パロディ
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おもしろ画像・動画などがミームの例として挙げられ[39]、とりわけソーシャルメディア(SNS)などのインターネットを介して拡散する場合をインターネット・ミームと呼ぶ[40]。ミームは進化生物学者リチャード・ドーキンズの造語であり[注 2]、ドーキンズの文脈に沿うと、ミームは模倣ないしパロディ要素が必要とされ、元ネタを使っている様が明確でなければならないとされていることから[40]、ミームとパロディには共通項が多い。ただしミームとは模倣された作品そのものを指す用語ではなく、模倣する社会的プロセスであるとされる。さらにインターネット・ミームは、あるミームが別のミーム (派生作品) を次々と生み出していく社会連鎖を特徴としている[40]。EUではパロディに次いでインターネット・ミームも、2019年に成立したDSM著作権指令(Directive (EU) 2019/790)によって著作権侵害の例外に指定されることとなった[43][44]
バーレスクとの違い
バーレスク(burlesque)は「馬鹿げた・奇妙なパロディ」(grotesque parody)と定義されることもある[13]:202。バーレスクの意味は時代と共に変遷しているが、17世紀から18世紀にかけてのイギリスでは、文学や演劇、音楽作品などを風刺したパロディを指した。特に演劇ではまじめな題材や有名人を茶化したり滑稽化する大衆向けの見世物である[45]。しかし時代が下がると、次第に批判や風刺の要素は薄れ、特に米国ではストリップショーの要素が加わった[45]
起源パロディの古典作品『蛙鼠合戦』をイメージした挿絵 (Louis Joseph Trimolet作、1841年)。

古代ギリシャ語でパロディは ?αροδια と記され、?αρα と οδο? に分解できる[18]。前半部分の ?αρα には「歌うこと」の意味が含まれており、具体的には韻文の詩を元来は指していた[46]。その後に散文もこの用語の範疇として含まれるようになった[46]。また後半部分の οδο? には、アイディアに対する共感・類似性、あるいは糾弾、反論や見解の相違を表現するとの意味もあった[46]。したがってこれらを複合すると当時のパロディは、歌唱あるいは作曲されるものであり、元となった作品と何らかの差異が認められるものを指していたと考えられる[46]。そして一般庶民は、原作よりもくだけた対象やシチュエーションでこのようなパロディの手法を用いた[46]。ただし、現代の意味するところのパロディとニュアンスは異なり、古代では必ずしも過去の偉大な作品を嘲笑する目的に限られるものではなかった[47]。以下、具体的な作品例を見ていく。

紀元前5世紀に活躍したエウリピデスはギリシャ三大悲劇詩人の一人と評されるが[48]喜劇も手掛けており、『キュクロプス』は完全な形で現存する唯一のサテュロス劇とされる[49]サテュロスとはギリシャ神話に登場する半獣半人であり、陽気で酒飲みの好色キャラクターとして描かれている[50]。このサテュロスが登場する喜劇がサテュロス劇であり、下品な下ネタなどが使われている[49]。しかし『キュクロプス』と比較対象となる他者の元作品が物理的に確認不可能なことから、『キュクロプス』を何らかのパロディと呼ぶべきか判定困難だとされている[51]。また、紀元前5世紀 - 4世紀のギリシャ喜劇詩人アリストパネスはパロディ作品を生み出したことで一般的に知られ[52]、先述のエウリピデス (生誕はアリストパネスより30年ほど前の人物)[48]の作品を下敷きにしていると言われるが、この見解については異論も出ており、アリストパネスをパロディ作家と呼べるか断定できていない[53]

紀元前4世紀の哲学者アリストテレス著『詩学』によると、パロディの発明者はタソスのヘゲモン(英語版) (紀元前5世紀頃の作家[54]) だと記されている (1448a9-18)[55]:94[56]。ここでの「発明者」であるが、パロディを一つの文学ジャンルとして確立させた者を意味すると考えられている[54]

学説上、パロディだと確認がとれている現存の古典作品例としては、『蛙鼠合戦』("Batrachomyomachia"、古代ギリシア語: Βατραχομυομαχ?α)[注 3]が挙げられ[58][18]、パロディの中でも特にバーレスク的であるとも分類されている[59]。『蛙鼠合戦』は長短短の6歩格で構成される韻文であり、トロイア戦争を扱ったホメーロス作『イーリアス』を嘲笑するような文体で知られ[57][58][注 4]カエルネズミの争いに置き換わっている[18]。また、主神ゼウスを始めとするオリュンポス十二神も、スキャンダラスな逸話がたびたび伝えられていることから、格好のパロディ材料となった[61]。他にも紀元前4世紀半ばに活躍した喜劇作家のエウブロス(英語版)[62]、紀元前3世紀 - 2世紀の古代ローマ喜劇作家プラウトゥス[注 5]などがパロディ作家として知られている[64]

格調高い文体で下賤なトピックを扱うパターン、あるいは下賤な文体で高尚なトピックを扱うパターン (擬似英雄詩など) のどちらも古代のパロディに見られる[61]
種類

世界中に無数のパロディ作品が存在するが、パロディの内訳を解説する目的でその一部を以下に紹介する。
音に着目したパロディ

文芸におけるもじりとは、一つの語句に複数の異なる意味を持たせることで滑稽さを生み出す手法である[65]。特に同音または類似音を用いた語呂合わせなどを指し、有名な詩や和歌、歌謡などを元ネタにして笑わせる目的で創作されることから、パロディの一種としての側面がある[66]:@。たとえば鎌倉時代藤原定家が選定した『小倉百人一首』を元にして、江戸時代には「もじり百人一首」が登場し、大衆に親しまれた[66]:@。また、替え歌も原曲の歌詞をもじってパロディ化させたものと定義されている[67]。パロディとしての狂歌 (上) と原著作物 (下) の比較ひとつとりふたつとりては焼いて食う鶉なくなる深草の里(大田南畝作)[19]


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