バードマン_あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)
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私生活でもトラブルは絶えず、仲違いのために妻のシルヴィアとは離婚し、娘のサムは素行不良の挙句薬物に手を染めている。リーガン自身も零落した自分を嘲る心の声(=バードマン)に悩まされていた。彼が1人になるとバードマンが現れ、ハリウッドへ戻れと囁くのだ。

リーガンはアーティストとしての自分に存在意義を見いだそうと、ブロードウェイ進出という無謀な決断をする。俳優を志す切っ掛けとなったレイモンド・カーヴァー短編小説愛について語るときに我々の語ること』を自ら舞台向けに脚色し、演出及び主演を務めることにしたのだ。プロダクションは親友の弁護士ジェイクが担当し、共演者にはリーガンの恋人であるローラと、初めてブロードウェイの劇に出演するレスリーが選ばれた。また、薬物依存症から回復したばかりのサムをアシスタントとして加えると準備は着々と進み、本公演前のプレビュー公演を迎えることになる。

プレビュー初演の前日、リハーサル中に負傷した俳優の代役として、ブロードウェイで活躍するマイクが選ばれる。俳優として類稀な才能を見せながらも身勝手極まりないマイクの言動はスタッフを振り回し、3度のプレビュー公演の内、2つは台無しになってしまう。『ニューヨークタイムズ』のインタビュー記事は虚言ばかりのマイクの記事が一面を飾り、リーガンの記事は後方へと追いやられていた。カムバックを目論むリーガンにとって、マイクはまさに目の上のたんこぶだった。

最後のプレビュー公演中、出番の合間に喫煙のため外へ出たリーガンだが、運悪くドアが閉ざされて衣装姿のまま外へ閉め出されてしまう。リーガンはドアに挟まってしまったローブを脱ぎ捨て、ブリーフ姿でニューヨークの大通りを歩いて劇場の入口から中に入り、何とかラストシーンを演じ切る。リーガンがブリーフ姿で歩く様は一般人によって撮影され、その映像はYouTubeで100万回以上も再生された。リーガンにとっては不本意だったが、彼の姿は話題を呼んだ。

本公演の前夜、リーガンは舞台近くのバーで批評家のタビサと会い、「芝居を酷評する」と宣言される。彼女の発言力は大きく、舞台公演が今後ロングランとなるか、それとも打ち切りとなるかを左右するほどだった。リーガンは呆然とした様子で街を歩き、道端で夜を明かすとバードマンの声で目を覚ます。リーガンの背後に現れたバードマンは、彼を再び大作映画の世界へ向かわせるべく虚構の世界へと誘う。リーガンが指を鳴らすと街は戦闘部隊と怪物の戦いによって火の海となり、屋上から飛び立てばバードマンの如くニューヨークの空を飛び回ることができた。

始まった本公演の初日、リーガン扮するエディの拳銃自殺で幕切れとなるラストシーンを迎えると、リーガンのおかしな様子に演者は顔を見合わせる。リーガンは観客の前へ立つと拳銃を頭へ突きつけ、発砲と同時に倒れた。舞台に飛び散った血に観客は一瞬ざわめくも、やがてスタンディングオベーションを送る。その渦中、前列にいたタビサは興奮する観客を無視して劇場から立ち去っていく。

リーガンが目を覚ましたのは病院のベッドだった。彼の放った弾丸は頭ではなく鼻を捉え、辛くも一命を取り留めたのだ。ジェイクが持ちこんだ新聞の一面には、観客に銃口を向けたリーガンの写真がプリントされている。タビサによる記事では、リーガンの自殺未遂は小道具と本物の拳銃とを取り違えて使用したためであり、それによって生まれた今回の事件を「無知がもたらす予期せぬ奇跡」と銘打っていた。事件は世間の注目を集め、多くの人がリーガンの復活を心待ちにしていた。

1人になったリーガンは鏡の前に立ち、顔を覆うガーゼを外す。吹き飛んだ鼻は整形され、さながらバードマンのような鋭い鼻に変貌していた。リーガンは傍らに見えるバードマンに別れを告げると、病室の大きな窓から体を乗り出して窓枠に立ち上がる。直後に病室へ戻ってきたサムは、忽然と消えたリーガンを探して開け放たれた窓から下を見るが、目に入ってきた光景に戸惑いを見せる。続いて顔を上げ空へ目を向けたサムは目を見開き、笑みを浮かべた。
キャスト

※括弧内は日本語吹替

リーガン・トムソン -
マイケル・キートン牛山茂
本作の主人公。かつてヒーロー映画「バードマン」のシリーズで主演した元スター俳優。名声を取り戻すためにブロードウェイでの舞台公演を手がける。長年つきまとう心の声=バードマンに悩まされる。

マイク・シャイナー - エドワード・ノートン宮本充
ブロードウェイの有名俳優。負傷したラルフの代役として舞台に参加し、優れた才能を発揮するが、破天荒な行動ゆえにリーガンとは対立する。

サマンサ(サム)・トムソン - エマ・ストーン武田華
リーガンの娘。薬物依存症で、以前は治療のために施設へ入っていた。現在はリーガンの付き人をしている。

レズリー・トルーマン - ナオミ・ワッツ岡寛恵
ブロードウェイの舞台に初出演する女優。マイクの同棲中の恋人。

ジェイク - ザック・ガリフィアナキス丸山壮史
リーガンの弁護士で、彼の親友。舞台のプロデューサーも担う。

ローラ・オーバーン - アンドレア・ライズボローたなか久美
舞台女優。リーガンとはおよそ2年間交際している。

シルヴィア - エイミー・ライアン
リーガンの元妻でサムの母親。

タビサ・ディッキンソン - リンゼイ・ダンカン定岡小百合
ニューヨーク・タイムズの演劇批評家をしている、いつも不機嫌そうな老婆。彼女の批評1つで舞台の打ち切りが決まってしまうほどの発言力を持っている。

アニー - メリット・ウェヴァー: 舞台監督。


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