これらの要因が重なった結果、2000年代まで日本国内のPCゲーム市場は低迷が続く状態だった。このような状況に転機が訪れたのは2010年代だった。
2010年代に入って、今度はアーケードや家庭用ゲームの市場のほうが衰退傾向に陥っていた。その原因はスマートフォンの台頭である。日本では2010年代に起きた低価格スマホの普及によりアプリストアでゲームアプリを簡単にダウンロードできるようになったことで、(PCゲームレベルの品質にこそ届かないものの)そこそこのクォリティーのゲームが多くの人々により容易く行き渡れるようになった。これがアーケード・家庭用ゲーム衰退の原因の一つであった。
そんな状況下で、日本のPCゲーム市場は、スマホのゲームアプリに負けることはなく復興の兆しをみせた。2015年ころにはSteam総ユーザ数のうち、日本ユーザは4 - 5%まで増えた[18]。
2010年代のなかば、NVIDIAのGeForceビジネスユニット担当の副社長からは「ゲームの実況を視聴して楽しむことは日本ではまだ立ち上がりの段階だ(そしてこれから伸びるだろう)」とし、「また日本のPCゲーム市場はGPUの購入傾向から見るとハイエンド指向が突出している」と分析した[10]。
2020年代からはSteamの日本ユーザーがもう一度大幅に増加する動きがある。[19]それに合わせて、日本語公式対応のPCゲームソフトが増えつつある。日本語未対応のソフトも、ユーザー側が非公式翻訳パッチを制作・公開するケースが増えた。 東アジア大陸諸国は、日本とは真逆にいち早くからPCゲームが盛んだった。日本・欧米とは違って家庭用ゲーム市場が極めて微弱だった事、著作権法が日欧米と比べて少し緩かったことが東アジア諸国でPCゲームが普及した原因となった。 これらの国は「PCゲーム特化のゲームセンター」に近いネットカフェが多い事が特徴である。 韓国で1990年代末期からPCゲームが台頭しはじめた。これは日本におけるPCゲーム普及よりも約20年早いのである。 当時の韓国政府が推進していた「国民PC」普及政策[20]、そして同時期のBlizzard社のRTS『StarCraft』の大ヒット、これらの要因が噛み合って90年代末?2000年代初期の韓国でパソコンゲームが主流になったのである。 2000年代中盤、韓国にプレステ2・ニンテンドーDSが正式輸入されたとき、暫くは家庭用ゲーム市場が韓国で拡大する動きがあった。しかしあの時以降も韓国はPCゲームが圧倒的主流のままである。 著作権法がまだ未整備だった2006年以前の韓国では「ジュエルゲーム[21]」という形式のゲームパッケージが売れていた。ジュエルゲームとは「ジュエルケースに入ったCD一枚、と簡略な説明書」といったシンプルな構成の廉価版ゲームパッケージであり、嵩張るパッケージボックス・その他の付属品を一切省いたものである。真っ当なソフト会社が正式に販売したジュエルゲームもあったが、海賊版ソフトも多くあった。中には欧米のサイト上で公開されているフリーソフトを流用してアセットフリップしただけ、(そもそもPC版移植が存在しないはずの)日本製家庭用ソフトをROMファイルの形式で抽出してエミュレータを添えただけ、のような代物まで存在していた。 日韓以上にコンソールゲーム市場が微弱な中国でも、PCゲームが主流である。 2015年の調査では、中国ゲーム市場全体の221億米ドルのうち、約57%の125億ドルがPC・MMOゲームだとされている(一方、家庭用ゲームは、たった1.8%の4億ドルしかない)[22]。この割合はスマホゲーム市場の成長で落ちたものの、2022年時点でもPCゲームが市場の31%を占める中国[23]は相変わらずPCゲームが盛んな国である。 中国でも、やはりブリザード社製のPCゲームが人気である。Starcraftが盛んな韓国と比べて、こちらはWarcraftシリーズが主流である。特に『ウォークラフト3』は中国の国民的ゲームになっており、関連大会も2010年代からほぼ全部中国で開催されている[24]。同シリーズを映画化した作品の収益の半分以上が中国から発生したほどである。 (2000年代の日本ほど極端でないものの)欧米全体としてはモバイル・コンソールに対してPCゲームが劣勢である感が否めない。それでもPCゲームは着実に市場全体の中で一定のシェアを確保している。 2023年における全世界ゲーム市場のうち約20%がPCゲームであり[25]、欧米諸国もだいたいこの割合を維持している。 欧米諸国では「西欧ほど(コンソールに対し)PCゲームが劣勢か拮抗、東欧に近いほどPCゲームが優勢」な傾向がある。 北米のゲーム市場におけるPCゲームの割合は他の欧米諸国の平均レベルである。[26] かつてアメリカはパソコンの発祥地らしく、PCゲームが市場全体の半分近くを占めたこともあった(参考:2015年アメリカの機種別ゲーム市場シェア)。しかし、同じくアメリカで台頭したスマホおよびアプリストアの影響でPCゲームのシェアが落ち、今の北米は諸外国と同じく約20%前後に落ち着いている。[26] 一方イギリスではコンソールがPCゲームに対して優勢であり、40%以上のユーザーが家庭用ゲームを好んでいる。これはPCゲームを好む層の倍以上である。[27] ドイツはPC・コンソール・モバイルの三者が対等に拮抗する国[27]である。RTS『Command & Conquer』シリーズが国民的ゲームになったり、PCゲームユーザーを題材にしたユーモア動画が人気になるなど、PCゲームはドイツでそれなりの存在感を示している。 フランスはPCゲームが劣勢な国である。ユーザー数こそモバイル・家庭用とほぼ同じものの、市場シェアの面ではたった17%しか占めていない。この割合は、スマホゲームの22.4%より低いものである。一方、家庭用はフランスのゲーム市場の60%を占めている。[28] PCゲームで頭角を現す国の一つとしてスウェーデンがある。Mojangが開発した『マインクラフト』が世界的な大ヒットを出したことをきっかけに、スウェーデンはPCゲーム強国の一つとして存在感を示すことになった。 他に有名なスウェーデンのPCゲーム開発会社は、『Europa Universalis』・『Hearts of Iron』シリーズなど歴史戦略シミュレーションが主力商品であるParadox Interactive社、『Sanctum』 スウェーデンのゲーム業界は、国内の内需だけでなく世界各国への輸出に多くの力を入れる傾向がある[29]。特に近年ではスウェーデン国内のゲーム市場規模(約31億ユーロ)よりも海外輸出額のほうが大きくなった。[29] 家庭用ゲームが優勢な西欧と比べて、東欧は全体的にPCゲームが優勢な地域である。 ロシアはPCゲームが盛んな国の一つである。中国と同じく、コンソール市場が貧弱だったためである。 ユーザー数だけ見ると、PCゲームをプレイするロシア人は約4千万人で、スマホゲームユーザーの6千5百万人よりやや少ない。ただし、「どのプラットフォームを好むか」に注目すると、60%がPCゲームを好み、これはスマホゲームを好む層の19%、コンソールを好む層の20%よりも遥かに多いのである。[30] ほかの東ヨーロッパ・バルカン半島諸国もPCゲーム優勢の地域で、これらの国ではゲーム市場の30~40%以上をPCゲームが占めている[31]。この地域では(西欧・ロシアと比べて小規模ながら)PCゲームで頭角を現す会社がいくつか点在している。(例:3Division これらの国は、そもそもPCゲーム・家庭用ゲーム両方の市場が極めて小さかったので、スマホの登場と同時にモバイルゲームが圧倒的主流になった地域である。例えばインドのゲーム人口の94%がスマホゲームユーザーである一方、PCゲーム・家庭用ゲームはそれぞれ9%・4%しか占めてない。[32] 例外的にオイルマネーで潤う湾岸諸国はPC・コンソールゲームが相当のシェアを占めている。[33] PCゲームをダウンロード販売している主なストア。総合的なストアは、幅広いデベロッパーのゲームを数多く揃えている傾向にある。ゲーム会社が独自に展開するストアは主に自社製品に特化したものであるが、サードパーティー製のゲームを取り扱っているものもある。その他のストアは、ゲームソフトの引き換えに必要なプロダクトキーを販売するストアであり、比較的安価に販売されているものが多い。(※括弧内はメーカーと、主な配信タイトル)
東アジア大陸
韓国
中国
欧米諸国
英語圏
北西ヨーロッパ
旧ソ連・東ヨーロッパ
中東・アフリカ・インド亜大陸
主なPCゲームストア
総合的なストア
Steam(Valve Corporation社、大手デベロッパーの大作に加え、インディーゲームのタイトルも数多く揃えられているのが特徴。
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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