パトロールカー
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1955年(昭和30年)、当時ほとんどが白色一色であった一般車と区別するため[7]、米国のパトロールカーを参考にして、未舗装道路が多かった当時の道路事情を考慮して下半分を汚れの目立たない黒塗装のデザインにした[8]。しかし細かな規定はなく、各都道府県警により塗り分け方や警光灯の形状などが微妙に異なっている。文字表記は道府県によって「○○県(府)警」(例・大阪府警)と「○○県(北海道)警察」(例・神奈川県警察)に分かれている。香川県警察では以前は「香川県警」だったが、近年導入された車両では「香川県警察」に変更されている。

字体についても様々であるが石川県警のように明朝体からゴシック体に変更された地域もある。現在、明朝体を使用しているのは鹿児島県警熊本県警など少数である。岐阜県警は、高速隊のみ、フロントドア下側に白抜きで、岐阜県警と書かれている。POLICE表記はなし。青森県警は、フロントドア下側に白抜きで白鳥のイラストが描かれている。大分県警は、以前はアメリカの車両のように赤色と青色の混合警光灯を装備していた車両も存在したが、これは皇族警衛の際に使用された車両である。皇族警衛では地域を問わず車列先導を担当する制服パトカーは、散光式警光灯の片側もしくは一部のカバーを青色に付け替えた車両を用いる慣習であるが、近年は赤色灯はそのままで着脱式流線型の青色警光灯を追加する方法が主流となった。また、2008年(平成20年)12月に福岡県で開催された日中韓首脳会談の警護の際は、警護対象車両を識別するため、国ごとに異なる色の警光灯を装備していた。なお日本は赤と青の混合の前面警光灯、韓国は赤と青の混合の警光灯、中国は赤と緑の混合の警光灯である。

また、在日米軍が所有する一部のパトカーも青と赤混合の警光灯を装備した車両がある(アメリカでは赤の閃光灯が緊急車、青の閃光灯が警察車を意味するため両方が必要)。また警視庁は2007年(平成19年)、外国人にもパトカー(ポリスカー)であると認識してもらえるように、また視認性向上などの理由で黄色の反射材で作られた「POLICE」文字のステッカーを左右ドアと後部バンパーに、警察手帳に装填されている記章をデザイン化した反射材製のステッカーをドアに貼り付ける事を決めた(画像参照)[9]

パトカーは警察の証として赤色警光灯やサイレンを装備しているのではなく、警光灯・サイレンは道路運送車両法に定められた緊急通行車両の緊急走行時の安全装備として取り付けている。目的地に緊急走行で高速走行をする際にパトカーが事故を起こさないよう、視覚(警光灯の光)と聴覚(サイレン音)で道路を通行している他の車両や歩行者に緊急走行中と認識させる注意喚起の為の安全装備品(警光灯・サイレン)としてである。

なおパトカーは種類・用途により排気量・出力が異なっている。大きい順に、高速隊・交機パトカー(排気量3,500 - 2,000 cc)、警らパトカー(2,500 - 1,900 cc)、ミニパトカー(いわゆる「ミニパト」、1,500 - 660 cc)である。このため、隊を越えての車両異動(例:警ら隊から交機隊への車両異動など)は基本的になく[注 1]、各隊毎に専用車両が新規発注されている。ただし寄贈や県警独自の方針でスポーツカーを発注する場合もあり、中でも日産・フェアレディZは歴代全車種がパトカーとして導入実績がある。

また多くのパトロールカーには、屋根に所属警察署・隊名略号(コード)と号車数字が表記されており、警視庁や一部の警察本部ではフロントガラスにもこの表記がある。一例として警視庁麹町警察署所属の1号車であればフロントガラスに「麹町1」、屋根には「麹1」、警察本部(警視庁に限らない)所属の302号車なら「302」、高速道路交通警察隊所属3号車なら「高速3」、屋根には「速3」など。

警察無線識別信号を兼ねているため、警察官は無線交信時、最初にその番号(コールサイン)を名乗る事になっている。例えば、警視庁の本部のけいし217号車の場合は「けいし217から警視庁、現在〇〇交差点付近を左折、南進。」ということになる。特に屋根上の表記は「対空表記」と呼ばれ、ヘリコプターを運用する航空隊員が地上の車両と無線交信をする際に、コールサインを把握する目的がある。そのため警察ヘリと交信するため、基幹系警察無線を基本的には車載していないミニパトなどの交通執行車両や交番駐在所配備車両には対空表記がないものが多い。秘匿の用をなさなくなるため、覆面パトカーにも通常は表記されない。
覆面パトカー交通取締用の覆面パトカー(マークX+Mスーパーチャージャー)

覆面パトカーは平時の外観は一般車両と同じ様相をしており、緊急走行開始時や対象者検挙時にのみ、赤色灯を露出させサイレンを鳴らすパトカーをいう。パトカーであると気づかれずに、不審車両や不審人物への職務質問が出来るので、不審者を取り逃がす可能性が少ない。

正式には取締りに用するものを「交通取締用四輪車(反転警光灯)」、要人警護に用するものを「警護車」、犯罪捜査の用に供するものを「捜査用車」といい、総称してこの3種を覆面パトカーと呼び単に「覆面」や「覆面車」と略される時もある。ただし「捜査用車」の中には、緊急自動車指定(騒音走行認定)を受けておらず、着脱式赤色回転灯とサイレンを装備していない一般車両も存在する。

また覆面パトに乗務する警察官は、必ずしも警察の制服を着ているとは限らず、「私服警察官」として、一般人と同じ服装でパトロールを行う場合もある。警ら・交通機動隊の覆面パト隊員は、制服・ヘルメット着用、機捜の覆面パト隊員はスーツ着用というのが一般的だが、私服の場合もある。

外装上の特徴として、警察無線用のアンテナがある。基本的には無線機を搭載していると思わせない擬装を施したアンテナが使用され、古くはフェンダーに取り付けるラジオアンテナを模した「F-1型アンテナ」やパーソナル無線用のアンテナを模したタイプが使用され、1990年代には自動車電話用アンテナを模した「TLアンテナ」が主流となった。

それぞれに「本来のラジオ用アンテナは存在するため『ラジオアンテナが2本有る』ように見える」「パーソナル無線搭載一般車両の減少」「携帯電話の普及による自動車電話の減少と、携帯電話オプション品としての同型アンテナの普及率の低さ」という短所から、覆面パトカーの象徴のように、広く一般にも認知され、秘匿性に欠ける。このため2000年代初め頃からは、車載アナログテレビのダイバーシティアンテナを模した「TAアンテナ」に置き換わった。

しかし、日本の地上デジタルテレビ放送の開始で、一般車両のテレビ視聴用にはフィルムアンテナが主流となったため、TA型の秘匿性も落ちており、警察無線用の周波数に調整したフィルムアンテナや、現在ラジオアンテナの主流であるプラスチック外装で短い棒状の通称「ユーロアンテナ(日本アンテナ製:MG-UV-TP、WH-UV-TPなど)」が主流となっている。例外として、一部の県警ではアマチュア無線用のホイップアンテナに擬装したアンテナを使用している場合もある。
交通取締用四輪車(反転警光灯)警視庁の交通取締用四輪車(反転警光灯)。車種はTAアンテナを装着した180系クラウン。交通取締用四輪車(反転警光灯)。フロントグリル内警光灯、ユーロアンテナ、二段ルームミラーの装着が確認出来る200系クラウンを使用している。

交通取締用四輪車(反転警光灯)は、警護車同様に赤色警光灯が車内天井部に格納されており、緊急時にはルーフ中央部分が開いて小型の流線型赤色警光灯が外部にせり上がって来る(かつて180度反転して収納されていた構造から「反転式」と呼ばれるが、現行製品は格納スペースの中で横倒しになっており、蓋が開く動きに連動するリンク機構によって外部に露出させる)。また、ごく初期の覆面パトカーは、回転灯が上昇・下降するのみで反転はしなかった模様で[10]、1967年に導入の覆面パトカーの映像が視聴できる。

交通覆面パトカーは、交通機動隊(交機隊)や高速道路交通警察隊(高速隊)、また警察署(所轄署)の交通課などに配備されて、主に交通取締りを行なっている。交通機動隊など交通違反取締りを行う車両には、屋根中央部分から格納されている赤色灯が、車内のスイッチ操作により自動的にせり上がるようになっている。そのため、車内天井には反転灯を収納する場所の窪み(その形状から「洗面器」と呼ばれる事がある)がある。

また、車内に乗っている警察官は、原則として交通機動隊の青色制服、または合皮製黒色制服を着用することになっているので、車内をよく観察すれば、警察車両であると判別できる。例外として、各地の暴走族(マル走)対策車両などには、捜査用車両と同様にマグネット式の赤色灯を使うものが存在し、マル走対策などでは、交通機動隊であっても私服で出動する場合もある。リアトレイに設置された電光表示板に「パトカーに続け」や「速度落とせ」などと表示される機能の付いた車両もある。

交通覆面パトカーは制服パトカーと同じく、各自動車メーカーに専用グレードが存在する。しかし制服パトカーに比べて需要台数が少ないため、車種も少なく、現在はトヨタ・クラウンのみがカタログモデルとして設定されている。しかし制服パトカーでの記述にあるように、県警単位で購入したり、警察庁一般競争入札で一括調達するケース、寄贈されるケースが主流となっているため、一般市販車ベースの覆面パトカーも多数存在する。バブル景気には、貿易黒字を減少するため、国費でベンツBMWの外国製高級車が購入され、主要県警の高速隊に配備されていた事例もある。

車両価格は、2016年に警視庁が購入、交通機動隊に配備したトヨタ・マークXの例で、4台で3,331万1,640円(1台あたり832万7,910円)。ただし、3.5リッターV型6気筒エンジンを搭載するスポーツモデルに、専用開発されたスーパーチャージャーECUを換装、トルクと馬力が高められた特別な仕様のものである[11]

フロントバンパー内にオートカバー形状の警光灯と、リアガラス上部左右にTAアンテナを装着した180系クラウン。

フロントグリル内に警光灯と、リアガラス上部左右にTAアンテナを装着した180系クラウン。


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