アメリカでは機関ごとの方針でパトカーの装備は異なり、上記の写真で見られるようにプッシュバンパーひとつ取ってもまちまち。装備品の製造メーカーも多く、同じ機能を目的としていても様々な製品がある。
ワーニングライト(ライトバー)
LED式警光灯ミシガン州警察のダッジ・チャージャー。ボンネットに設置されているのが「Shark fin」
日本で使用されているものと機能や形状はおおむね同じだが、アメリカではハロゲンやストロボ式以外にもLED式がかなり広く普及している。ハロゲンやストロボ式に比べ、LED式はかなり薄くできるのが特徴。高速走行で空気抵抗が強くなると稀に警光灯が風圧で取り付け部からもげてしまうことがあるので、高速での追尾を行うCHPは、ハロゲン式ながらより高速走行に耐えられる ⇒Federal Signal社の「Vector」を採用していた(5個の回転灯が三角形に並んでいる)。しかしLED式の方が空力的に優れており、また警光灯としての性能も十分であることからLED式に変更した。近年ではハイウェイパトロール以外でも、Federal Signal社のVision SLR、ValorなどのLED式ライトバーを採用する機関が増えている。スリックトップと呼ばれる、通常の警ら用パトカーと同様の塗装を施しているものの、上のダッジ・チャージャーのようにライトバーを設置しないパトカーもある。元々は高速追尾時の空気抵抗を減らすためであり、より目立ちにくくなる効果もある。
ワーニングライト(そのほか)
グリル内やプッシュバンパーに取り付けるタイプ、ボディやサイドミラー前面に埋め込むタイプ、ライトシールド内に設置するタイプ、フロントグラス内やダッシュボード、デッキに取り付けるタイプなど様々な形状のものがある。ヘッドライトや、ブレーキ&バックアップライト自体をリレーや半導体で点滅させるものも多い。
カリフォルニア州では、道路法で“一つ以上の赤の不動光が前から見えること”が緊急走行の条件となっている。警察車となるにはこれに加えて青の点滅灯が必要。また、覆面車のデッキには黄と青の点滅灯を装備している。
ディレクショナルライト
他の車両に対して交通誘導のための合図を出す装置。8個程度のライトが横一列についており、左流れや右流れ(トラックやバスの3連ウインカーのような感じ)、中央から両脇向け流れ、全点滅などの発光パターンを使って交通誘導を行ったり、ワーニングライトとして使用する。ライトバーと一体になっているものと、単独で設置するものがある。全てオレンジ色のライトのもののほか、最端部のみ赤や青だったり、最近ではLEDの普及によって何色か発光させられるものもある。Whelen社の「トラフィックアドバイザー」やCode3社の「アロースティック」という製品名がその役割をよく表している。
LED電光掲示板 (Message board)
ディレクショナルライトと同様に、警光灯後部やリアハッチ窓の上部に装着するもの。POLICE EMERGENCY KEEPBACK(警察官対応中 接近注意)といった文章を表示可能[47][48]。文章及び発光色は専用のソフトを使って編集と設定をすることが可能。
サイレンアンプ&スピーカー
日本より音の強い100Wタイプが主流で、200Wタイプもある。音色は以下のようにいくつかの種類がある。
Wail:周期吹鳴。周期的に高い音と低い音を交互に鳴らす。(参考
以上の装備は、集中コントローラーに接続され、レバー一つで全停止から“サイレン吹鳴、警告灯発光”“サイレン停止、警告灯のみ発光”までが切り替えられるようになっている。
停止指示板
ミシガン・ハイウェイパトロールの特徴的装備だが、ボンネット上に「STOP」と書かれた照明付の板を設置し、停止を求める場合にそれを点灯させて停止を促す。その形状から「Shark fin」(サメのヒレ)というあだ名がついている。昔のパトカーには右前のフェンダー付近に「STOP」の文字が出る警光灯を装備し、これを用いて停止指示を行うこともあった。現在はワーニングライトとサイレン、拡声器によって停止指示を行うのが一般的なので、ほとんど見られなくなった装備である。
スポットライト
ライトバーに前方や周囲を照らすテイクダウン(takedown―分解・解体)ライトや、側方を照らすアーリー(alley―路地・裏通り)ライトというものが内蔵されている。また、車体前部ピラーに、内側から操作可能なガンスポットライトを設置しているものが多い。手持ちのものを車内に備え付けている場合もある。
プッシュバンパー
グリルガードのような形状をしたグリル正面に突き出している部品。フェンダーまで回りこむような形状のものもある。PITマニューバと呼ばれる逃走車両への強制停止措置などにおいて、車体を防護しつつ確実に目標を「押す」ために用いられる。
パーティション
前後の座席を仕切る板。金属製の下部に、上部は金属メッシュやアクリル板というのが一般的。後部座席に乗せた容疑者が暴れても、前席の乗員に危害が及ばないようにするためのもの。中からは開けられない後部ドア、一体成型の後部座席と相まって、“動く留置場”となる。
リアシート
前席がファブリックシートでも、後席はビニールレザーや合成樹脂であることが多い。護送中の被疑者が隠し持つ証拠物件を座席の隙間に隠すようなことができないよう、一体成型された硬いベンチのような後部座席もある。これは頑丈な構造ゆえ被疑者が後部座席で暴れても痛みにくく、体液や嘔吐物などで汚れても洗浄が容易。ドアパネルまで覆ってしまうものもある。
ガン・ロック
ショットガンや自動小銃の火器固定用器具で、電子ロックで施錠できるようになっている。天井やパーティション、ダッシュボード、トランク内などに設置されている。銃を戻す時はワンタッチ、取る場合は開錠が必要になっている(隠しボタンを押す事で一瞬だけ固定部が解放される)。
無線機
パトカーのことをRMP(Radio Mobile Patrol)と呼ぶ所以でもある無線機は必需品。単独で使用する一般的なタイプのほか、携帯無線機を差し込んで使用するハンドマイク付きの充電スタンドタイプなどもある。CHP、ロサンゼルス市警察では小型無線機が搭載されており、カーラジオやサイレン・警光灯などと共に集中制御出来る制御盤が接続されダッシュボードに装備されている(ラジオが鳴っていても無線の信号が入ると最優先で音を大きくして聴かせる)。無線機ではパソコンを使って予め設定しておく周波数しか送受信出来ないため、州の他官庁の動静を知るために受信機(一般には800MHz帯)を装備する機関もある。
車載端末(MDT/CDT)
データ通信を活用し、ナンバー照会や手配情報においてより複雑な情報のやり取りを行う。カーロケーターと同じく警察の指令所で位置を確認したり、また他のパトカーの所在地を表示する機能もある。MDT(Mobile Data Terminal)に対しCDT(Computer Data Terminal)はWindowsなどのOS(使用されているのは一般版ではなくWindows Embedded)で動かすため、車内で報告書などの文書作成を行うことなどもできる。取り外し可能なノートパソコンを乗務ごとに接続するものや、デスクトップ又はノートパソコンをトランクに固定設置するものなどがある。近年はパトカーに搭載される電子装置が増えたため、車載端末のインターフェイスはデータのやり取りに用いるだけではなく、サイレン、警光灯、無線、レーダーなどを統合的に操作できるものが増えてきた。