パピルス
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多くの巻物から必要な情報を探すには不便であったが、筆記用パピルスの、ギリシャなどへ盛んに輸出される前までの主な用途は副葬品である死者の書が大部分であったので巻物でも不便はなかった。古代ギリシアで作られた巻物は長くても10メートル内外だが、エジプトでは30メートルに及ぶものがあった。

製品には材料の薄片を取る部位などによって数等の等級があり、『博物誌』にはローマで流通する商品として八種類の名称が挙げられてある[9]。高級品は純白で、罫線つきのものもあった。最低級品は包装用であった。しばしば古いものは表面を削って再利用されたり裏を使ったりされた。エジプトほど気候が乾燥していない地方ではパピルスは注意していないとカビなどに侵されやすかった。またローマでは古いパピルスを元の薄片に分解し、表面を削って文字を消したり傷んだ薄片を除いて新しいものと取り替えるなどしてあるいは小麦粉から作った糊で張り合わせた再生品の販売も行われていた。後にキリスト教徒が聖書を筆写するようになると、幾度も読み返したり検索したりする必要からコデックス(冊子本)も作られるようになったが、強度上の問題があった。

プトレマイオス朝時代には、エジプトの輸出品として各地に広まった。フェニキア人の都市ビブロス(現在のレバノンのジュバイル)がそのギリシャ向けの積み出し港だったのでビブロスの名がパピルスを意味する語に、また本を意味するようにもなり、現在英語で聖書を意味する語「Bible(バイブル)」もそこから来ているとされる。

後に小アジアヘレニズム国家、ペルガモン王国に対する禁輸がもとで同国で羊皮紙の生産や文芸書への使用が奨励され、使いやすい羊皮紙が生産されるようになった。羊皮紙を意味するパーチメントはこのペルガモンに由来すると言われている。羊皮紙も高価ではあったが、強度があり両面に書けるなど冊子としての利用に適しており、誤字は削って書きなおし可能という利点があったので、エジプトから遠い地方で普及したが、全ての書き物を羊皮紙で置き換えるのは高くつくため、手紙やノートなどにはパピルスが使われ続けた。800年頃に中国から紙の製法が伝来するとやがて伝統的なパピルスは生産されなくなった。その後、20世紀後半に入って専ら土産物として生産されるようになり、エジプト土産の一種としての地位を確立している。
出典^ 大沢 1978, p. 58.
^ 大沢忍『パピルスの秘密 復元の研究』みすず書房、1978年、25-26頁。 
^ Houston, Keith, The Book: W. W. Norton & Company, 2016, pp. 4?8 excerpt A Cover-to-Cover Exploration of the Most Powerful Object of our Time
^ Ayn Sukhna and Wadi el-Jarf: Two newly discovered pharaonic harbours on the Suez Gulf|journal=British Museum Studies in Ancient Egypt and Sudan|last=Tallet|first=Pierre|volume=18|year=2012|pages=147?68|issn=2049-5021|url=https://www.britishmuseum.org/PDF/Tallet.pdf
^ H. Idris Bell and T.C. Skeat, 1935. ⇒"Papyrus and its uses" (British Museum pamphlet). webarchive https://web.archive.org/web/20131018121945/http://www-user.uni-bremen.de/~wie/Egerton/BellSkeat2.html 2024年1月15日閲覧
^ 大沢 1978, p. 73.
^ ワフィーカ・ノスヒー・ワフバ原著、青木彩香訳「パピルス紙の製造に関する諸説とパピルス紙の保存処置」『エジプト学・文化財研究セミナー』2015年、178頁。 
^ 大沢忍『パピルスの秘密 復元の研究』みすず書房、1978年、51-52頁。 
^ 大沢 1978, pp. 26?27.

参考文献

大沢忍『パピルスの秘密 復元の研究』みすず書房、1978年。全国書誌番号:.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}78019610。 

関連項目

エレファンティネ・パピルス

オクシリンコス・パピルス


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