パニック障害
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パニック障害は、発作の不可解さと、発作に対する不安感によって悪化していく障害であり、医師が明確に症状について説明し、心理教育を行うことが全ての治療の基礎となる[6]。たとえば、パニック発作で死に至ることはなく身体に害はないこと、発作は時間経過とともに自然に収まること、パニック障害も治療可能な病気であること、薬物療法と認知行動療法の併用によって効果的に治療できること等を、双方向のやりとりを通して患者の理解を確認しながら丁寧に伝えていく[37][38]

心理療法の中で有効性について最もよく研究されているのが、認知行動療法である[6]。認知行動療法では「恐れている状況への曝露」「身体感覚についての解釈の再構築」「呼吸法」などの訓練・練習が行われ、基本的には不安に振り回されず、不安から逃れず、不安に立ち向かう練習を行う。

NICEは、パニック障害に対しては認知行動療法を用いなければならない(should be used)[36]、その治療期間は妥当なものでなければならない(総計7-14時間)[36]、多くの人では毎週一回 1 - 2時間のセッションを最大4か月行うと勧告している[36]
曝露療法(エクスポージャ療法)
曝露療法(エクスポージャー療法)は、パニック症に対する認知行動療法の中核となる技法である。事前に適切な心理教育を行い実施にあたっての不安を軽減するとともに、患者のペースや意志を尊重しながら、下記の2種類のエクスポージャー(不安を喚起する感覚や状況に自らの身を置くこと)の実施をサポートしていく[39][40][41]。1. 内部感覚エクスポージャーパニック発作の症状である、身体の内部感覚の変化(動悸・息切れ・めまい・過呼吸など)に対して、エクスポージャーを行う。これにより、パニック発作の症状が時間経過とともに自然と治まること・体に無害であることや、症状を自らコントロールできることを、自らの体験を通して認識することができ、パニック発作に対する恐怖感が和らいでいく。すると、状況エクスポージャーの実施や、日々の生活の中で恐れている状況に直面することへの抵抗感も下がっていく[42][43]。2. 状況エクスポージャーパニック発作の症状が出るかもしれないという不安のために避けている状況や場所に対して、エクスポージャーを行う。まず、患者の話に共感的に耳を傾けながら、比較的不安の少ない状況から不安の大きい状況まで列挙して整理する(不安階層表の作成)[44][45]。その上で、不安の少ない状況から段階的に直面していき、「不安場面に直面しても、実際には自分が考えていたような恐ろしい結末は起こらない[46]」・「不安場面に直面しても、時間の経過とともに、不安やパニック発作の症状が自然に消えてなくなる[47][48]」・「エクスポージャーの実施を重ねるごとに、不安やパニック発作の症状が少なくなり、やがて出なくなる[49][50]」ということを自らの体験を通して確かめていけるようサポートする。これらが治療者の援助のもと繰り返し実施されることで、症状が消失していく[51]。また上記に加えて、曝露療法の実施前に、不安やパニック発作が時間経過とともに(もしくは実施を重ねるごとに)自然となくなっていくことを治療者がグラフによって示したり、実施後に、不安やパニック発作が時間経過とともに自然となくなっていったことを患者にグラフや表にして記録してもらったりして、不安やパニック発作は回避せずとも必ずなくなっていくという認識を持てるよう患者をサポートし、効果的な治療を行った事例も報告されている[49][52]

なお、呼吸法漸進的筋弛緩法などのリラクセーション法も有効であり、治療者はそれらの技法を身につけられるよう患者をサポートする[53]。ただし、主となる治療法は上記の曝露療法(エクスポージャー療法)であり、リラクセーション法は曝露療法の構成要素である内部感覚エクスポージャーや状況エクスポージャーを妨げる形で行われてはならないとされ、曝露療法の実施を促進するための補助的な技法として用いられる[54]
セルフヘルプ

NICEのガイドラインでは、患者に対し認知行動療法理論に基づく読書療法を提案しなければならない[55]、利用可能な自助グループの情報を提供しなければならない[55]、またエクササイズの一般的な有効性について情報提供しなければならないとしている[55]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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