パプリカ_(アニメ映画)
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この映画において、今がテーマの中核として位置づけていたのが物事の「二面性」や「多面性」、「対照性」、そしてそれらの「バランス」であり、当初から意図して映画に組み込んでいる[12]。たとえば、顕著な二面性が見られるのはヒロイン千葉敦子とパプリカで、この二人は同一人物内の異なる人格を具体化した登場人物だが、監督としては二人を異なる人物と見なして演出していた。その方が、ある人間の内面における葛藤や対立をより明快に描けると考えたからである[12]。敦子・パプリカの関係は同一人物内の対照性と二面性だが、他のキャラクターたちの性格設定や人物配置も同様の考え方に従っている[12]。このように、今は『パプリカ』では基本的なコンセプトとして「対」という考え方をとても大事にしていた[12]

今は、『パプリカ』で制作の結果として創造面の自由を感じたわけではなく、むしろまったく逆で、創造面での自由を獲得するために『パプリカ』を映画化しようとした[12]。それ以前に監督した映画は、すべてが「現実的な枠組み」の中であっても、見方を少しシフトすることで現実とは異なる大きなファンタジーが生まれてくる、という考え方で制作していた[12]。しかし、現実的な枠組みで映画の世界観を構築し続けていると、どうしても自分の描けるものが限定されてくる。技術的にはもっと色々なことを描写することは可能であるにもかかわらず、アイディアそのものが限定されれば技術の使いようもない。こうしたディレンマもあり、自分の想像力を拡張するために選んだ企画が『パプリカ』だった[12]

映画で描かれた精神病患者が見る特殊な悪夢のパレードは原作にはなく、すべて今が考えたものである[10]。時間的な制限も大きい映画において、原作のように色々な夢をさまざまな形で描くということは難しく、映画全編を通じて柱となるような夢、特にそれが出てくると一目で悪夢と伝わるような夢のイメージを中心に据えることにした[1]。それが無生物たちによるパレードだった[10][1]。パレードのシーンは、音楽を担当している平沢進と2人3脚で作り上げた[23]。今曰く、「平沢さんの音楽から、映像が生まれてくる感じですね。私にとって音はすごく大切。音半分、映像半分。それが合わさって100ではなく、150にも200にもなっていくと思っています」[23]
反響

映画批評サイトRotten Tomatoesでは批評家から84%、観客から87%の肯定的評価を得ている[24]

2008年の米国ニューズウィーク誌日本版が選んだ歴代映画ベスト100には『パプリカ』(2006)が、日本アニメから唯一選ばれた[25]

世界最古の映画機関の一つである英国映画協会(BFI)が選択した、「1925年から2020年までの年代別傑作日本映画」にて選ばれた数少ないアニメ作品の中で、1988年度の『AKIRA』や2001年度の『千と千尋の神隠し』などと共に、2006年度の傑作日本映画として選ばれている[26]

ハリウッド・リポーター選出の大人向けアニメ映画のベスト10において8位にランクインした[27]

クリストファー・ノーラン監督脚本製作による2010年アメリカ映画インセプション』にインスピレーションを与えたと言われる[2][26]。本作は他人と夢を共有できる装置の発明をめぐり、悪夢を見させる夢のテロリストと夢探偵パプリカの戦いを描くが、『インセプション』も他人の夢に侵入して潜在意識の中からアイデアや情報を抜き出す産業スパイが登場し、ホテルの部屋から飛び出した男が廊下を進むうちに通路がねじれてゆくシーンや、空間の一部がガラスのように崩れ落ちるシーンなどのビジュアルにその影響が色濃く見て取れる[2][26]
受賞

第12回アニメーション神戸 作品賞・劇場部門

第14回Chlotrudis Awardsベストデザイン賞

第25回ポルト国際映画祭Critics' Award受賞

第35回モントリオール・ニューシネマフェスティバルPublic's Choice Award受賞

第8回ニューポート・ビーチ・フィルム・フェスティバルFeature Film Award受賞

東京アニメアワード2007 優秀作品賞劇場映画部門、個人部門音楽賞(平沢進)

脚注[脚注の使い方]
注釈^ 今は『パプリカ』のみならず、筒井康隆作品全般のファンなので、映画『パプリカ』の制作には敬意を持って取り組んだが、原作を尊重するということは必ずしも原作のストーリーやエピソードのディテールに忠実であることを意味せず、原作を尊重するからこそ映画として作り替える部分が必要になることもあると思うと語っている。


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