パトロン
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サミュエル・ジョンソンは、芸術分野のパトロンを次のように定義している:「水に溺れてもがいている人を何もせず眺めていて、その人が岸にたどり着いたら助けようとする者である?」[2]

為政者、貴族および富裕層は、芸術パトロネージュを彼らの政治的野心、社会的地位および特権を強化するために利用した。すなわち、パトロンは、スポンサーとして機能したのである。なお英語以外のほとんどの言語では、スポンサーとしてのパトロンを指す場合、ローマ皇帝アウグストゥスの寛大な友人かつ助言者であったガイウス・マエケナスに由来する?mecenate (メセナ活動家)と呼称する。フィレンツェメディチ家などのパトロンは、高利貸しにより不正に得た富を資金洗浄するために芸術パトロネージュを利用した。芸術パトロネージュは、特に宗教芸術の創造には重要な役割を果たした。ローマカトリック教会や、後年のプロテスタントは、芸術や建築を支援したが、その成果は、教会大聖堂、絵画、彫刻および手工芸品などに見られる。

芸術家への後援や、芸術作品の委嘱は、パトロネージュ・システムの最もよく知られた側面であるが、その他の分野にも、パトロネージュの恩恵はあった。自然哲学前近代の科学)を学ぶ人々、音楽家作家哲学者錬金術師占星術師や他の学者たちである。様々な分野の重要な芸術家たち(クレティアン・ド・トロワレオナルド・ダ・ヴィンチミケランジェロシェイクスピアベン・ジョンソンなど)は皆、貴族パトロンまたは教会パトロンの支援を求め、享受した[3][4]。後の人物であるモーツァルトベートーヴェンも、ある程度はその恩恵にあずかっている。19世紀半ばに入って、ブルジョアと資本主義社会の形態が生まれて初めて、ヨーロッパ文化はパトロネージュ・システムから、現代世界で周知の、博物館劇場、多数の聴衆、大量消費によるより公的な支援システムに移り変わっていった。

この種の支援システムは、多くの芸術分野で続いている。スポンサーの性質は、教会から慈善団体へ、また貴族から金持ちへと変遷していったが、「パトロネージュ」という語には、政治におけるよりもより中立的な含意がある。そして単に、芸術家を例えば助成金で直接に支援することを意味している。20世紀後半に、学問の下位分野としてのパトロネージュ研究は進展し始めた。そこには、パトロネージュという現象が、前諸世紀の文化生活において、重要でありながら忘れ去られた役割を果たしていたとの認識がある。
慈善団体・福祉団体

慈善団体、福祉団体などの非営利団体は、影響力の大きな人物を団体のパトロンとすることがある。この場合、金銭を伴わない関係であることも多い。パトロンは、自身の人脈カリスマ性で団体に信用を与え、資金調達や政策の影響を広めるために貢献する。

英国王室は、特にこの分野において活発であり、多くの時間を幅広いパトロネージュに費やしている[5]
お得意の客

英語圏では、商店や旅館などのひいき客、常連、お得意などをパトロンと呼称している。

この場合、それほど高価ではないオプションがあるが、それが目的というよりは、客自身の義理や愛顧心から小さな地元企業や商店等を支援している。こうした、客のひいきや愛顧に基づく慣習は、パトロネージュと呼ばれる。パトロンは、消費者で組織する協力団体の会員となり、協同組合が生み出した譲与または利益の配当を受け取る権利をもつ。

また、図書館などの施設利用者を指すこともある。
ジャーナリズム

北米のたいていのニュース会社にとって、スポンサーからの広告収入に次ぐ収入源は、視聴者の会員や慈善事業家である。この場合の、視聴者会員や慈善事業家などを、パトロンと呼称する[6]
スポーツ

スポーツの分野において、現代でも使用例がある。

プロゴルフの四大選手権の一つであるマスターズ・トーナメントでは、観客やファンを、パトロンと呼んでいる。これはオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブの主張によるが、しばしばスポーツ記者やメディアの揶揄の対象とされている[7]

ポロにおいては、一人以上のプロ選手を雇うことによってチームを結成する人物を指す。チームの他の選手は、パトロン自身やアマチュアでもかまわず、最近は女性も増えている。

また、ゲーリック体育協会が主催するハーリングまたはゲーリックフットボールに関わる人物を指して、パトロンと呼ぶ[8][9]。「タニマチ」も参照
政治

政治指導者がもつ、官僚任命に関する絶大なパトロネージュ的裁量権、つまり、政権における上級幹部たちの公認の権力のことを、パトロネージュと呼称し、そうした権力をもつ人をパトロンと呼称する。政府幹部が多数の任命権を持ち、かつ、利益をともなうものもある。民主主義政権のなかには、高級官僚の任命は、米国上院の諮問による承認議会で審議された上で承認されるところがある。そうした政治パトロネージュは、法律または倫理規定に違反することがある。一例として、政治リーダーたちが縁故主義や身びいきに関与することであり、友人または親類に、非競合的政府契約を不正に供与したり、公共サービス機関が無資格の家族や友人を採用するように強要することなどが挙げられる。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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