バット_(野球)
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アルミニウム亜鉛を加えた合金などの金属パイプを成形・焼入れして作られる中空のバットである[12][13][14]。一般には、木製バットと比べ、ジャストミートできる「芯」が広く、強い打球を打てるとされる[15]。耐久性も木製バットを上回るため、予算の乏しいアマチュアで使用が認められることがある。アメリカでは事故防止などのために、リトルリーグから高校野球、大学野球までにおいて、反発係数を木製バットと同等程度に制限している[16][17]

金属バットは、芝浦工業大学学長も務めた大本修平成24年野球殿堂入り)が、1960年代に米国メーカーよりも先に考案したと言われている。大本は通商産業省による金属バットの安全基準作りにも関わった。金属バットで硬球を長期間打ち続けると、打球音の影響で聴力が低下することが指摘されている[17][18]。練習場周辺に対する騒音の問題もあり、日本の高校野球では1991年以降バット内部に音響放射を低減させる作用を持つ防音・防振材が貼り付け又は充填されるようになった[15]
その他

接合バットは竹の合板を軸として打球部分にメイプルなどの木材を貼り合わせている。ラミバットとよばれる。

竹バットや接合バットは、金属バットより「芯」が狭い、「芯」を外した時には衝撃がくる、1本の木材から作られたものより丈夫であり安価である、ということからアマチュア野球の練習用バットとして使われている。特に2000年代以降はモウソウチク製バットの流通量が増加しており[11]、バット材として使用できるようになるまでの生育年数が短い(モウソウチクの場合5?10年。メイプルは約40?50年、アオダモは約70?80年)という利点もあることから、アマチュアに広く普及するに至っている[11]

この他ノックバットには古くからホオノキが使われることが多く、現在も一定量が流通している[11]

ミズノなどから軟式野球用に外側がゴム(エーテル系発泡ポリウレタン)のものも販売されている。これらは軟式ボールの変形をおさえ、反発係数を高めることで飛距離を増すというものである。
バットの種類
試合用

硬式球を打つための硬式用バットと、軟式球を打つための軟式バットがある。打者のタイプによって重心の位置が異なっており、長打を狙う選手はグリップが細く、ヘッドが太い先端に重心があるバット(トップバランス)、短打を確実に狙う選手にはグリップが太く、ヘッドが細いバット(カウンターバランス)が好まれる。プロ野球選手の場合には特注されることが多く、実際に使われているものに似せたバットが、その選手名を冠して「○○モデル」として市販されている。
練習用

練習用として、投手の投球を打つことを目的としないバットがある。ノックの打球を確実に打つため、細く軽量に作られたノックバット、スイングの矯正などに用いられる長尺バットなどがある。筋力を付けるために重く作られたバットをマスコットバットと呼ぶ。また、素振りの際に鉄製のリングをバットに取り付け、錘としてボールを打つ時の感触に近づけることがある。

また、高校野球では通常試合用には金属バットを使用するが、強豪校を中心に打撃練習用として竹の接合バットが使われることがある。これは、芯が狭く外した際の衝撃が大きい性質がボールを芯でとらえる練習に適していることと、木製バットよりも耐久性が高く安価であることによるものである。
サイン用(サインバット)

サインバットはもっぱらサインを記念として残す目的で製作されているバットである。
公認野球規則

公認野球規則3.02にバットについての規則がある[19]。公認野球規則をもとにプロ野球、社会人野球、高校野球、軟式野球についてバットの基準が定められている。このほか各大会で使用できるバットの材質、色、形状などがそれぞれ規定されている場合もある。いずれも異常な打球が飛ぶような細工などの不正行為を防ぐため、細かな規定がある。
形状

バットはなめらかな円い棒である(公認野球規則3.02(a))。

太さはその最も太い部分の直径が2.61インチ (6.6cm) 以下であることを必要とする(公認野球規則3.02(a))。

長さは42インチ (106.7cm) 以下であることを必要とする(公認野球規則3.02(a))。

先端をえぐったカップバットについては、くぼみは深さ1.mw-parser-output .frac{white-space:nowrap}.mw-parser-output .frac .num,.mw-parser-output .frac .den{font-size:80%;line-height:0;vertical-align:super}.mw-parser-output .frac .den{vertical-align:sub}.mw-parser-output .sr-only{border:0;clip:rect(0,0,0,0);height:1px;margin:-1px;overflow:hidden;padding:0;position:absolute;width:1px}1⁄4インチ (3.2cm) 以内、直径1インチ以上2インチ (5.1cm) 以内としなければならない(公認野球規則3.02(b))。また、くぼみの断面は、椀状にカーブしていなければならず、直角にえぐったり、異物を付着させてはならない(公認野球規則3.02(b))。

バットの握りの部分(端から18インチ (45.7cm))には、何らかの物質を付着させたり、ザラザラにすることで握りやすくすることは許される(公認野球規則3.02(c))。ただし、18インチの制限を超えて細工したバットを試合に使用することはできない(公認野球規則3.02(c))。

材質

1本の木材で作られるべきである(公認野球規則3.02(a))。

日本のアマチュア野球では、各連盟が公認すれば、金属製バット、接合バット(木片の接合バットおよび竹の接合バットで、バット内部を加工したものを除く)の使用を認めることになっている(公認野球規則3.02(a)【注2】)。認められる範囲は高校野球と社会人野球で異なる(後述)。

プロ野球では規則委員会の認可がない限り着色バットは使用できない。ただし、日本プロ野球では着色バットの色について別に定める規定に従うこととしている(公認野球規則3.02(d)【注1】)。2002年から着色バットが認められたが、2005年からは国際規格に合わせて淡黄色が禁止され、自然色と合わせて、こげ茶、赤褐色、黒の3色が認められている。2011年からは、着色する場合でも木目の確認しやすい程度の色の濃さにすることが定められた。
各団体における規則
日本のプロ野球

日本プロ野球では、金属製バット、木片の接合バットおよび竹の接合バットは、コミッショナーの許可があるまで使用できない(公認野球規則3.02(a)【注1】)[19]。ジュン石井社が1950年代後半に、いずれ上質な木材が大量供給できなくなる可能性を考えて、木目を樹脂で固めた圧縮バットを作成した。やがて各社の開発競争によりその反発力が高められ打者が有利になりすぎているのではないかと指摘されるようになり、1981年のシーズンより下田武三コミッショナーによって圧縮バットの使用は禁止された[20]
日本の高校野球

日本の高校野球では、上記の通り木製バット、木片の接合バット、竹の接合バット、金属製バットの使用が認められているが、現在では、芯が木製バットよりも広いために使いやすく、木製バットより折れにくいために経済的であることから金属製バットの使用がほとんどである。バットの色は木目色、金属の地金の色、黒色のみとされ、それ以外の着色バットは認められていない。

1973年に来日したハワイ選抜チームが金属製バットを使用していた事が切っ掛けで経済的に評価された。翌1974年の春季都道府県大会から金属製バットの使用が許可され、全国大会では1974年の選手権大会から使用が認められた。とはいえ、金属製バットはすぐに広まったわけではない。@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}当初は、甲子園でも5分の3くらいの選手しか使用していなかった[要出典]。金属製バットが一気に広まるのは、1982年に蔦文也監督が率いた徳島県立池田高校が金属バットの特性を生かして甲子園を席巻してからである[21][注釈 4]。また金属製バットは甲高い打球音が球審や捕手の難聴の原因になるとされ、1991年には打球音を抑えた消音バットが採用され[17][15]、移行期間を経て1993年からは消音バットのみが許可された。その後は更に過度な軽量化がなされた結果、バット自体の破損や強すぎる打球により、プレーへの安全性が懸念されたため、1999年に金属製バットの基準が「バットの最大径67ミリ未満、重量900グラム以上、傾斜率」に変更される。移行期間を経て2001年の秋季大会より900グラム以下のバットは使用禁止となる。2022年、2019年に打球が顔面に当たった投手が頬骨を骨折した事等が切っ掛けになり再度、バットの基準変更が検討され、「最大直径は67ミリ未満から64ミリ未満と細く、打球部の厚みは約3ミリから約4ミリ以上と厚く、反発性能を抑制し重量は900グラム以上」となった。この規定の適用は第96回センバツ大会と各都道府県大会からで、2年間の移行期間を経て新基準のバットに完全移行する予定である[22]
日本の社会人野球

社会人野球では、2005年シーズンからはすべての大会で木製バットの使用が義務付けられ、接合バット、樹脂加工バット、着色バット(ダークブラウン、赤褐色、淡黄色で、木目が目視できるもの)の使用が認められている。

かつても木製バットが使用されていたが、野球の国際的な普及を目的に、国際大会で金属バットが導入されたことから1979年シーズンから金属バットの使用が認められていた。しかし、オリンピックにおけるプロ参加が解禁されるようになり、国際大会でも木製バットが使用されるようになると、2002年シーズンからは木製バットを使用している。


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