パロディ
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訴訟に至った場合は、著作権法と同様に米国では商標法上のフェアユース(英語版)で被告が抗弁することもある[107][注 11]
通称 プリティ・ウーマン判決

映像外部リンク
Oh, Pretty Woman - 著作者ロイ・オービソンの原曲 (本人公式YouTubeより)
Luther Campbell of 2 Live Crew's Historic Supreme Court Parody Case - パロディ作者・被告キャンベルによる "Big Hairy Woman" への変形経緯解説(ケーブルテレビ局VH1公式YouTubeより)[109]
米国著作権法のパロディに関するリーディングケースとしては「キャンベル対エイカフ・ローズ・ミュージック裁判(英語版)」(1994年の連邦最高裁判決、510 U.S. 569)、通称「プリティ・ウーマン判決」が知られている[104][110][111]。本件では1990年公開映画『プリティ・ウーマン』の主題歌 "Oh, Pretty Woman" (歌手ロイ・オービソン、音楽レーベルはエイカフ=ローズ・ミュージック) を使用して、ヒップホップグループの The 2 Live Crew がパロディ曲を製作し、25万枚のセールスを記録した事件である (被告ルーサー・キャンベル(英語版)はこのメンバーの一員である)[112]。原曲 "Oh, Pretty Woman" (あぁ、可愛い女性) がパロディでは "Big Hairy Woman (デカくて毛深い女性) に変形されている[109]。一審はフェアユース認定、二審は否定し、最高裁が再び認定した[113]。パロディとして使用された箇所 (原曲の冒頭部) は有名であり原曲の中核をなすと認定されたものの、パロディはこのような中核を用いることが常であると判断された。そしてフェアユース第1基準の定める「変形的利用(英語版)」(transformative use、transformativeness) が、同じく第1基準で例示される非営利性に勝り、第4基準の市場代替性を損なうことがないと解されている[114]
著作権法上のフェアユースが否定された判決
「ドクター・スース対ペンギン・ブックス裁判」(1997年の第9巡回区連邦控訴裁判所判決) は、元ネタに対する皮肉や悪ふざけといった要素がないことからパロディとみなされず、フェアユースが認められなかった事例として知られている[115][116][117]。被告ペンギン・ブックス社らは "The Cat NOT in the Hat! A Parody by Dr. Juice" のタイトルで書籍を出版したが、これが元フットボール選手O・J・シンプソンによる殺人容疑裁判概要を、ドクター・スースの児童文学『キャット イン ザ ハット』の設定で韻を踏んで物語っていたことから、訴訟に至った[118]。表現性や物語のプロット、キャラクターの特徴などに類似性が認められ、かつフェアユース第1基準に関しても元ネタからの変形が十分でないと判断された[118]
ルイ・ヴィトンの「弱い者いじめ」訴訟批判

画像外部リンク
MOB商品画像(MOB公式ウェブサイトより)
商標権侵害に対して強気の姿勢をとっているとも言われるフランスの高級ファッションブランド ルイ・ヴィトン社は[119]、過去にパロディ関連訴訟で繰り返し敗訴を喫している[注 12]。たとえば「ルイ・ヴィトン対MOB裁判」(Louis Vuitton Malletier, S.A. v. My Other Bag, Inc.)は、My Other Bag (MOB) 社が自社製トートバッグ上にルイ・ヴィトンなどの有名ブランドバッグのイラストを描いて販売したことから、ルイ・ヴィトンが権利侵害で提訴した事件である。二審の第7巡回区控訴裁の口頭弁論では、担当判事が「これはジョークです。ルイ・ヴィトン社はこのジョークが理解できないのでしょうが、ジョークなんですよ」と嘲笑する場面さえあった[注 13]。また訴訟動機が「弱い者いじめ」(bully)だとも指摘している[87]。一審、二審ともMOB製品はパロディと認められ、ルイ・ヴィトン側は最高裁に上告したものの棄却された[87]。本件ではパロディ創作者側の表現の自由を擁護したと解されている[120]
商標権および不正競争防止が問われた「ばかスタバ」

画像外部リンク
Dumb Starbucksの外観写真 - 2014年2月撮影・記事掲載[121]
Dumb Starbucks公式FAQ - パロディ店なので合法であると店側は自主回答している[122]
同じく「弱い者いじめ」の法的問題が法学者から指摘されているのが、「ばかスタバ」である[106]。コーヒーショップ大手スターバックスを模したコーヒー店 DUMB STARBUCKS[注 14]が2014年2月、ロサンゼルスでオープンしたことから、商標権侵害および希釈化が法的に問われる事態へと発展した[124]。このパロディ店をオープンさせたのはコメディアンのネイサン・フィールダー(英語版)であり、自身の冠番組『ネイサン・フォー・ユー』(リアリティ・コメディ番組)の宣伝目的とされる[86][注 15]。「ばかスタバ」の店舗外装はスターバックスそっくりであり、ロゴデザインもほぼ同じであった[86][121]。地元保健局が食品提供ライセンス未取得を理由にオープンから3日内にパロディ店を営業停止に処しているが[86][121]、法学者からは後に商標法と表現の自由のバランスを欠いていると批判される事例となった[126]。特に問題となったのが、2006年の商標希釈化改正法(英語版)(略称: TDRA)である。TDRA成立によってランハム法が改正され、非商用目的、ないし混同のおそれのない表示方法であればパロディなどの目的での商標利用も認めている[106]。しかしながら商用かつ混同のおそれのある「ばかスタバ」にはTDRAの条件が適合しなかった。結果として、スターバックスのような既に認知度の高い商標権者を過度に権利保護しているのではないか、との批判につながった[86]
欧州連合法

欧州連合(EU)では、加盟各国の著作権法の水準を揃えることを目的として、各種の著作権指令が出されている。このうちパロディに関しては、2001年可決の情報社会指令 (2001/29/EC) 第5条(3)(k) で著作権侵害の例外としてパロディ目的が挙げられている[8]。しかしながらこの指令の条項を導入 (国内法化) するかはEU加盟各国に委ねられていることから、国によってパロディの法的取り扱い状況は異なる[7]

著作権侵害を事由とした訴訟は、基本的には各国の裁判所で審理されるが、一部の訴訟は欧州司法裁判所 (CJEU) に意見照会されることがある。以下、各国の法整備の状況と代表的なパロディ判例について述べる。
欧州司法裁判所 (CJEU) 判決

画像外部リンク
原告ヴァンダースティーンの原画 - 欧州司法裁判所提出資料より[127]
パロディ関連ではデックメイン対ヴァンダースティーン裁判(英語版) (Deckmyn v Vandersteen, Case: C-201/13, 2014年CJEU判決) が知られている[128]。本件では原著作物の著作権者側の権利と、パロディ利用する側の表現の自由の間でいかにバランスを取るべきかが問われた[129]ベルギー右派ポピュリズム政党フラームス・ベランフ[注 16]に所属する政治家ヨーハン・デックメイン(オランダ語版)は2011年、新年の祝賀会でカレンダーを参加者に配布したが、この表紙に使われた絵画がヴァンダースティーンの描いた作品に類似しているとして、著作権侵害でデックメインと政党後援会組織がベルギーの裁判所に提訴された。ヴァンダースティーンの作品は元々、コミック本『Suske en Wiske(英語版、オランダ語版)』に登場するキャラクターの一人を表紙に描いたものであり、白色のチュニックをまとって空中からコインをばら撒いている構図である。


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