ゴットシャルクが行った正確な模倣により、本作は南北戦争以前のアフリカ系アメリカ人のバンジョー演奏を伝える他に例のない記録となっている。曲中には西アフリカのリュート演奏にみられるようなダウンストローキングとアップピッキングの組み合わせなど、他の情報源からは得られない技巧の跡が見出される。この非常な正確性により現代のバンジョー奏者にはゴットシャルクが編曲したバンジョー曲を再現することに成功した者がおり、これによってゴットシャルクは無名のアフリカ系アメリカ人のバンジョー奏者から実際に編曲することで、バンジョーの模倣を行ったのではないかという推測が生まれている。人気のミンストレル・ショーにおける多くのバンジョー音楽は、舞踏音楽の旋律を細かくなぞるという形を取るが[注 1]、それとは異なり本作には繰り返しのフレーズの変奏が聞かれる。これはバンジョーの原型となる楽器の起源である、西アフリカのセネガンビア地域の音楽家の演奏と同じものである[2]。
ゴットシャルクが果たしたバンジョー発展への貢献は大きく、19世紀に著されたバンジョーの入門書には時として功労者としてゴットシャルクの名前が掲載されている[3]。 オクターヴのユニゾンにより、スティーブン・フォスターの『草競馬』の旋律の変形を奏して開始する[3][4]。序奏の旋律が回帰しても、それとわかるようになる前に至難な16分音符のパッセージに取って代わられる(譜例)。その後オクターヴによって序奏部まで旋律が巻き戻され、全体が反復される。曲全体を通じてこれら旋律は発展していき、最後に『草競馬』から採られたメロディーの2つの華麗な変奏が置かれて締めくくられる[3]。 譜例 注釈^ 本作の終結部のような形のこと。 出典^ ⇒88 Keys to Freedom: Segues Through the History of American Piano Music on New Music Box.org
楽曲構成
脚注
^ a b ⇒Gottschalk's "The Banjo," Op. 15, and the Banjo in the Nineteenth Century by Paul Ely Smith
^ a b c d Dave Lewis, Uncle. バンジョー
^ Steven Mayer, Booklet for CD, Gottschalk: A Night in the Tropics, Naxos, 8.559693.
参考文献
CD解説 Steven Mayer, Gottschalk: A Night in the Tropics, Naxos, 8.559693
楽譜 Gottschalk: Le Banjo, William Hall & Son, New York, 1855.
外部リンク
バンジョーの楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト
バンジョー
⇒Gottschalk's The Banjo, Op. 15 The Banjo in the Nineteenth Century by Paul Ely Smith