繊細の精神 1317-318401
B22 幾何学の精神と繊細の精神 2321-323401-404
B23 雑纂325-346275-300
B24 雑纂 2349-361303-318
B25 雑纂 3365-384321-344
B26 雑纂 4385-398347-373
B27 雑纂 5401-408375-383
B28 雑纂 6409-413385-390
B29 雑纂 7417-423391-398
B30 雑纂 8425-428399
B31 雑纂 9429-430400-401
B32 奇跡 1 バルコスへの質問状435-437229-232
B33 奇跡 2439-454235-253
B34 奇跡 3455-472254-273
B35 エズラの作り話221-228

どちらの写本のファイル順序がパスカルの意図に近いのか?

どちらの順序がパスカルの意図に近いか、決定する事はできない[2]。内容としてはどちらでも不自然ではない[注 9]
その他の写本
ペリエ写本

パスカルの姉ジルベルトの第5子、ルイ・ペリエが作成。第1・第2写本作成時に、個人的な性質が強いとして除外された自筆原稿を集成。この写本自体は失われたが、その写しを1944年にラフュマが入手、『パスカルの未刊の三断章』として発表。

ラフュマ913-948(セリエ742-769)分は自筆原稿あり。

ラフュマ978-982(セリエ743-782)分は自筆原稿なし。

ゲリエ写本

マルグリッド・ペリエが所蔵していた文書などは1723年頃、クレルモンのオラトリオ会図書館に寄贈された。同会士のピエール・ゲリエが作成した写本。そのうち一つの写し(テメリクール嬢写本)は国立図書館蔵 手写本部 12988号。

ラフュマ983-993(セリエ804-812) (パスカルの自筆原稿はない)

ジョリ・ド・フルーリー草稿

ジョリ・ド・フルーリー(フランス語版) (1675-1756) の蔵書のうち、国立図書館 手写本部 2466号 内の記事。「印刷刊行されるべきパンセ」の表題あり。ポール=ロワイヤル1678年版に採用計画があったらしい。メナールが発見し、1962年に『未刊のパスカルの作品』として発表。

ラフュマ III-XV(セリエ772-785) (パスカルの自筆原稿はない)

主要刊本
ポール=ロワイヤル版

ポール=ロワイヤル修道院の神学者アントワーヌ・アルノー (1612-1694)、ピエール・ニコル(フランス語版) (1625-95) 、パスカルの甥エチエンヌらが編集。


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