パトロールカー
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よって、所轄の警察署内練習コース[注 3]運転免許試験場内コース等で(一般の自動車教習所より)高度かつ厳しい運転技能習熟訓練を長期にわたり積み重ね、かつその試験(検定)に合格しなければならない(訓練・試験内容は所属部署や車種により異なる)。また高速隊所属の警察官は(車両の排気量・出力が一般道路用パトカーより大きくて速度も速く、かつ自専道上での取締や事故処理は高速走行している他車に轢かれる危険と隣り合わせのため)一般道路以上に高度な運転技能・体力・臨機応変の判断力が要求される。なお(警察学校を卒業したばかりの)新人警察官は場内コースにおける走行訓練・教習のみならず、パトカー警ら中も先輩・上司警察官から運転技能等を徹底的に叩き込まれる[注 4]

さらに積雪の多い地方においてはスリップ事故を起こさぬよう、夏期の乾燥路面以上に慎重かつ迅速な運転が要求される。このため全警察官に対し冬道安全運転技能向上訓練が課されている。なお検定は1級?4級まであり、緊急走行をする(サイレンを鳴らしパトライトを点灯させて走る)場合は2級以上の検定に合格しなければならない(3級以下は「緊急走行可能な車種と場面を絞る」という条件付きでの運転となるため、警察官としての守備=任務遂行範囲が狭まる)。またパトカー運転訓練指導員になるためには最も難関である1級の検定に合格する必要がある(これら技能検定は一般の運転免許技能試験より難しく、合格は狭き門となっている)。加えて(一般の「運転免許更新試験」にあたる)「パトカー及び白バイ運転技能考査」も毎年実施されており、これに不合格となった警察官はパトカー・白バイの運転が一定期間出来なくなる。

パトカー(緊急車両)運転資格の車種区分は各都道府県警により異なっており、警視庁の場合、運転資格は軽自動車限定とそれ以外の二種類であり、公用車の運転には緊急走行を行わない一般職員であっても同じ資格を取得しなければならない。技能試験は緊急車両向けの特殊な項目や高度な技術が必要なものは存在せず、免許試験場における普通免許の実技試験と全く同一の内容である。

パトカー・白バイの運転技能習熟訓練は「普通MT免許及び自動二輪免許を取得後2年以上経過し、かつ無事故無違反を1年以上継続」という条件を満たした警察官のみ参加可能(参加人数には上限が設けられており、技能試験不合格が続いた警察官はパトカー・白バイ運転不可。新人警察官は警察学校における研修期間中に「3級」までの取得を目標とした車両運転訓練を受ける。パトカーはMT車が大半を占めているためAT限定免許では原則運転不可であり、MT免許取得が最低条件)。また最も高度なパトカー及び白バイの運転技能と臨機応変の判断力を必要とする「高速隊」へ配属されるためには、一般道路を管轄する「交番」・「配属警察署交通課」・「自動車警ら隊」・「機動捜査隊」・「交通機動隊」などの部署で一定期間の実務経験及び運転経験を積む必要があり、高速隊への配属後も日夜厳しい訓練を積み重ねる。

警察官がパトカーのハンドルを握れるまでには「運転訓練と現場での実務経験」を積み重ねる必要があり、若手警察官はまず助手席に座って先輩警察官の補助を行い、車両運転技能検定に受かり(合格基準を満たし)その技量が上司・先輩警察官に認められた時に初めて「一人前の警察官として緊急走行を伴うパトカーおよび捜査車両運転」を許される。
主な訓練・試験内容

現場でのパトカー運転及び取締・パトロール経験が豊富な(警察車両の使用頻度が高い部署=主に自ら・交機・高速の各隊に所属する)先輩ベテラン警察官が教官となって若手警察官へパト運転指導にあたる。特に前後左右の安全確認は(緊急走行時には一般車より速度が速いことから)一般車を運転する時以上に重要である(各都道府県警には専門課程「パトカー及び白バイ乗務員養成専科」を開設)。高速隊や交通機動隊所属警察官は「サーキット場などのコースを借り、プロレーシングドライバーが講師となっての運転技能習熟訓練」もある。

高速でのスラローム・クランク・鋭角走行(一般車両及び障害物に見立てたカラーコーンを避け、急カーブで速度を上げた時でも車体をコーンにぶつけないようジグザグ走行。前進のみならず袋小路や狭隘路等の反転不能箇所における追跡を想定し、バックや対面通行によるスラローム・クランク走行もある。一部カラーコーンをあらかじめ倒した状態での訓練も実施。カラーコーンに車体を接触させたりタイヤを乗り上げさせると減点)。

急停止(歩行者・自転車・他車等が側方から急に飛び出してきた場合を想定。緊急走行時でも衝突を避け規定の停止位置で確実に止まれるようにする。規定の停止位置をオーバーランすると減点。より実戦的に、教官がマンシルエットをいきなり飛び出させることもある)。

不審車および違反車の安全・的確な追跡方法習得(訓練生が二人一組でパトカーへ乗り込んで違反車両に見立てた教官運転パトカーを追跡し、不審車・違反車の特徴などを運転役警察官と所轄本部へ的確に伝えると共に、拡声器で停止を命じる方法を習得。訓練生運転パトカーの後部座席には教官が乗り、追跡・運転操作・安全確認などの出来栄えを判定)。

事故発生時における交通規制(カラーコーン、表示板等を素早く準備し、後続車に追突される二次災害防止のために事故発生を迅速に知らせる体制を整える)。連携確認のため(NEXCO等の)道路管理者と合同訓練という形を採る場合もある。

交通整理方法習得(雑踏警備時や停電で
信号機が消灯してしまった場合・及び事故発生現場での車線規制時に「手信号による的確な交通整理」ができるようにする。また停電時でも稼働可能な自家発電装置付き信号機を備えた交差点では「電源を自家発電へ迅速に切り替える」訓練も実施)。

逮捕状執行時における手錠使用方法習得(対象被疑者逮捕時の拘束用具である手錠の正しい使い方を習得)。

イベント開催時などにおける交通規制実施方法習得。

車両の安全なバック誘導方法習得(事件・事故発生現場への臨場時、および職務質問や防犯&交通安全指導のため立ち寄った駐車場などへ車両をバック駐車、および駐車場から公道へバックでパトカーを引き出す際、周囲の安全を確認して車両を安全確実にバック誘導する方法を学ぶ)

捜査車両による不審車両および人物の包囲方法習得(違反車両や指名手配の盗難車を見つけ職務質問および身柄確保したり、内偵捜査で確認できた指名手配犯行動パターンをもとに・対象の人物や車両が自宅などから出てきたタイミングを見計らって逮捕状を執行する際、逃げ道を塞ぐべくどの位置に捜査車両を停めて犯人を包囲すれば良いかを現場で瞬時に判断できるようにする)。

要人警護訓練(首脳・皇族などのVIPを乗せた車両の公道通行時における先導方法、VIPを不審者から守るための警備方法習得)。

大規模テロや凶悪犯などを想定した警備訓練。

刃物で挑発する凶悪犯や立てこもり犯の制圧方法(刃物で威嚇して警察官へ向かってくる犯人を慎重に追い詰め、自身が刃物で切られたり銃で撃たれるなどの受傷を防ぐ・および人質を無傷で保護し立てこもり犯の身柄を迅速に確保するための間合いの取り方や犯人説得方法を習得)。

パトロール中の違反車両発見時や緊急出動時におけるマイク・サイレン装置・赤色灯(パトランプ)の取り扱い方法、および不審車両・人物への職務質問方法習得。

パレード・マラソン・駅伝開催時における車両での参加者先導方法習得。

車両の特性・構造学習(指定自動車教習所の教習カリキュラムと同じ)。

白バイ隊員のみ)幅の狭いジグザグの板から外れないように、さらに足場の悪い凹凸路面でも転倒しないよう走行(オフロードバイクを用いた障害物突破訓練も実施。途中で転倒したり地面に足をつくと減点)。

(万一路肩の障害物に乗り上げたり、足場の悪い凹凸路面を走行する場面を想定し)片側のタイヤのみを細い板に載せてバランスを崩さないよう走行(途中で脱輪すると減点)。

(不審者・違反者が検問・職務質問等を振り切って逃走した場合を想定した)車両の急発進・急反転・急旋回。

スリップ体験(冬期におけるスリップ事故の怖さを凍結=アイスバーン路面を再現したスキッドコースで体験し、緊急走行中に万一スリップした場合でも横転や他車との接触事故を未然に防ぎ、落ち着いて車両を元の姿勢へと立て直せるようにする)。

タイヤ交換・タイヤチェーン装着・車両運行前点検方法の習得(指定自動車教習所の教習カリキュラムと同じだが、パトカーなどの緊急車両では「サイレンが鳴動でき、かつマイクによる拡声機能もきちんと使えるか」・「パトランプがきちんと点くか」も運行前点検項目に含まれる)。

万一車両トラブルが発生した場合の対処方法(パトロール・取り締まり業務中の車両にタイヤパンク・エンジントラブル・悪天候などでの立ち往生・接触事故など不測の事態が起きた場合でも、慌てず落ち着いて対処できるようにする。万一事故を起こした場合は負傷者を迅速救護すると共に、その旨を所轄本部へ迅速に報告できるようにする)。

心肺蘇生法及びAEDの使用方法習得(事故現場に救急車が到着するまでの間、負傷者・意識不明者へ応急処置を確実に施して救命率を上げる)。

逮捕術柔道剣道空手等の各種日本武道の技を組み合わせ、周囲の一般人に危険を及ぼすことなく犯人=被疑者を無傷かつ迅速に身柄確保して逃走を防げるようにする。各警察署および部隊対抗の「逮捕術競技会」も都道府県や管区警察局ごとに毎年実施)。

挙動不審の車両・人物の見抜き方(特に車内におけるシートベルト非着用・携帯電話やスマートフォンを操作しながらの脇見運転・不自然な蛇行運転・夜間や悪天候時の無灯火走行・正しい通行帯から大きく外れての走行や逆走・交差点や横断歩道での歩行者優先義務違反・信号無視・一時停止不履行・駐車禁止及び駐停車禁止場所への違法駐停車・追い越し禁止や車線変更禁止区間での追い越し・一方通行区間の逆走・Uターン禁止場所での車両故意反転・指定方向外進行禁止規制のある交差点での違反行動など道路交通法違反や飲酒運転・無免許運転が疑われる危険な行動、パトロール中のパトカー・白バイ・警察官を見て急に目を背けたり走って逃げる&車両の向きを急に変えたり速度を急に上げる・一般ドライバーの模範となるべく「緊急走行時以外は制限速度及び法定速度遵守で走行」しているパトカー・白バイを故意に追い越すなどの不可解な行動、営業時間外の店舗・公共駐車場・駐車帯・路肩に目的もなく深夜でも長時間駐まっている・正当な理由なく刃物や実弾入り銃器類を持ち歩いている・ナンバープレートを折り曲げて見えなくしたり故意に付け替えている=他車から盗んできたナンバーを付けている・総務省へ免許申請していない違法無線アンテナを搭載している・違法改造をしている・フロントガラスが割れたり故意に塞がれている・車体が一部破損し轢き逃げや当て逃げをした疑いがある・車検切れや自賠責はじめ各種保険未加入の疑いがある・前照灯・後部標識灯・ブレーキランプが切れている・車内からゴミをポイ捨てしているなどの不審車両や整備不良が疑われる車両、盗難届が出されていたり指名手配犯・覚せい剤危険ドラッグ使用者がいる疑いのある車両などを夜間でも瞬時に見抜く方法、自殺志願の疑いがある人物を保護して自殺を未然に防ぐ方法、不特定多数の通行車両の中から違反の疑いがある要注意車両を見抜いて取り締まり場所へ誘導する方法などを徹底的に学ぶ)。

地図の使い方(自分が管轄する地区の地図=主に昭文社県別マップル・都市地図両シリーズとゼンリン住宅地図を暗記し、110番入電無線を受信後1分1秒でも迅速に当該事件・事故の発生現場へ急行出来るようにすると共に、通常のパトロール中においても自分がいる現在地や事件・事故・災害発生場所、不審者・犯人の身柄確保場所を所轄本部へ無線で的確に伝えられるようにする)。

災害時における臨時本部設置訓練(警察署や交番が地震津波・河川氾濫・土砂崩れで被災し使用不能となった場合に備え、あらかじめ協定を結んでいる管内の公共施設へ臨時の警察署機能を設ける場合に無線装置などを迅速に立ち上げ、大規模災害発生時でも警察署機能を維持できるようにする)。及び「大規模災害発生時における初動・非常招集訓練」(地震・大雨・洪水・土砂災害などで道路が寸断され車の使用が困難となった場合、所轄署から徒歩圏内にある警察官舎在住の警察官を非常招集して災害対策本部を立ち上げ、自治体と連携して迅速・的確な災害情報収集体制を構築できるようにする)。

無線交信訓練(所轄本部・現場警察官相互間で的確な無線のやりとりができるよう、若手警察官と所轄本部通信指令室での110番通報受信担当警察官を中心に「事件・事故・災害発生現場の状況、パトロール中に追尾・職務質問・身柄確保した不審人物や不審車両の特徴、犯人の身柄確保場所、事件・事故の目撃者や通報者から得られた現場状況・犯人や不審車両の特徴証言などを無線で所轄本部へ的確に伝える訓練」を定期的に実施)。

(交番・駐在所勤務の若手警察官のみ)巡回連絡訓練(管内にある世帯・事業所へ所轄警察署からの連絡事項を的確に伝えると共に、管内住民との良好な関係を築く「巡回連絡」の方法を学び、「相手の心に寄り添った伝え方がきちんと出来る」ようにする)。

ランニング・体力作り(犯人が万一職務質問などを振り切って逃走した場合でも瞬時に追いついて身柄確保できるようにすると共に、24時間の当直勤務時における深夜帯パトロール&緊急出動にも耐えうる体力を錬成)。

車両での犯人護送方法習得(逮捕及び留置中の被疑者を署や裁判所まで護送する際、途中で逃げられないようにするための正しい座り方や犯人包囲方法を学ぶ。


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