バーブル
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1525年11月にバーブルは再びインド遠征に向かい、12月にインダス川を越えて息子フマーユーン、ガズニーの領主ホージャ・カランの部隊と合流する[63]。行軍中のバーブルに遭遇したダウラト・ハンは降伏し、バーブルは彼に許しを与えた[59]1526年4月にバーブルはパーニーパットを占領して陣地を築き、ローディー朝の攻撃に備えたが、同盟者であるラーナー・サンガーはパーニーパットに現れず、バーブルは単独でローディー朝と戦わなければならなかった[64]4月21日パーニーパットの戦いでバーブルは劣勢を跳ね返してローディー朝に勝利し、バーブルの元にイブラーヒームの首が届けられた。バーブルはチャルディラーンの戦いでサファヴィー朝を破ったオスマン帝国の戦術を取り入れ、中翼の前面に連結した荷車を一列に展開し、荷車の後ろに銃火器を装備した兵士を配備した[65]。パーニーパットでの戦勝の理由については諸説あるがバーブルが火器を用いていたことは確実視されており[66]、火器の存在が重要な役割を果たしたと考えられている[67][68]。だが、バーブル自身は弓兵の活躍が戦勝に寄与したと考えていた[65]

4月24日にバーブルはデリーに入城し[69]、4月27日に金曜礼拝で自らの名を入れたフトバ(説教)を読み上げさせてインドの支配者となった意思を表明した[69][70]。デリー入城後、バーブルはデリー・スルターン朝を治めた歴代スルターンの墓を巡り歩いた[71]。翌5月にローディー朝の首都アーグラに至り、城内のイブラーヒームの母親とローディー朝の廷臣に領地を与えて出城させた。5月10日にアーグラに入城、城内で発見されたダイヤモンドコ・イ・ヌール」をフマーユーンに与えた[72][73]。バーブルはイブラーヒームの料理人を雇い入れたが、イブラーヒームの母親がバーブルの毒見役と料理人を買収して、バーブルが食べる料理に毒を盛った[74]。口にした毒が少量だったためにバーブルの命に別状はなく、イブラーヒームの母親とイブラーヒームの息子は監視下に置かれた[75]。しかし、毒殺の計画に加担した実行犯は、残忍な方法で処刑された[74][75]
インドにおける勢力の拡張ハーヌアーの戦い

デリーの制圧後、バーブルはヤムナー川ガンジス川を越えてビハール地方ベンガル地方に遠征した。

デリー、アーグラを制圧した後も周辺の勢力はバーブルに服属しておらず、長期の遠征に疲弊した将兵はカーブルへの帰還を望んでいた[76]。バーブルは部下たちを説得してインドに留まらせ、説得に応じない人間はアフガニスタンに帰らせた[77][78]。バーブルへの臣従を願い出る領主も現れ始め、7月までに事態はやや沈静化する[76]

各地の領主は外部からの侵入者であるバーブルを敵視し、かつてバーブルと同盟してローディー朝と戦ったラーナー・サンガーが敵対勢力の中心人物となった[79]。ラーナー・サンガーの同盟者の中にはイブラーヒーム・ローディーの弟マフムード・ローディーも含まれていた[77][80]。インドの気候に慣れないバーブルの軍は疲労し、バーブルの敗北を予言する占星術師の言葉が兵士たちの士気をより低下させていた[81]。ラーナー・サンガーと同盟軍の戦力は200,000を超えていたといわれ、バーブルの部下の中にはパンジャーブへの撤退を進言する者もいた[79]。バーブルのインド征服の決意は揺るがず、禁酒令を敷き、演説によって部下の士気を高めた[80][82][83]。また、ラーナー・サンガーに勝利した後にはイスラーム教徒からタムガ(商取引税)を徴収しないことを誓約する[84]。バヤーナに進んだラーナー・サンガーがバーブルの先遣隊に勝利した時、バーブルはアーグラ近郊のハーヌアー(Khanwa)に陣地を設営した[85]。バーブルはハーヌアーの戦闘でも先のオスマン帝国の戦術を用い[80][84]、かつてサリ・プルの戦いでシャイバーニーが用いた戦術を模して右翼と左翼の端に別動隊を配備し、敵軍を背後から攻撃させて撹乱した[86]。1527年3月17日にバーブルはハーヌアーの戦いでラージプート連合軍を破り、戦勝の後に「ガーズィー(信仰の戦士、異教徒の征服者)」の称号を帯びる[87][88]。ハーヌアーの勝利はラージプートに大打撃を与え、以降ラージプートの王侯は連合を組まず個別にイスラーム勢力と戦い、あるいは戦わずに降伏した[89]

4月にアーグラに凱旋したバーブルは臣下に領地の配分を行うが、体調は悪化し、高熱に苦しんだ[90]。病からの回復を祈願し、11月9日からバーブルはナクシュバンディー教団の指導者ホージャ・アフラールの著書『ワーリディーヤ(父のための書)』のチャガタイ語による韻文訳に着手する[91]


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