パリティ_(物理学)
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ここで、以下のような鏡映を定義することができる V x : ( x y z ) ↦ ( − x y z ) , {\displaystyle V_{x}:{\begin{pmatrix}x\\y\\z\end{pmatrix}}\mapsto {\begin{pmatrix}-x\\y\\z\end{pmatrix}},}

これはまた負の行列式を持ち、妥当なパリティ変換を形成する。次に、それらの回転を実行し(または連続的にx、y、およびz軸に対する鏡映を実行し)、先に定義した特定のパリティ変換を得ることができる。しかし、次元数が偶数の場合には行列式が正になるため、最初に定義されたパリティ変換は機能しない。次元数が奇数の場合、後者のパリティ変換の例(または座標の奇数の鏡映)だけが用いられる。

パリティは、P2 = 1の関係によって、アーベル群 Z2を形成する。全てのアーベル群は一次元の既約表現だけを持つ。Z2については、二つの既約表現が存在する。一つはパリティの下で奇数 (Pφ = φ) 、もう一つは偶数 (Pφ = ?φ) である。これらは量子力学において有用である。しかしながら、以下に詳しく述べられているように、量子力学において、状態はパリティの実際の表現の下での変換を必要とせず、ただ射影表現の下での変換が必要となる。そして、原理的にはパリティ変換はあらゆる位相によって状態を回転する。
古典力学

ニュートンの運動方程式 F = ma (質量が不変の場合)は二つのベクトルが等しいことを関連付け、それゆえパリティの下で不変である。重力の法則もまたベクトルのみを含み、それゆえパリティの下で不変である。しかしながら、角運動量L は軸性ベクトルである。L = r × p,P(L) = (?r) × (?p) = L.

古典電気力学において、電荷密度 ρ はスカラー、電場 E および電流 j はベクトルであるが、磁場 H は軸性ベクトルである。しかしながら、軸性ベクトルの回転はベクトルであるので、マクスウェル方程式はパリティの下で不変である。
古典力学変数に対する空間反転の効果
偶数

古典的変数、主にスカラー量(空間反転によって不変)は以下のものを含む:   t {\displaystyle \ t} , イベントが起こったときの時間   m {\displaystyle \ m} , 粒子の質量   E {\displaystyle \ E} , 粒子のエネルギー   P {\displaystyle \ P} , 仕事率仕事がなされる速度)   ρ {\displaystyle \ \rho } , 電荷密度   V {\displaystyle \ V} , 電位電圧)   ρ {\displaystyle \ \rho } , 電磁場エネルギー密度 L {\displaystyle \mathbf {L} } , 粒子の角運動量軌道スピンの両方)(軸性ベクトル) B {\displaystyle \mathbf {B} } , 磁場(軸性ベクトル) H {\displaystyle \mathbf {H} } , 補助場(英語版) M {\displaystyle \mathbf {M} } , 磁化   T i j {\displaystyle \ T_{ij}} マクスウェルの応力テンソル弱い力に関係するものを除く全ての質量、チャージ結合定数、および他の物理定数
奇数

古典的変数、主にベクトル(空間反転によって符号が逆転する)は以下のものを含む:   h {\displaystyle \ h} , ヘリシティ   Φ {\displaystyle \ \Phi } , 磁束 x {\displaystyle \mathbf {x} } , 三次元の粒子の位置 v {\displaystyle \mathbf {v} } , 粒子の速度 a {\displaystyle \mathbf {a} } , 粒子の加速度 p {\displaystyle \mathbf {p} } , 粒子の直線運動量 F {\displaystyle \mathbf {F} } , 粒子にかかる J {\displaystyle \mathbf {J} } , 電流密度 E {\displaystyle \mathbf {E} } , 電場 D {\displaystyle \mathbf {D} } , 電束密度 P {\displaystyle \mathbf {P} } , 分極電荷密度 A {\displaystyle \mathbf {A} } , 電磁ベクトルポテンシャル S {\displaystyle \mathbf {S} } , ポインティングベクトル
量子力学
可能な固有値パリティの二次元表現はお互いのパリティが入れ替わる一対の量子状態によって与えられる。しかしながら、この表現はいつもパリティがそれぞれ奇数か偶数である状態の線形結合へ還元することができる。パリティの全ての既約表現は一次元であると言える。

量子力学において、時空変換は量子状態に作用する。パリティ変換 P は量子力学におけるユニタリ演算子であり、状態 ψ に Pψ(r) = ψ(?r) のように作用する。全体の位相はアンオブザーバブルであるため、P2ψ(r) = eiφψ(r) である必要がある。

ある状態のパリティを二度反転する演算子 P2は時空不変性を保ち、位相 eiφによってその固有状態を回転する内部対称性である。もし P2 が位相回転の連続 U(1) 対称群の要素 eiQ であるならば、 e?iQ/2 はこの U(1) の一部分であり、そのため対称性でもある。特に、同様に対称性であるP = Pe?iQ/2 と定義することができ、Pをパリティ演算子と呼ぶことができる。P2 = 1 でPは固有値±1を持つことに注意すること。しかしながら、そのような対称群が存在しないとき、全てのパリティ変換は±1以外の位相である固有値を持つ。
パリティ対称性の帰結

パリティがアーベル群 Z2を生成するとき、パリティの下で偶数または奇数となるように量子状態の線形結合を取ることができる(図を参照)。このようにそのような状態のパリティは±1である。複数粒子状態のパリティは各状態のパリティの積である。言い換えると、パリティは乗法的な量子数である。

量子力学において、ハミルトニアンはパリティ変換の下で不変量(対称性)である、もしPがハミルトニアンと可換であるなら。非相対論的量子力学では、これは例えばV = V(r) のようなスカラーであるすべてのポテンシャルについて起こる。それゆえポテンシャルは球対称である。次の事実は容易に証明できる:

|A> および |B> が同じパリティを持つならば、<A| X |B> = 0 である。ここで、X は位置演算子である。

状態 |Lについて、z軸射影 Lzを伴う軌道角運動量 L のLz>、P|L、Lz> = (?1)L|L、Lz>。

[H, P] = 0 ならば、原子双極子遷移は反対のパリティの状態間でのみ起きる[1]

[H, P] = 0 ならば、H の非縮退固有状態もまたパリティ演算子の固有状態である。例えば、H の非縮退固有関数は P またはPの符号が逆のものかのどちらかである。

H の非縮退固有関数のいくつかはパリティ Pの影響を受けず(不変で)、その他のものはハミルトニアン演算子とパリティ演算子が可換であるときただ符号を保存する:PΨ = cΨ,

ここで c は定数で、 P の固有値である。P2Ψ = cPΨ.
場の量子論

場の量子論において以下の3つの条件が全て満たされている場合、全ての状態に対して固有パリティを定義することができ、このパリティはあらゆる反応において保存することとなる。

真空状態がパリティの下で不変である。 (P|0> = |0>)

ハミルトニアンがパリティ不変である。 ([H, P] = 0)

量子化条件はパリティの下で不変性を保つ。

量子電磁力学はパリティを保存する理論の代表的な例である。このことを示すためには、その作用はパリティ不変であり、量子化もパリティを破らないことを証明する必要がある。以下では簡単のため、正準量子化が用いられることを仮定する。このとき、その真空状態は量子化の構築によってパリティの下で不変である。作用の不変性はマクスウェル方程式の古典的不変性から得られる。正準量子化手続きの不変性は達成することができるが、消滅演算子の変換に依存することが分かる:Pa(p, ±)P+ = ?a(?p, ±)

ここで p は光子運動量を表し、± はその偏光状態を表す。これは、光子は奇の固有パリティを持つことを意味する。同様に全てのベクトル粒子は奇数の固有パリティを持ち、全ての疑ベクトル中間子は偶の固有パリティを持つことを示すことができる。


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