パルメニデス
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一般的な解説では、上記の第一の解釈に絞った説明が多い。これは古代から有力な解釈であったが、上記の第二、第三の解釈と同様に、パルメニデスの思想を経験される事実と矛盾しないように解釈したい、という考えも古くから有力であった。例えばアリストテレスの『形而上学』第一巻において、第一の解釈にあたる考えを概ね弟子のメリッソスのものとし、「素朴で検討に値しない」と退けた。一方、パルメニデスについては「より深い洞察を持って語っている」とし、「一者」は存在の本質についての概念であるとした。この存在の本質についての一元論と詩の後半部の二元論は、各々現実の別の側面を捉えたものとされる。
思想

パルメニデスは、知覚可能な物理現象を抽象化した「アルケー」や「幾何学的対象」を考察してきたそれまでの哲学者たちとは異なり、「ある(有/在)」という概念を、

「あるもの(有/在、ト・エオン)はあり、あらぬもの(非有/不在、ト・メー・エオン)はあらぬ」

「あるもの(有/在、ト・エオン)は、唯一・不動・不変であり、理性による「真理の道」でのみ認識・探究可能」

「あらぬもの(非有/不在、ト・メー・エオン)は、認識され得ず、探究不可能」

「多様と変化を許容する、あり(有/在)かつあらぬ(非有/不在)もの(すなわち物理現象)は、感覚による「臆見の道」で認識される誤謬」

といった排中律的な原則・前提に基づき、理性的・論理的に規定し、知覚可能で変動的な「物理現象」とは区別・隔絶された、超越的な(唯一にして不動不変の)「本質存在」を提唱した最初期の哲学者として知られる[4]

彼を祖とするエレア派の存在論は、このように感覚よりも理性(ロゴス)を優先するという意味において理性主義[5]、その主張は「運動や変化の否定」など、著しく経験・直感に反する内容を持つ。「アキレスと亀」で知られるパラドクスは、運動が存在しない(仮象・幻覚である)ことを示すためにパルメニデスの弟子であるゼノンによって提起されたものである。

なお、世界を「変化・生成消滅する物理現象」と「超越的で永遠不変な存在」に分ける二元論や、その超越的存在を「球体(としての神)」として表現する発想は、パルメニデスより前に、彼の師とされるクセノパネスによって、既に提示されていたことが知られている[6]

他の古代の著者によるパルメニデスの思想への言及としては、

プラトンの『パルメニデス』『ソピステス

アリストテレスの『自然学』第1巻、『形而上学』第1巻・第14巻 

ディオゲネス・ラエルティオスの『ギリシア哲学者列伝』第9巻第3章 --- 上記の『自然について』に関する言及に加え、以下のような内容も述べられている。

地球が球形で、宇宙の中心に位置していると、最初に表明した。

万物の構成要素(アルケー)は、「火」と「土」の2つだと考えた。(これは上記した『自然について』の後半における「光(火)」と「夜」の二元素論を、四元素説の枠組みに置き換えて解釈したものと考えられる。)

などがある。
影響

当時、パルメニデスらエレア派の議論は大きな衝撃をもたらしたようで、後に続く哲学者は何らかの形でその議論を取り込んでいる。

例えば、レウキッポスデモクリトスは、パルメニデスらエレア派の存在論への応答として原子論を提唱した。彼らは、自然を構成する分割不可能な最小単位として原子が存在すると考えたが、原子はエレア派の「あるもの」を小さく分割したものとする見解がある。また、彼らは、原子の存在やその結合分離の運動の説明のため、「あらぬもの」すなわち空虚の存在を考えた。一方で、生成消滅しない無数の原子と空虚が真に存在し、原子の結合分離が感覚的対象やその生成変化を生じさせるとした。

アリストテレスは第一質料と形相の組み合わせで自然の変化を説明したが、前者の概念はエレア派の「有」を思わせる。また、彼の有名な空虚の否定はレウキッポスとデモクリトスの原子論への批判である。

パルメニデスらエレア派の影響は、現代哲学にも見られる。
プラトン哲学を経由した後世への影響「パルメニデス (対話篇)」、「国家 (対話篇)」、および「ティマイオス」も参照

古代のプラトン主義者たちは、パルメニデスの思想の中にイデア説の原型を見出している。つまり、理性でのみ把握される不生不滅の「有」の世界と、感覚で把握される生成流転する世界の二層構造を初めて見出したのがパルメニデスだ、というのである。

プラトンは『パルメニデス[7]という対話篇を書いている。


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