パンク_(サブカルチャー)
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パンクのニヒリズムは、「ヘロインや…メタンフェタミンといった強くて自滅性の高い薬物」の使用や剃刀での「身体の一部の切断」といった形で表されていた[16]。ドロップキック・マーフィーズのベーシスト、ケン・ケーシーがナチス式の敬礼をしたことでバンドは批判され、後にバンドはファシズムに反対していくことを再確認した[17]。デッド・ケネディーズの曲「ナチ・パンクス・ファック・オフ」は、反ナチズムのテーマ的な見方をされている[18]



アート

パンクは、ダダイスムなどの反体制的なアートからの影響が指摘されている。

パンクの美学はパンクスの好む芸術の方向性も決定した。一般に、アンダーグラウンドミニマル・アート聖像破壊的、風刺的なものが好まれる。パンクアート作品は、アルバムのカバーイラスト、コンサートなどのチラシ、パンク雑誌などを飾った。パンクアートは明確なメッセージを直接的に伝えることが多く、社会的不公平さや経済格差などといった問題を描いていることが多い。誰かが苦しんでいるイメージを使って見る者に衝撃を与え、感情移入させるのが一般的である。あるいは、利己的なイメージや愚かなイメージや冷淡なイメージを描くことで、見る者に軽蔑を感じさせようとする場合もある。

初期の作品はコピー機で複製するファンジン的なものが多かったため、白黒の作品が多かった。パンクアートはアンディ・ウォーホルの大量印刷向きの手法も活用する。パンクは、特にクラスを筆頭として、ステンシルアートの復興にも一役買った。状況主義もパンクアートに影響を与えており、特にセックス・ピストルズ関連のアートに顕著である。コラージュも多用されており、デッド・ケネディーズ、クラス、Jamie Reid、Winston Smith のアートが例として挙げられる。John Holmstrom はパンク漫画家であり、ラモーンズ関連や Punk Magazine で活動した。スタッキズムというムーブメントの源流はパンクであり、2004年のリバプール・ビエンナーレでウォーカー・アート・ギャラリーが開催した The Stuckists Punk Victorian という展示会の題名にもそれが現れている。グループの創設者の1人チャールズ・トムソン(英語版)は、パンクは彼のアートにとって「重要なブレークスルー」だと述べている[19]
ダンス

パンクに関連するダンスのスタイルとしてポゴダンスモッシュがある[20]。ステージからのダイブやクラウドサーフは、ザ・ストゥージズなどのプロトパンクのバンドが発祥とされており、その後パンクやヘヴィメタルやロックのコンサートでも見られるようになった。スカ・パンクではskankingと呼ばれるダンススタイルを広めようとした。ハードコアダンスはこれら全てのスタイルの影響を受けて後に開発されたものである。サイコビリーでは "wreck" と呼ばれるスタイルが好まれる。これは体をぶつけ合うスラムダンスのようなもので、殴り合いをする。
文学1994年から2004年ごろの米英のパンク雑誌の例

パンクは、ビート・ジェネレーションなどの反体制的な文学からの影響が指摘されている。

パンクからは多数の散文が生まれた。パンク雑誌 (punk zine) と呼ばれるアンダーグラウンドな出版形態があり、ニュース、うわさ、文化的批評、インタビューなどが掲載される。一部の雑誌は個人誌 (perzine) の形式である。有名なパンク雑誌としては、Maximum RocknRoll、Punk Planet、Cometbus、Flipside、Search & Destroy などがある。パンクについて書いた小説、伝記、自伝、コミックスなどもある。ロサンゼルスのパンクを描いたコミックスとして『ラブ・アンド・ロケッツ』が有名。

パンク詩人としては、リチャード・ヘル、ジム・キャロル、パティ・スミス、John Cooper Clarke、Seething Wells、Raegan Butcher、Attila the Stockbroker といった人たちがいる。The Medway Poets というパフォーマンスグループにはパンク・ミュージシャンでもある Billy Childish が参加しており、トレイシー・エミンに影響を与えた。ジム・キャロルの自伝的作品群は初期のパンク文学の好例である。パンクというサブカルチャーに触発され、サイバーパンクスチームパンクといった文学ジャンルが生まれた。
映画

パンクを題材にした映像や映画もあり、パンク・ロックのミュージック・ビデオやパンクと関連が深いスケーター・ロックのビデオもよく見受けられる。映画に関わった有名なグループとしては、ラモーンズ(Rock 'n' Roll High School)、セックス・ピストルズ(『ザ・グレイト・ロックンロール・スウィンドル』)などが挙げられる。他に『シド・アンド・ナンシー』(1986)[21] が有名で、セックス・ピストルズのベーシストだったシド・ヴィシャスゲイリー・オールドマンが演じた)とナンシー・スパンゲン(クロエ・ウェブが演じた)の物語を描いている。

パンクバンドのドキュメンタリー映画もよく制作されている。代表的なものとしては、セックス・ピストルズを描いた The Filth and the Fury がある。バンドメンバーや関係者(マルコム・マクラーレンヴィヴィアン・ウエストウッド、ナンシー・スパンゲンら)だけでなく、ビリー・アイドルスティング、若き日のスージー・スー(スージー・アンド・ザ・バンシーズのボーカル)などの映像も使っている。クライマックスの1つは、エリザベス2世の即位25年祝典でセックス・ピストルズがテムズ川上のはしけの上で "God Save the Queen" を演奏し、その直後に逮捕されるシーンである。

No Wave Cinema や Remodernist film といったムーブメントはパンクとの関連が深い。パンクを描いた映画監督としてはデレク・ジャーマンが有名である。他にも、『24アワー・パーティー・ピープル』はパンクからニュー・ウェイヴマッドチェスターへと進化する音楽シーンを描き、Threat はニューヨークのハードコアシーンにおけるストレート・エッジに焦点を当てている。
ライフスタイルとコミュニティカリフォルニア州バークレーのパンク会場の小さなステージでバンドが演奏しているところ。上の会場付近の楽屋側。グラフィティで壁が覆われている。

パンクスには様々な職業や経済階層の人々がいる。ライオット・ガールというムーブメントを除けば、そのほとんどは男性である。他のサブカルチャーと比較すると、パンクのイデオロギーは男女同権により近い[22]。パンクは概ね反人種差別的だが、パンクスのほとんどは白人である(少なくとも白人が支配的な国以外ではあまり盛んではない)。パンクの特性として薬物乱用がよく挙げられる。例外としてはストレート・エッジがある。また暴力もつきものとされるが、アナクロパンクの流れを汲む平和主義者のように暴力反対を唱えるパンクスもいる。

パンクスはローカルな音楽シーンを形成することが多く、小さい町では数十人、大都市では数千人程度でも成立する[23]。そのようなローカルなシーンでは、中心となるパンクスの小さいグループがあり、その周囲によりカジュアルな人々が集まる。典型的なパンクシーンは、パンクと中心となるバンドで構成される。ファンはコンサートや抗議集会や他のイベントに参加し、パンク雑誌を出版する人、バンドの批評家、ライター、イラストなどを描く美術家、コンサートを運営する人々、インディーズのレーベルなどで働く人々などが関係する[23]スコッターがツアー中のバンドに宿を提供するなどのサポートの役割を果たす場合もある。パンクにおいてもインターネットの役割は増大しつつあり、特に仮想共同体の形成とファイル共有ソフトによる音楽ファイルのやりとりが重要である。


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