バリー・ボイト
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北斜面の直下を震源とするマグニチュード5.1の地震が、午前8時32分に火山のその部分の地滑りを誘発した後[16]、火山が噴火し、11億ドルの物損を出させ、57人の命を奪った[17]。その噴火後、ボイトはアメリカ地質調査所のコンサルタントの地位を引き受けた。火山の噴火中に起きた地滑りの調査に入り、ハリー・グリッケンなど他の火山学者を指導した[18]。グリッケンはボイトの初期研究の上に立って、『ワシントン州セント・ヘレンズ火山の1980年5月18日の岩盤すべり屑なだれ』(1996年)と題した報告書を作成した[19]。ボイトはこの仕事で国際的な名声を獲得し[7]、後にそこでの経験を「人生を変えるもの」と表現した[20]。この頃既にボイトは火山学に関する興味を増していたが、セントヘレンズ山の噴火で、ボイトの仕事を切り替えさせ、その分野に生涯を捧げる気持ちにさせた。ボイトの仕事が、人命に脅威を与える可能性がある火山の地滑りなどの現象に関する広い関心を再活性させることに役立った[8]。ボイトはセントヘレンズ山の後で、他の幾つかの活火山から火山性の危険性を分析する仕事を始めた[20]

1985年、コロンビアネバドデルルイス火山が噴火して23,000人以上が死亡したアルメロ悲劇に対し、ボイトはそれがヒューマンエラーだと非難することで反応した。火山噴火の完全に正確な予測は不可能だと考えていたが、災害に対する準備の無さと、それを防ぐ行動を起こさなかったことが死者の数を多くしたと考えた[21]。1986年1月、ボイトはネバドデルルイス火山を訪れた。これは火山の北東部が陥没しており、新たな噴火が起こるのではないかというコロンビア政府の心配に反応したものだった。監視用の反射板ネットワークを構築し、それをレーザー測距儀を使って、時間の経過とともに反射板に対する距離が変化するかを追った。1つの反射板が多くの動きを示し、空中から大きな割れ目が見えるようになると、ボイトは避難を考えるようになっていたが、まだ動かなかった。1986年3月までに、割れ目が広がるのは火山の岩ではなく氷河の1つがクリープ(緩やかな動き)を起こしていることで生じていることを理解した[10]。ボイトは火山を離れた後で、『大災害へのカウントダウン』と題する14ページの報告書を纏めた(1988年)[22]。これはアルメロでいかに火山の危険性管理が失敗したかを分析していた[10]
その後の研究

1988年、ボイトがインドネシアジャワ島にあるムラピ山で研究を始めたとき、その存在は火山学者にもあまり知られていなかった。スミソニアン博物館が1981年に発行した『世界の火山』からも省かれていたが、1996年時点でその斜面には100万人近い人々が住んでいた。ボイトは火山の中の動きを記録する計器を取り付け、火山の観察について地元の科学者を教育した[23]。1989年7月、アメリカ国立科学財団の自然および人工危険性緩和部から、ムラピ山での噴火を予測するという提案に対して25万ドルの助成金を得ていた[10]。その資金が尽きた後で、一時的に研究を中断していた。1994年、この火山の噴火から火砕流を発生させ、結婚式の招待客を含め63人が死んだ。この噴火を23人が生き残った。ボイトは翌年ムラピ山に戻り、死者と生存者のデータを比較し、火傷を負った場所の程度、衣類の損傷、肺が受けた損傷などを調べた。ボイトは、噴火活動が起こったときに保護できる長袖の衣類とマスクが生き残るチャンスを増させたと結論付けた[23]

1989年4月、国際連合災害救済機構から接触を受けた後、ボイトはコロンビアに戻り、ガレラス山に行った。火山の麓にあるパスト市の人々は、ガレラス山の騒音や振動で警告を受けるようになっていた。ガレラス山はネバドデルルイス山より遥かに容易に登れることが分かったが、地雷を埋められた土地が山の斜面の各所にゲリラ軍を隠していた。ボイトはアメリカ地質調査所の地質学者ディック・ジャンダとともにハザードマップを作成した。その危険地帯には幾つか人の住む地域も入っていた。ボイトがガレラス山を離れる前に、思いがけない[24]水蒸気爆発が起こった。ボイトとそのチームはそれを予測できていなかった。パスト市に影響は無かったが、国連の自然災害救済ワークショップに出席していた6人の科学者が死んだ[24]。噴火の前日に得られていた変形のデータを照査した後、ボイトは変形に加速が起きていなかったことを発見した。ボイトはこの水蒸気爆発が起こる前に変形の加速を示していなかったと推量し、火山の監視システムが適切に働いていたことを確認した後に、この地を離れた[10]


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