バルドル
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これによりバルドルは命を落としてしまった。

これを嘆いたフリッグに応えて、バルドルの弟のヘルモーズが死の国ヘルヘイムへ向かい、女王ヘルに彼を生き返らせてくれと頼んだ。ヘルは「本当に、全世界の者が彼のために泣いているというならば生き返らせてやろう」と約束した。

フリッグの頼みで、本当に全世界のあらゆる生物・無生物が彼のために泣いた。ところが、たった一人、巨人の女セック(ソック)が泣かなかったのでバルドルは戻ってこなかった。このセックの正体は実はロキで、このことから彼は神々に捕らえられ罰を受けることになった。

バルドルの死によって光を失った世界は、やがてラグナロクを迎える。『ギュルヴィたぶらかし』[10]及び『古エッダ』の『巫女の予言[11]の伝えるところでは、オージンをはじめとして多くの神が死に、世界は滅ぶ。やがて新しい大地が浮かんでくると、バルドルはヘズと共によみがえってくる。
『詩語法』

詩語法』ではバルドルを表すケニングとして、「オーディンとフリッグの子」、「フリングホルニとドラウプニルの所有者」、「ホズの敵」、「ヘルの友」などを紹介している[2]
『ユングリング家のサガ』

スノッリ・ストゥルルソンは、『ヘイムスクリングラ』の『ユングリング家のサガ』第5章においても、バルドルがブレイザブリクに居住したとしている。それはログ湖(現在のスウェーデンメーラレン湖)のほとりの古シグトゥーナ(en)にあり、バルドルは神殿のゴジとして、オージンからその地を与えられた[12]
『デンマーク人の事績』ナンナをめぐってホテルスと戦うバルデルス。Johannes Wiedeweltによる(1775年)。

サクソ・グラマティクスが著した歴史書『デンマーク人の事績』において、バルドルはオーティヌス(オーディン)の息子である半神の戦士・バルデルス[13](またはバルデル[14])として登場し、性格も勇猛に描かれている。その肉体はどんな武器も貫けないが、森に住む神サチュルンであるミミングが持つ剣ならば傷つけることができるとされる。バルデルスはまた、3匹の蛇の毒を混ぜた特殊な食料を食べて力を得ている。ホテルス(ヘズ)の乳兄妹のナンナをめぐってホテルスと争い、オーティヌスやトールの助力の甲斐なくホテルスとの海戦で敗れる。その後も幾度かの対決でバルデルスが優位に立つが、ナンナがホテルスと結婚すると、彼女の幻影に悩まされて病気になり、歩行ができなくなり馬車で移動するようになる。ホテルスにスウェーデンデンマークを支配されたため、デンマークを回復すべく双方の軍勢をぶつけ合う。そのさなか、洞窟に住む3人の乙女たちから勝利の帯を与えられたホテルスによって剣で脇腹を刺される。自分の死を覚悟しつつバルデルはホテルスとの争いを続けたが、傷の痛みが増して3日後に落命する。死体はデンマーク人によって大きな塚に葬られる[15]
備考

小惑星(4059) Balderはバルドルにちなんで命名された[16]
脚注ヴァフスルーズニルの言葉』では、オージンがバルドルの遺体の耳元で何かをささやいたとされる。コリングウッドによる(1908年)。[脚注の使い方]^ a b 『エッダ 古代北欧歌謡集』p.244(「ギュルヴィたぶらかし」第22章)
^ a b 谷口幸男「スノリ『エッダ』「詩語法」訳注」『広島大学文学部紀要』第43巻No.特輯号3、1983年、p.20
^ 『エッダ 古代北欧歌謡集』p.248(「ギュルヴィたぶらかし」第32章)
^ a b 『エッダ 古代北欧歌謡集』pp.270-273(「ギュルヴィたぶらかし」第49章)
^ 『北欧の神話』p.143、p.206
^ 『北欧の神話』p.143
^ 『エッダ 古代北欧歌謡集』pp.199-200(「バルドルの夢」)


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