旧ドイツ帝国の構成国であるバーデン大公国、ヴュルテンベルク王国、プロイセン王国の飛び地であるホーエンツォレルン州(ホーエンツォレルン城がある)を前身とし、それらを引き継いだバーデンとヴュルテンベルクの2州が第二次大戦後、アメリカ軍とフランス軍の分割占領期を経て1952年に合併して新しく設立した州である。
神聖ローマ帝国の時代には、シュヴァーベン大公領と、それを発展的継承したヴュルテンベルク公国、およびバーデン辺境伯領を中心に、多数の小国が存在した。さらに、州北部にあたる南フランケン地方(広義のフランケン地方の一部)は、西フランケン大公領を起源とし、のちにプファルツ選帝侯領などとして継承されていたが、19世紀初頭にバーデン領とヴュルテンベルク領に割譲・併合された地域である。
そのような歴史的経緯から、同州は西部のバーデン地域と中・東部のヴュルテンベルク地域に大別される。実際にはさらに、両地域の北部一帯を含む南フランケン地方(ハイルブロン=フランケン地域連合、ライン=ネッカー広域連合の一帯)と、北部を除いたヴュルテンベルク中南部のシュヴァーベン地方(広義的にはバイエルンシュヴァーベン地方も含む)、そして北部を除いた西南部のバーデン地方という、3つの文化圏に分かれている。
方言系統的として上部ドイツ語語群が多く、ヴュルテンベルク地方も含む州北部は上部フランケン語系(南フランケン語)に属し、南東部のシュヴァーベン地方のシュヴァーベン語と南西部のバーデン地方の低地アレマン語(ドイツ語版)はアレマン語系に属する。その他に高地ドイツ語に属し、かつてのバーデン領邦で使用されたバーデン語もある。
また、歴史的に見てアレマン人のうちシュヴァーベン地方のシュヴァーベン人はカトリック、同じアレマン系でもバーデン地方の住民とヴュルテンベルク地方のフランケン人(南フランケン人)などはプロテスタント圏に属し、特にバーデン地方の住民はバーデン福音主義州教会とバーデン福音ルター派教会を信仰している。そのため、バーデン=ヴュルテンベルク州の各地方の住民には未だに文化的差異などがある。
ドイツの中でも森が多い地域であり、バーデン地方の中心にはシュヴァルツヴァルト山地が横たわる。
歴史1850年-1945年の区分図。赤: バーデン、黄: ヴュルテンベルク、青: プロイセン ホーエンツォレルン州1945年-1952年の区分図。黄: バーデン州、赤: ヴュルテンベルク=ホーエンツォレルン州、青: ヴュルテンベルク=バーデン州
今日バーデン=ヴュルテンベルク州となっている領域は、神聖ローマ帝国の時代には多くの中小の聖俗諸侯領と帝国自由都市とで細分化されていた。しかし、ナポレオン戦争で混乱する中、1803年の帝国代表者会議主要決議によって、帝国内の教会領、弱小諸侯領、帝国自由都市の大半が取りつぶされ、有力諸侯の間で再編されることになった。その結果、この領域内にあった教会領と帝国自由都市は全廃され、大半の世俗諸侯が陪臣化された。
1871年のドイツ帝国成立までには、
バーデン大公国
ヴュルテンベルク王国
プロイセン王国ホーエンツォレルン州 (Hohenzollernsche Lande) (飛び地だが、プロイセン王家であるホーエンツォレルン家の大元の領地)
ヘッセン大公国の飛び地バート・ヴィンプフェン
に分かれていた。
1918年のドイツ革命後のヴァイマル共和国下では、それぞれがそのまま、
バーデン共和国 (Republik Baden)
ヴュルテンベルク自由人民州 (Freier Volksstaat Wurttemberg)
プロイセン自由州 (Freistaat Preusen) ホーエンツォレルン州
ヘッセン人民州 (Volksstaat Hessen) バート・ヴィンプフェン
となった。
第二次世界大戦後は、カールスルーエとミュンヘンを結ぶアウトバーン(現A8号線)のあたりを境に、北側がアメリカ合衆国占領地区に、南側がフランス占領地区になった。1945年のうちに、
ヴュルテンベルク=バーデン州(ドイツ語版)(アメリカ占領地)
ヴュルテンベルク=ホーエンツォレルン州(ドイツ語版)(フランス占領地)
バーデン州(ドイツ語版)(フランス占領地)
が発足した。
この3州は、1949年5月23日にはドイツ連邦共和国(西ドイツ)の構成州となった。
1952年4月25日、3州は合併してバーデン=ヴュルテンベルク州となった。
政治
州議会州議会の政党別議席数(2016年現在)州議会議事堂詳細は「バーデン=ヴュルテンベルク州議会」を参照
州議会 (Landtag) は一院制で、議員は小選挙区比例代表併用制で選出される。2021年現在の議席数は154。2021年3月14日に行われた州議会選挙での、各党の「得票率/獲得議席数(前回2016年選挙からの増減)/議席占有率」は以下の通りである。
同盟90/緑の党 (GRUNE) 32.6%/58議席(+11)/37.7%
ドイツキリスト教民主同盟 (CDU) 24.1%/42議席(±0)/27.3%
ドイツ社会民主党 (SPD) 11.0%/19議席(±0)/12.3%
自由民主党/民主人民党 (FDP/DVP) 10.5%/18議席(+6)/11.7%
ドイツのための選択肢 (AfD) 9.7%/17議席(-6)/11.0%
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左翼党 (Linke) 3.6%/0議席(±0)/0% ※阻止条項により議席を獲得できなかった。
バーデン=ヴュルテンベルク州では長らくキリスト教民主同盟(CDU)が州政与党の座に就いてきたが、東日本大震災による福島第一原子力発電所事故の直後に行われた2011年州議会選挙で、CDUは第1党を確保したものの議席を減らした。一方、反原発を主張する同盟'90/緑の党が勢力を17議席から36議席に伸ばして第2党に躍進。同党から、州議会議員団長だったヴィンフリート・クレッチュマンが、第3党SPDと連立を組んで州首相に就任した。緑の党出身者が州首相となったのは全国初。同党はさらに、2016年選挙で47議席を得て全国初の州議会第1党となり、連立相手を第2党のCDUに変えて州政権を維持。2021年選挙にも勝利し、クレッチュマンが州首相職を継続している。
なお、民主人民党 (DVP) は、自由民主党(FDP)のバーデン=ヴュルテンベルク支部にあたる地方政党である。
歴代州首相
1952年 - 1953年:ラインホルト・マイアー (Reinhold Maier)、DVP
1953年 - 1958年:ゲブハルト・ミュラー (Gebhard Muller)、CDU
1958年 - 1966年:クルト・ゲオルク・キージンガー (Kurt Georg Kiesinger)、CDU