バースカラ2世は、有限の数をゼロで割ると(ゼロ除算)無限大になるという近代的な数学と同じ考え方をしていた[3]。なお、現代数学の観点では、ゼロ除算はいかなるアプローチから定義を試みようとも必ず破綻に至るとして、「値を定義し得ないため、計算は不可能である」との見解で一致している。詳細はゼロ除算を参照。 バースカラ2世の数学への貢献には、以下のようなものがある。 バースカラ2世の算術についての著書『リーラーヴァティ』は、定義、算術用語、利子計算、算術級数と幾何級数、平面幾何学、立体幾何学、日時計の影、不変方程式の解法、組合せなどを扱っている。 『リーラーヴァティ』は13章からなり、算術だけでなく代数学や幾何学も扱い、一部は三角法や求積法を扱っている。具体的には、次のような内容がある。 彼の著書は体系化、解法の改善、新たな問題の導入などの点が優れている。さらに『リーラーヴァティ』には素晴らしい例題もあり、バースカラ2世は『リーラーヴァティ』で学ぶ学生にその内容を具体的に役立てて欲しいと意図していたとも思われる。 『ビージャガニタ』(代数学)は12章からなる。正の数に(正と負の)2つの平方根があることを初めて示した文書である。次のような内容を含む。 バースカラ2世は ax2 + bx + c = y という形式の不定二次方程式の解法としてチャクラバーラ法 『シッダーンタ・シローマニ』(1150年)では、三角法を扱っており、正弦関数の数表や各種三角関数の関係も記している。また、いくつかの興味深い三角法に混じって球面三角法も発見している。バースカラ2世以前のインドの数学者は三角法を計算の道具としか見ていなかったが、バースカラ2世自身は三角法に大きな興味を持っていたように思われる。三角関数の加法定理といわれる sin ( a + b ) {\displaystyle \sin \left(a+b\right)} や sin ( a − b ) {\displaystyle \sin \left(a-b\right)} なども扱っている。 『シッダーンタ・シローマニ』は天文学を中心に扱っているが、それ以前の著作にはない様々な理論が含まれている。特に、いくつかの三角法の成果に沿った微分法や解析学の基本概念、積分法の考え方などが見られる。 その著作から、バースカラ2世は微分法のいくつかの考え方を知っていたと見られている。しかし、それら成果の使い方を理解していなかったと見られ、そのために数学史家からは一般に無視されている。
数学
ピタゴラスの定理の証明。同じ領域の面積を2種類の方法で計算し、項を相殺させて消すことで a2 + b2 = c2 という式を導いた。
『リーラーヴァティ』において、二次方程式、三次方程式、四次方程式の解を示した。
線形および二次の方程式で整数解を求める方法(クッタカ法)。17世紀ルネサンス期のヨーロッパの数学者と同じ方法である。
ax2 + bx + c = y という形式の方程式を解くチャクラバーラ法
ペル方程式と呼ばれる x2 − ny2 = 1 という形式の方程式の整数解を求める方法を示した。
変数が複数ある二次方程式を解き、負数と無理数の解を発見した。
解析学の基本概念。
微分法の基本概念と積分法の元となる貢献。導関数と微分係数を発見。平均値の定理の特殊な場合であるロルの定理を発見。平均値の定理と思われる記述も著作の中に見つかっている。
三角関数の導関数を計算。
『シッダーンタ・シローマニ』の中で、いくつかの三角法と共に球面三角法を展開している。
算術
定義
ゼロの性質(除法を含むゼロの演算規則)
その他の数に関すること。負数や無理数(冪根)を含む。
円周率の近似値。
算術。乗法や平方など。
逆三数法 (inverse rule of three)。3だけでなく、5, 7, 9, 11 に拡張。
利子計算に関する問題。
算術級数と幾何級数。
平面の幾何学。
立体の幾何学。
組合せ数学(順列と組合せ)。
線型および二次の不定方程式の整数解の求め方(クッタカ)。これについては、17世紀ルネサンス期のヨーロッパの数学者と同じ解法を示しており、非常に重要である。バースカラ2世の解法は、アリヤバータなど先人の成果に基づくものだった。
代数学
正数と負数
ゼロ
未知数
未知の数量の決定
冪根と無理数
クッタカ法(不定方程式およびディオファントス方程式の解法)
単純な方程式(二次、三次、四次)
複数の変数のある単純な方程式
不定二次方程式(ax2 + b = y2 という形式のもの)
二次、三次、四次の不定方程式の解法
二次方程式
複数の変数のある二次方程式
複数の変数の積の操作
三角法
微分積分学
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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