バットマン:_キリングジョーク
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ヴァン・ジェンセンはComicMixへの寄稿で「[本作を再読すると]いつも、アラン・ムーアとブライアン・ボランドのコンビがページに込めた激しさ、残忍さ、人間性に改めて感嘆する」と書いた[19]。コミック史家ロバート・グリーンバーガー(英語版)とマシュー・K・マニングは「ジョーカーの物語としてオールタイムの決定版」と評した[20]。マニングは「ゴッサム・シティの歴史でも最高に力強く、心をかき乱す物語」とも書いている[21]

セブ・パトリックはデン・オブ・ギークで本作にやや厳しい評価を下した。「これまでに書かれた「バットマン」の中でも特に礼賛されている影響力が強い作品であり、ジョーカーの物語の白眉といえる」と評する一方で、『ウォッチメン』『Vフォー・ヴェンデッタ』『リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』のような真に優れたムーア作品の域には達していないという[22]
作者の反応

アラン・ムーアは後になって、本作をはじめとする自作がスーパーヒーロー・コミックに陰鬱な作風を流行させたことを後悔するようになった。本作のスクリプトそのものの自己評価も低く[10]、主題が浅薄だとみなしている[4]。2000年のインタビューでは、権力をテーマにした『ウォッチメン』や、ファシズムアナーキズムを扱った『Vフォー・ヴェンデッタ』と比較して「それほどいい作品だとは思わない。何も興味深いことを言っていない」と述べている[23]。これにはムーアとDC社の不和も影響を与えていると見られる[4]。2003年には次のように述べている。

『キリングジョーク』はバットマンとジョーカーの物語だ。実人生で出合うようなことはまったく出てこない。バットマンとジョーカーはこの世のどんな人間にも似ていない。だからこの本は人間について何も教えてくれない … ああ、私が思うにこの作品は不出来なのに過大評価されていて、ヒューマンな意味での重要性はまったくない。DC社が所有する、現実世界とは何の関係もないキャラクターの話でしかない[24]

2006年の『ウィザード(英語版)』誌に掲載されたインタビューで、ムーアはバーバラ・ゴードンを半身不随にしたことについても自己批判した。「DCに聞いたんだ。そのときバットガールだったバーバラ・ゴードンを不具にして構わないか。記憶が確かなら、相手は担当編集者だったレン・ウェインだった。彼はこう答えた。「ああいいよ、あのビッチを不具にしてやれ[† 7]」ここはDCが私の手綱を引くべきところだったと思う。でも彼らはそうしなかった」[25]

ボランドは本作の最終版に不満を持っており、発売までのスケジュールに余裕がなく自身でアートの彩色を行えなかったことを悔やんでいる(カラリストを務めたのはジョン・ヒギンズである)。「出来上がりは私が望んでいたようなものではなかった。アランの執筆歴で最高クラスの作品と同列だとは思わない」[26]2008年3月にはボランド自身によって全面的にカラーリングがやり直された『キリングジョーク』20周年記念ハードカバー版が刊行され、当初の構想通りのアートワークが公の目に触れることになった。同書は2009年5月に『ニューヨーク・タイムズ』のベストセラーリストに載せられた[27]
ジョーカーのストーリーへの影響

批評家マーク・ヴォグラーは本作が「ジョーカーのもっとも下劣な行為を描くと同時に、共感を込めた背景ストーリーをも生み出した」と書いた[28]。そこに見られる悲劇性や人間的な要素は、ジョーカーとなってからの残忍な犯罪と相まって、問題のキャラクターをより立体的な人物として描き出している。ムーアは『サロン』のインタビューで、ジョーカーの異常性はそれまでの人生における「間違った選択」の結果かもしれないと述べた[1]。ヒラリー・ゴールドスタインは、かつては単なるペテン師として描かれていたジョーカーが虚無主義者という現代的なイメージを獲得したのは本作の影響が大きいと書いた[13]
フェミニストによる解釈

フェミニスト批評はバーバラ・ゴードンの扱いについて本書を批判してきた。作家ブライアン・クローニンは「この本の読者はバーバラ・ゴードンに対する暴力は行き過ぎていると感じた。作者ムーアでさえ、後に振り返って、作品の内容に不快感を表明している」と述べている[29]。作家シャロン・パッカーはこう書いた。「フェミニストの批評家がこの件を過大に考えていると思うなら、原典に当たってみることを勧める。ムーアの『キリングジョーク』は徹底的にサディスティックな作品である。作中ではゴードンが衣服を剥ぎ取られて障害の残るような重症を負わされ、その一部始終を撮った写真が、拘束されて猿ぐつわをかけられた警察本部長の父親に見せつけられる。単に怪我で障害を負ったというわけではないのだ」[30] コミック原作者ゲイル・シモーン(英語版)はゴードンの半身不随をはじめとする「殺され、身体を損われ、能力を奪われた主要な女性キャラクター」の長いリストを作成し、グリーンランタンが冷蔵庫に入れられた恋人(女性)の死体を見つける1994年のコミックにちなんで「冷蔵庫の中の女性たち(英語版)」現象と名付けた。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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