パトロールカー
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これは警察車と認識されないと、追尾した相手から強盗と勘違いされ最悪の場合は銃撃を受ける事さえあるためである[31]SWAT要員は個人ロッカー代わりに装備品一式をトランクに納め、いつでも・どこの現場への招集でも応じられるようにしている(ロサンゼルス市警察)。この場合使用されるのはやはり覆面車である。

両者の中間的存在としてあるのが「Ghost」「Low profile」「Stealth」などと呼ばれる車両[32][33]。単一の車体色に、車体と同系色或いは目立たない意匠で警察を示す標識を施したもの。法令上はMarked扱いになるものの通常のパトカーと比べてそれと認識しづらくなっており、その機能を活かして交通取締や防犯活動に用いられる。以下で述べる覆面パトカーの運用制約があるかないかに関わらず、各州各地の警察で運用されている。

なお、アメリカ合衆国における覆面パトカーの運用態勢は自治体ごとに異なる。例えばオレゴン州警察・バージニア州警察・メリーランド州警察などでは、速度違反を含む幅広い捜査に覆面車両が投入されている[34][35]カリフォルニア州では1923年以来、交通違反取り締まりにおいて覆面車両を使用することが認められてこなかったが、2008年にカリフォルニア高等裁判所は速度制限違反の取り締まりを除いた全ての違反取り締まりに際し覆面車両を使用することを認める判決を出した[36]ニューヨーク州では1996年の州知事令により州警察が交通取り締まりのために覆面車両を使用することが禁止された。しかし、これはあくまで州警察に限られたことであり、市警察や保安官事務所が使用する車両には現在適用されていない。アメリカ国内では、覆面パトカーを装った車両の指示に従って停止したところ強盗や強姦の被害に遭うケースが頻発しているため、ニューヨーク州などでは、州内において覆面車両を交通取り締まりに用いることを全面的に禁止する法案の審議が行われている[37](使用していいのは刑事部だけ)。
車種

採用されている自動車は、国産のビッグスリー、つまりゼネラルモーターズ(シボレー、GMCが多い)、フォード・モーター(フォードが多い)、クライスラー(ダッジ、ジープが多い)の各社製が大半を占める(日本でトヨタ・日産が多く採用されるのと同じ理屈である)が、外国製も使用されている。特にトヨタや日産が多い。

2010年代前半まではフォード・クラウンビクトリア・ポリスインターセプター(フォードのパトカー仕様車の呼称)が、全パトカーの7割?8割を占めていた。90年代中頃までは同車とシボレー・カプリスが多かったが、カプリスが生産中止になってしまい、警察一般で好まれる「パワフルなFRのフルサイズセダン」という要件を満たすものが同車のみになってしまったのが要因。

1990年代の終わりごろ、カリフォルニア・ハイウェイ・パトロール(CHP)はボルボ・S70-Tを試験的に採用したことがある。当時採用していたカプリスが生産中止になり、クラウンビクトリアも経営の効率化のために生産中止になるのではないかと言われ、アメリカ的なFRフルサイズセダンの存在自体が自動車市場において風前の灯火であると言われていたのが原因。これらの車両がなくなってからも円滑に車両を調達するため、もっと他の車種にも目を向けようと考慮したものであった。しかしボルボS70はフルサイズセダンに乗りなれた警官にはあまりに狭く不評で、本格的な採用とはならなかった。幸いにしてクラウンビクトリアの生産は継続され、CHPは今日までそれを使用していた。2019年夏、CHP最後のクラウンヴィクトリアが引退したと報じられた。

ただし、FRが絶対条件というわけではなく、FFのシボレー・ルミナ、シボレー・インパラダッジ・イントレピッドなども採用されている。

2006年にダッジ・チャージャーのパトカー仕様車が、フォード以外から発売されるパトカー向けFRセダンとして久々に登場し、以後採用する機関は徐々に増えている。2008年にはカーボンモータース社がセダン型のパトカー専用車「E7」を発表した。ディーゼルエンジンによる燃費の向上や専用設計によるパトカーとしての最適化が行われていると同社は説明している。2009年、ニューヨーク市警察は環境対策の一環として日産・アルティマを採用。また、GMは2011年から傘下のホールデンで製造されているカプリスをベースにしたシボレー・カプリスPPV(Police Patrol Vehicle)を供給すると発表した。

電気自動車については、カリフォルニア州フレモント警察でテスラS85(2014年モデル)のパトカーを試用していたが、指名手配されていた容疑者の車を追跡中、電欠で取り逃がすという失態を経験している[38]2016年ロサンゼルス市警察は、テスラ・モデルSを2017年から本格導入することが発表されたが、高額な費用がネックとなり導入が遅れ、コロラド州デンバー市警察が最初の導入例となった[39]

そのほか、管轄や目的によって、シボレー・カプリスダッジ・マグナムなどのステーションワゴンシボレー・コルベット、同・カマロフォード・マスタングなどのスポーツカーシボレー・サバーバンシボレー・タホフォード・エクスプローラーフォード・エクスペディションダッジ・デュランゴのようなSUVシボレー・シルバラードフォード・レンジャーフォード・F-150などのピックアップトラックシボレー・エクスプレス、同・アストロなどのバンハマーなどのオフロードビークルなども多く使用されている。特殊部隊では器材と要員を運び現地対策本部にもなるバンが必須である他、銃撃を避けて民間人を救出するために軽装甲車を配備することもある。

2010年代後半からは、前述のクラウンヴィクトリアが生産終了したこともあり、また様々な要件からSUVのフォード・エクスプローラーをベースにした、ポリス・インターセプター・ユーティリティがシェアを伸ばしており、クラウンヴィクトリアに変わる主力車両となっている。

合衆国議会警察フォード・クラウンビクトリア

カンザス州警察のダッジ・チャージャー

シボレー・カプリスポリスパッケージ、見本車両

連邦防護局シボレー・タホ

アムトラック警察のフォード・エクスペディション

ニューヨーク市警察のフォード・ポリスインターセプター

パトカー専用モデルの詳細

一般的に「ポリスパッケージ(Police package)」「ポリスインターセプター(Police Interceptor)」と呼ばれるもの。フォードは「P71」、GMは「9C1」「B4C」などといった商品コードを使用している。

土台となる車種からの変更点としてはエンジンの出力向上、ラジエーターバッテリーの大容量化、電装品の耐久性向上、足回りの強化、内装の簡素化といったもの。メーカー出荷時にワーニングライトやサイレンなどを装備することもできるが、後述するように実際にはその警察ごとに装備の仕方は異なるので、購入後に緊急車両専門の架装業者に依頼することも多い。大きな自治体や警察組織では自前の工場を持っていたりする。
現在販売中のもの
シボレー・タホ
フルサイズSUVであるタホの警察仕様。警察活動全般向けのPPV(Police Pursuit Vehicle)は5.3L V8の後輪駆動と四輪駆動が用意され、伝統の商品コード9C1が割り当てられている
[40]。SSV(Special Service Vehicle)はV8の四輪駆動のみで、オフロード用サスペンションを組み込んだ不整地仕様。パークレンジャーのような山岳部や原野で活動する警察向けの商品である。こういったことからタイヤのメーカーオプションが充実しており、オールテレインやアグレッシブトレッドを注文する事が可能になっている[41]


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