パトロールカー
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アメリカ国内では、覆面パトカーを装った車両の指示に従って停止したところ強盗や強姦の被害に遭うケースが頻発しているため、ニューヨーク州などでは、州内において覆面車両を交通取り締まりに用いることを全面的に禁止する法案の審議が行われている[37](使用していいのは刑事部だけ)。
車種

採用されている自動車は、国産のビッグスリー、つまりゼネラルモーターズ(シボレー、GMCが多い)、フォード・モーター(フォードが多い)、クライスラー(ダッジ、ジープが多い)の各社製が大半を占める(日本でトヨタ・日産が多く採用されるのと同じ理屈である)が、外国製も使用されている。特にトヨタや日産が多い。

2010年代前半まではフォード・クラウンビクトリア・ポリスインターセプター(フォードのパトカー仕様車の呼称)が、全パトカーの7割?8割を占めていた。90年代中頃までは同車とシボレー・カプリスが多かったが、カプリスが生産中止になってしまい、警察一般で好まれる「パワフルなFRのフルサイズセダン」という要件を満たすものが同車のみになってしまったのが要因。

1990年代の終わりごろ、カリフォルニア・ハイウェイ・パトロール(CHP)はボルボ・S70-Tを試験的に採用したことがある。当時採用していたカプリスが生産中止になり、クラウンビクトリアも経営の効率化のために生産中止になるのではないかと言われ、アメリカ的なFRフルサイズセダンの存在自体が自動車市場において風前の灯火であると言われていたのが原因。これらの車両がなくなってからも円滑に車両を調達するため、もっと他の車種にも目を向けようと考慮したものであった。しかしボルボS70はフルサイズセダンに乗りなれた警官にはあまりに狭く不評で、本格的な採用とはならなかった。幸いにしてクラウンビクトリアの生産は継続され、CHPは今日までそれを使用していた。2019年夏、CHP最後のクラウンヴィクトリアが引退したと報じられた。

ただし、FRが絶対条件というわけではなく、FFのシボレー・ルミナ、シボレー・インパラダッジ・イントレピッドなども採用されている。

2006年にダッジ・チャージャーのパトカー仕様車が、フォード以外から発売されるパトカー向けFRセダンとして久々に登場し、以後採用する機関は徐々に増えている。2008年にはカーボンモータース社がセダン型のパトカー専用車「E7」を発表した。ディーゼルエンジンによる燃費の向上や専用設計によるパトカーとしての最適化が行われていると同社は説明している。2009年、ニューヨーク市警察は環境対策の一環として日産・アルティマを採用。また、GMは2011年から傘下のホールデンで製造されているカプリスをベースにしたシボレー・カプリスPPV(Police Patrol Vehicle)を供給すると発表した。

電気自動車については、カリフォルニア州フレモント警察でテスラS85(2014年モデル)のパトカーを試用していたが、指名手配されていた容疑者の車を追跡中、電欠で取り逃がすという失態を経験している[38]2016年ロサンゼルス市警察は、テスラ・モデルSを2017年から本格導入することが発表されたが、高額な費用がネックとなり導入が遅れ、コロラド州デンバー市警察が最初の導入例となった[39]

そのほか、管轄や目的によって、シボレー・カプリスダッジ・マグナムなどのステーションワゴンシボレー・コルベット、同・カマロフォード・マスタングなどのスポーツカーシボレー・サバーバンシボレー・タホフォード・エクスプローラーフォード・エクスペディションダッジ・デュランゴのようなSUVシボレー・シルバラードフォード・レンジャーフォード・F-150などのピックアップトラックシボレー・エクスプレス、同・アストロなどのバンハマーなどのオフロードビークルなども多く使用されている。特殊部隊では器材と要員を運び現地対策本部にもなるバンが必須である他、銃撃を避けて民間人を救出するために軽装甲車を配備することもある。

2010年代後半からは、前述のクラウンヴィクトリアが生産終了したこともあり、また様々な要件からSUVのフォード・エクスプローラーをベースにした、ポリス・インターセプター・ユーティリティがシェアを伸ばしており、クラウンヴィクトリアに変わる主力車両となっている。

合衆国議会警察フォード・クラウンビクトリア

カンザス州警察のダッジ・チャージャー

シボレー・カプリスポリスパッケージ、見本車両

連邦防護局シボレー・タホ

アムトラック警察のフォード・エクスペディション

ニューヨーク市警察のフォード・ポリスインターセプター

パトカー専用モデルの詳細

一般的に「ポリスパッケージ(Police package)」「ポリスインターセプター(Police Interceptor)」と呼ばれるもの。フォードは「P71」、GMは「9C1」「B4C」などといった商品コードを使用している。

土台となる車種からの変更点としてはエンジンの出力向上、ラジエーターバッテリーの大容量化、電装品の耐久性向上、足回りの強化、内装の簡素化といったもの。メーカー出荷時にワーニングライトやサイレンなどを装備することもできるが、後述するように実際にはその警察ごとに装備の仕方は異なるので、購入後に緊急車両専門の架装業者に依頼することも多い。大きな自治体や警察組織では自前の工場を持っていたりする。
現在販売中のもの
シボレー・タホ
フルサイズSUVであるタホの警察仕様。警察活動全般向けのPPV(Police Pursuit Vehicle)は5.3L V8の後輪駆動と四輪駆動が用意され、伝統の商品コード9C1が割り当てられている
[40]。SSV(Special Service Vehicle)はV8の四輪駆動のみで、オフロード用サスペンションを組み込んだ不整地仕様。パークレンジャーのような山岳部や原野で活動する警察向けの商品である。こういったことからタイヤのメーカーオプションが充実しており、オールテレインやアグレッシブトレッドを注文する事が可能になっている[41]
ダッジ・チャージャー
ダッジのフルサイズセダン「チャージャー」を土台に使用したパトカー仕様車。5.7L V8の後輪駆動と四輪駆動、3.6L Vの後輪駆動がある。ブレーキ、冷却システム、電子制御スタビリティーコントロール装置、ステアリングが強化あるいは最適化されているほか、シフトレバーがフロアからコラムに移されている。現在はアメリカのみならず、カナダ、メキシコ、バーレーンなどでも採用されている。チャージャーの警察仕様車の項参照。
フォード・ポリスインターセプター ユーティリティ
2011年に発売された、3世代目のポリスインターセプターの派生車両。2019年に2020年型としてベースのフォード・エクスプローラーがモデルチェンジするのに合わせて、ポリスインターセプター ユーティリティもモデルチェンジを果たした。グレードは3.7LのV6自然吸気と3.5LのV6エコブーストで4WDが用意されている。機構はコンポーネンツを共有するセダンと同じだが、SUVとしての高い汎用性を持ちつつ、セダンに迫る高い走行性能を有しているのが特徴。現在のアメリカの警察用新車市場で最も売れているのがこのユーティリティで、2017年には33,075台が販売されている[42]
販売が終了したもの
シボレー・カプリスPPV
GMが2011年から供給する新型のパトカー。ベースとなるカプリスは往年とは違い、現在はGM傘下の
ホールデンが製造しオーストラリアなど向けに販売されている車種。グレードはパトロール用の「9C1」と、覆面パトカー用の「9C3」の二種類。エンジンはV型8気筒とV型6気筒の2種類のガソリンエンジンで、自動変速機を介して後輪を駆動する。パトカー専用装備としては機能強化や各種端末や通信装置などの他、赤外線暗視装置も装着できる。バッテリーは2個搭載しており、そのうちの一つは高度化する電子装備の駆動用に使用するという。カプリスのホイールベースは3011mmなので、これにより前後席の間に設けられるパーテーションを前席より後ろにずらすことができ、運転席の調整しろが大きくなっている。さらにセンターコンソールをタッチパネル式入力機器にすることも可能。座席も市販車の使い回しではなく、パトカー用にチューニングされたものを使うとのこと。またシボレーブランドで販売されることから、フロントグリルはホールデンのCIがついたものから、シボレーのCIがついたものに変更された。


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