パロディ
[Wikipedia|▼Menu]
□記事を途中から表示しています
[最初から表示]

パロディの辞書的な定義には文学や美術といった固定された作品だけでなく、曲や演説といったライブも含まれているように[2]、作品(物)だけでなく人や動物など(生き物)がパロディの題材になることがある。したがって、物まね (音声や形態を他者が声や身ぶりで模倣する行為[80]) の一部もパロディ的な要素が含まれる。

たとえば米国のコメディバラエティTV番組『サタデー・ナイト・ライブ』(SNL)では政治家のパロディコントがシリーズ化しており、特に第45代大統領ドナルド・トランプを揶揄したSNLパロディシリーズ(英語版)は、トランプを演じたアレック・ボールドウィン第69回プライムタイム・エミー賞助演男優賞 (2017年発表) を受賞している[81]。またフランスでは、歌手の物まねがパロディとみなされて法的に許容うるのかが問われた訴訟もある(詳細後述)[82]
芸術以外のパロディ「パロディ科学(英語版)」も参照

ノーベル賞のパロディと位置付けられ、独創性に富む研究や発明などに贈られるのがイグノーベル賞である。物理学や化学、医学といった自然科学のほか、経済学や平和なども受賞部門に設けている[83]。イグノーベル賞はユーモア科学雑誌『ありそうもない研究年報(英語版)』が主催している[83]
ビジネス上のパロディ

市販される商品がパロディの対象となったこともある。通称「面白い」恋人事件は、北海道・札幌名物の洋菓子「白い恋人」を模して、お笑い芸人を多数擁する吉本興業が大阪名物「面白い恋人」の商品名で売り出したことから、2011年に訴訟へと発展し[84]、メディアからの注目を集めた[85]。当初からパロディとして商品企画されており、パッケージデザインにも共通性が感じ取られることから、商標権および不正競争防止の観点が法的に問われることとなった[84]

また米国では、ルイ・ヴィトンスターバックスといった知名度の高い企業の商標を模したパロディが法的に検証された事例もある(詳細後述)。商標法がこれら大企業を過剰に擁護し、結果として中小のパロディ創作者の表現の自由が抑圧されているとの指摘もある[86][87]
法的取り扱い

元となった作品の創作者や権利者から許諾を得ずに、第三者がパロディを創作する行為が法的に許容されるかは各国の法律により異なる。後述のとおり、実際に訴訟に発展したケースでは、著作権ないし商標権 (いずれも知的財産権の一部)、あるいは不正競争防止が争点となっている。

パロディを巡る著作権の議論では、著作財産権(著作物を使った複製、翻案、実演などの独占権)だけでなく、著作者人格権の一つである同一性保持権が権利侵害として問われる可能性がある[88]。一般的な著作権法における「翻案」とは、たとえば小説の映画化や文章の要約作成、コンピュータ・プログラムのバージョンアップのほか[89]、音楽の編曲や文章の翻訳などが含まれることから、原著作物を用いた二次的著作物の創作(二次創作)をも包含する[90]。また同一性保持権とは、著作者の思想や感情が反映された著作物を無断で第三者に改変されない権利である[91]。著作権の基本条約であるベルヌ条約(2020年10月時点で世界170か国以上が加盟[注 8])でも、著作者の名誉声望を毀損する行為が禁じられており、著作者の人格が世界的に保護されている[91]。したがって、原著作物の著作者の名を汚すような歪んだ改変こそが醍醐味とも言えるパロディは、翻案権の観点からも同一性保持権の観点からも法的に矛盾を抱えることとなる[94]。ただし、パロディの創作側にも各国の憲法上で表現の自由が保障されていることから、著作権者側の独占的な権利との間で利益バランスが図られることになる[95]
各国の著作権法上でのパロディ規定


条文上で著作権侵害の対象からパロディを除外する個別規定を設けている国: フランス、スペイン、オーストラリア、ベルギー、オランダ、スイス、ブラジル、イギリス、カナダ[96][注 9]

条文上で明記はないが、フェアユース等の一般規定に基づき、柔軟な司法判断でパロディを認めている国: 米国[96]

条文上でパロディ個別明記も一般規定も存在しない国: ドイツ、スウェーデン、イタリア、ハンガリー、ポーランド、韓国[96]、日本[88]

つづいて商標権とは、自社・自己の商品やサービスに用いられるマークやネーミングである商標に適用される権利であり、他社・他者と区別することを目的としている[99]。商標権を有する事業者や個人を保護するだけでなく、商品やサービスを購入する消費者が混同して不利益を被らないよう、消費者保護の側面もある[100][注 10]。この「混同」の観点は、商標法だけでなく不正競争防止にも当てはまる国(フランス[102]:23や米国[103]など)がある。

以下、国別に判例を交えて見ていく。
アメリカ合衆国法

アメリカ合衆国におけるパロディの創作行為は、米国著作権法を収録した合衆国法典第17編の第107条において、フェアユース (公正利用の法理) の抗弁に基づき許容される場合がある[104]

またランハム法(英語版) (Lanham Act あるいは the Trademark Act of 1946) では登録済商標を保護するほか、未登録であっても不正競争防止の観点から商標の希釈化などを抑止する[105]。ランハム法は2006年改正によって、混同のおそれのない場合に限ってパロディ目的などの利用緩和を認めている[106]。訴訟に至った場合は、著作権法と同様に米国では商標法上のフェアユース(英語版)で被告が抗弁することもある[107][注 11]
通称 プリティ・ウーマン判決

映像外部リンク
Oh, Pretty Woman - 著作者ロイ・オービソンの原曲 (本人公式YouTubeより)
Luther Campbell of 2 Live Crew's Historic Supreme Court Parody Case - パロディ作者・被告キャンベルによる "Big Hairy Woman" への変形経緯解説(ケーブルテレビ局VH1公式YouTubeより)[109]
米国著作権法のパロディに関するリーディングケースとしては「キャンベル対エイカフ・ローズ・ミュージック裁判(英語版)」(1994年の連邦最高裁判決、510 U.S. 569)、通称「プリティ・ウーマン判決」が知られている[104][110][111]。本件では1990年公開映画『プリティ・ウーマン』の主題歌 "Oh, Pretty Woman" (歌手ロイ・オービソン、音楽レーベルはエイカフ=ローズ・ミュージック) を使用して、ヒップホップグループの The 2 Live Crew がパロディ曲を製作し、25万枚のセールスを記録した事件である (被告ルーサー・キャンベル(英語版)はこのメンバーの一員である)[112]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:195 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef