パトロールカー
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日本では主に、警察治安維持活動、ライフラインを点検する為の水道局ガス会社電力会社電話会社鉄道会社法務省出入国在留管理庁地方出入国在留管理局国土交通省高速道路会社(旧日本道路公団等)の交通管理隊、また「青色防犯パトロール」と呼ばれる自主防犯活動に用いられる町内会(自治会)などで使用される車両や民間警備会社の車両などがある。防犯活動用など一部のもの(住民有志の自家用車であったり役所の公用車だったりする)を除き、特種用途自動車(8ナンバー車)である。

日本の警察におけるパトロールカーは、緊急自動車指定を受けた警察の車両であり、パトカーと略される。警察業界用語では「PC[6]」。警察無線でも「PC」は一般的に使われている。

パトロールカーは、制服パトカー(白黒ツートーンカラー[5]で、天井に固定、もしくは展開式の赤色回転警光灯を装備)と覆面パトカー(ケーブルで繋がり、通常は車内に納めている可搬式で、必要時に吸盤で車両の屋上に付ける赤色回転警光燈。または天井格納され普段は車内側天井に納められ、必要時に上下回転させ、屋上に反転して出て来る赤色回転警光灯を装備)に大別される。

街中でよく見かける警ら用パトカーは、消防車救急車とは異なり、「機動警ら(地域警察)」という運用であり、警察本部警察署などの庁舎での待機ではなく、街中を巡回して犯罪事故の未然防止と110番通報時に現場へ素早く臨場をすることに備えている。また「交通警察(交通機動隊高速道路交通警察隊・警察署交通課)」や「刑事警察(機動捜査隊・警察署刑事課)」でも街中で取締や警戒・捜査を行うだけではなく、街中から現場へ素早く臨場することもまた運用目的である。
白黒警ら用/交通用パトカー神奈川県警自動車警ら隊の無線警ら車(警ら用無線自動車)。車種はGRS180クラウン。

制服警察官が乗務するパトカーで、基本的に制服警官が2名乗車する(地方の駐在所配置等は1名の場合もある)。警察署の地域課自動車警ら係や、交通課、自動車警ら隊高速隊などに配置され、正式には、交通取締用の車両を「交通取締用四輪車(交通取締用無線自動車)」、主にパトロール用の物を「無線警ら車(警ら用無線自動車)」という。つまり各警察部門用の無線機を搭載した、交通取締用もしくは警ら活動用に行う自動車という意味である。先述の街中による警らや交通取り締まりなどの公務執行のための自動車であり、「警察官の乗用車」というわけではなく警察部門の各執行活動のための自動車としてある。国費で購入されて各地に配置されているパトカーは、覆面パトカーを除いて全国に約9000台ある[5]

2022年現在、各都道府県で運用されている制服パトカーは、トヨタ・クラウンが主流であり、スバル・レガシィは減少傾向にあるほか、山梨県警では、トヨタ・マークXを運用している。また、埼玉県警では日産・ティアナを運用している。警視庁の交通取締用四輪車(交通取締用無線自動車)。車種はスバル・4世代目レガシィB4

これは警察において最も数が多いパトカーで、日本の警察では主に地域警察の警ら活動、交通警察の事故や違反の抑止、刑事警察における捜査・犯罪警戒活動において使用される。刑事捜査における尾行の際、被疑者への警察の存在を秘匿する(密行と称する)必要があるので覆面パトカーを使うが、それ以外の場合は、むしろ警察車両であることを前面に押し出し、わかりやすく制服パトカーで捜査や取締を行う。

車両のデザインについて、警察庁では「車体を白黒色に塗り上部及び前面に赤色警光灯と拡声器を備え、横部に都道府県名を表記する」という指針がある。

1950年(昭和25年)に登場したパトロールカー(当時は「移動警察車」と呼ばれた)、自治体警察の一部で導入されたジープ等の車両の塗装は白色一色であった。1955年(昭和30年)、当時ほとんどが白色一色であった一般車と区別するため[7]、米国のパトロールカーを参考にして、未舗装道路が多かった当時の道路事情を考慮して下半分を汚れの目立たない黒塗装のデザインにした[8]。しかし細かな規定はなく、各都道府県警により塗り分け方や警光灯の形状などが微妙に異なっている。文字表記は道府県によって「○○県(府)警」(例・大阪府警)と「○○県(北海道)警察」(例・神奈川県警察)に分かれている。香川県警察では以前は「香川県警」だったが、近年導入された車両では「香川県警察」に変更されている。

字体についても様々であるが石川県警のように明朝体からゴシック体に変更された地域もある。現在、明朝体を使用しているのは鹿児島県警熊本県警など少数である。岐阜県警は、高速隊のみ、フロントドア下側に白抜きで、岐阜県警と書かれている。POLICE表記はなし。青森県警は、フロントドア下側に白抜きで白鳥のイラストが描かれている。大分県警は、以前はアメリカの車両のように赤色と青色の混合警光灯を装備していた車両も存在したが、これは皇族警衛の際に使用された車両である。皇族警衛では地域を問わず車列先導を担当する制服パトカーは、散光式警光灯の片側もしくは一部のカバーを青色に付け替えた車両を用いる慣習であるが、近年は赤色灯はそのままで着脱式流線型の青色警光灯を追加する方法が主流となった。また、2008年(平成20年)12月に福岡県で開催された日中韓首脳会談の警護の際は、警護対象車両を識別するため、国ごとに異なる色の警光灯を装備していた。なお日本は赤と青の混合の前面警光灯、韓国は赤と青の混合の警光灯、中国は赤と緑の混合の警光灯である。

また、在日米軍が所有する一部のパトカーも青と赤混合の警光灯を装備した車両がある(アメリカでは赤の閃光灯が緊急車、青の閃光灯が警察車を意味するため両方が必要)。また警視庁は2007年(平成19年)、外国人にもパトカー(ポリスカー)であると認識してもらえるように、また視認性向上などの理由で黄色の反射材で作られた「POLICE」文字のステッカーを左右ドアと後部バンパーに、警察手帳に装填されている記章をデザイン化した反射材製のステッカーをドアに貼り付ける事を決めた(画像参照)[9]

パトカーは警察の証として赤色警光灯やサイレンを装備しているのではなく、警光灯・サイレンは道路運送車両法に定められた緊急通行車両の緊急走行時の安全装備として取り付けている。目的地に緊急走行で高速走行をする際にパトカーが事故を起こさないよう、視覚(警光灯の光)と聴覚(サイレン音)で道路を通行している他の車両や歩行者に緊急走行中と認識させる注意喚起の為の安全装備品(警光灯・サイレン)としてである。

なおパトカーは種類・用途により排気量・出力が異なっている。大きい順に、高速隊・交機パトカー(排気量3,500 - 2,000 cc)、警らパトカー(2,500 - 1,900 cc)、ミニパトカー(いわゆる「ミニパト」、1,500 - 660 cc)である。このため、隊を越えての車両異動(例:警ら隊から交機隊への車両異動など)は基本的になく[注 1]、各隊毎に専用車両が新規発注されている。ただし寄贈や県警独自の方針でスポーツカーを発注する場合もあり、中でも日産・フェアレディZは歴代全車種がパトカーとして導入実績がある。

また多くのパトロールカーには、屋根に所属警察署・隊名略号(コード)と号車数字が表記されており、警視庁や一部の警察本部ではフロントガラスにもこの表記がある。一例として警視庁麹町警察署所属の1号車であればフロントガラスに「麹町1」、屋根には「麹1」、警察本部(警視庁に限らない)所属の302号車なら「302」、高速道路交通警察隊所属3号車なら「高速3」、屋根には「速3」など。

警察無線識別信号を兼ねているため、警察官は無線交信時、最初にその番号(コールサイン)を名乗る事になっている。例えば、警視庁の本部のけいし217号車の場合は「けいし217から警視庁、現在〇〇交差点付近を左折、南進。」ということになる。特に屋根上の表記は「対空表記」と呼ばれ、ヘリコプターを運用する航空隊員が地上の車両と無線交信をする際に、コールサインを把握する目的がある。そのため警察ヘリと交信するため、基幹系警察無線を基本的には車載していないミニパトなどの交通執行車両や交番駐在所配備車両には対空表記がないものが多い。秘匿の用をなさなくなるため、覆面パトカーにも通常は表記されない。


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