バットマン:_キリングジョーク
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ヒラリー・ゴールドスタインは、かつては単なるペテン師として描かれていたジョーカーが虚無主義者という現代的なイメージを獲得したのは本作の影響が大きいと書いた[13]
フェミニストによる解釈

フェミニスト批評はバーバラ・ゴードンの扱いについて本書を批判してきた。作家ブライアン・クローニンは「この本の読者はバーバラ・ゴードンに対する暴力は行き過ぎていると感じた。作者ムーアでさえ、後に振り返って、作品の内容に不快感を表明している」と述べている[29]。作家シャロン・パッカーはこう書いた。「フェミニストの批評家がこの件を過大に考えていると思うなら、原典に当たってみることを勧める。ムーアの『キリングジョーク』は徹底的にサディスティックな作品である。作中ではゴードンが衣服を剥ぎ取られて障害の残るような重症を負わされ、その一部始終を撮った写真が、拘束されて猿ぐつわをかけられた警察本部長の父親に見せつけられる。単に怪我で障害を負ったというわけではないのだ」[30] コミック原作者ゲイル・シモーン(英語版)はゴードンの半身不随をはじめとする「殺され、身体を損われ、能力を奪われた主要な女性キャラクター」の長いリストを作成し、グリーンランタンが冷蔵庫に入れられた恋人(女性)の死体を見つける1994年のコミックにちなんで「冷蔵庫の中の女性たち(英語版)」現象と名付けた。作家ジェフリー・A・ブラウンは、DCとマーベルという二大出版社のコミックで「女性キャラクターが受ける暴力がやや不平等である」ことの例として『キリングジョーク』を挙げている。ブラウンによると男性キャラクターも重傷を負ったり殺されたりすることはあるが、回復して最初に設定された通りのキャラクターに戻る可能性が高い。しかし「一方で女性は、バーバラ・ゴードン(オリジナルのバットガール)のように軽々しく傷を負わされ、治療不能となることが多い。ゴードンはジョーカーによって面白半分に脊椎を砕かれ、現在まで10年以上も車椅子に縛り付けられている」[31]
後の作品への影響
その後のストーリー展開

本作は単号完結の作品だったが、そこで起きた出来事はコミックブックシリーズ本編のストーリーラインに取り入れられた。DCコミックスは本作で障害を負ったバーバラ・ゴードン(バットガール)をワンショット『バットガール・スペシャル』第1号(1988年7月)で正式に引退させた後に[32]、車椅子のコンピュータ・ハッカーとして『スーサイド・スクワッド』誌に再登場させ、オラクルという新しい名で活動を始めさせた。「キリングジョーク」事件は、直後に正シリーズで展開された「デス・イン・ザ・ファミリー(英語版)」でジョーカーが当時のロビンを殺した件とともに、「犯罪界の道化王子」に対するバットマンの意識を個人的な執着のレベルにまで高めた。バットガールの名は後にカサンドラ・カイン[33]へ、さらにステファニー・ブラウンへと受け継がれた[34]
エピソード
オラクル: イヤー・ワン: ボーン・オブ・ホープ
1996年、『バットマン・クロニクル
(英語版)』第5号にジョン・オストランダーとキム・イェールの作品「オラクル: イヤー・ワン: ボーン・オブ・ホープ」が掲載された。同作では、バーバラ・ゴードンの視点を通して、「キリングジョーク」事件や、負傷からの回復やオラクルへの変身といったその余波が語られる。
プッシュバック
2004年のストーリー「プッシュバック」(『バットマン: ゴッサム・ナイツ(英語版)』誌第50-55号。単行本『バットマン: ハッシュ・リターンズ』に収録)は、『キリングジョーク』で書かれたジョーカーの背景ストーリーから多くを引用している。同作で語り手役となるリドラーの説明では、ジョーカーは問題の事件まで「ジャック」と呼ばれており、妊娠中の妻が死んだのは犯罪者が彼を従わせようとしたためである[35][36]
ノー・ジョーク
2007年、ジェフ・ジョーンズは『ブースターゴールド(英語版)』シリーズで『キリングジョーク』の外伝的なストーリー「ノー・ジョーク」を書いた[37]。そこでは主人公ブースターゴールド(英語版)が時間を遡ってジョーカーのバーバラ銃撃を阻止しようとするが、運命は変えられないこともあるということを学ぶ。
レディーズ・ナイト
2010年、原作者J・マイケル・ストラジンスキーと作画家クリフ・チャン(英語版)による読み切り「レディーズ・ナイト」がアンソロジーシリーズ『ブレイブ&ボールド(英語版)』に掲載された。『キリングジョーク』事件の直前を扱った作品で、バーバラが襲われることを予知夢で知ったザターナワンダーウーマンとともに事件を防ごうとする。「ノー・ジョーク」と同じくバーバラの運命は変わらないが、ザターナたちはバーバラが半身不随となる前に一夜を楽しく過ごす[38]
The New 52

DCコミックスは2011年にThe New 52(英語版)の名の下で作中世界の設定再編を行った。このとき既存のバットマン物語は多くが歴史から消されたり変更を受けたりしたが、「キリングジョーク」事件はそのまま残された。新しいコンティニュイティ(正史)では、バーバラ・ゴードンは銃撃の数年後には麻痺から回復し、バットガールとしての活動を再開するが[39]、再度の脊髄損傷につながりうる銃撃に出合ってPTSDを起こす[40]。バーバラは初代のバットガールであり、ほかのバットガールはまだ存在していないことになった[41]

2015年3月、DCコミックスはジョーカーの誕生75周年を記念して、6月発売の月刊シリーズでジョーカーをテーマとしたバリアントカバーを出すことをアナウンスし、25枚の表紙絵を公開した。その中にはラファエル・アルバカーキ(英語版)が『キリングジョーク』からインスピレーションを受けて描いた『バットガール』第41号の表紙があった。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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