批評家マーク・ヴォグラーは本作が「ジョーカーのもっとも下劣な行為を描くと同時に、共感を込めた背景ストーリーをも生み出した」と書いた[28]。そこに見られる悲劇性や人間的な要素は、ジョーカーとなってからの残忍な犯罪と相まって、問題のキャラクターをより立体的な人物として描き出している。ムーアは『サロン』のインタビューで、ジョーカーの異常性はそれまでの人生における「間違った選択」の結果かもしれないと述べた[1]。ヒラリー・ゴールドスタインは、かつては単なるペテン師として描かれていたジョーカーが虚無主義者という現代的なイメージを獲得したのは本作の影響が大きいと書いた[13]。 フェミニスト批評はバーバラ・ゴードンの扱いについて本書を批判してきた。作家ブライアン・クローニンは「この本の読者はバーバラ・ゴードンに対する暴力は行き過ぎていると感じた。作者ムーアでさえ、後に振り返って、作品の内容に不快感を表明している」と述べている[29]。作家シャロン・パッカーはこう書いた。「フェミニストの批評家がこの件を過大に考えていると思うなら、原典に当たってみることを勧める。ムーアの『キリングジョーク』は徹底的にサディスティックな作品である。作中ではゴードンが衣服を剥ぎ取られて障害の残るような重症を負わされ、その一部始終を撮った写真が、拘束されて猿ぐつわをかけられた警察本部長の父親に見せつけられる。単に怪我で障害を負ったというわけではないのだ」[30] コミック原作者ゲイル・シモーン
フェミニストによる解釈
本作は単号完結の作品だったが、そこで起きた出来事はコミックブックシリーズ本編のストーリーラインに取り入れられた。DCコミックスは本作で障害を負ったバーバラ・ゴードン(バットガール)をワンショット『バットガール・スペシャル』第1号(1988年7月)で正式に引退させた後に[32]、車椅子のコンピュータ・ハッカーとして『スーサイド・スクワッド』誌に再登場させ、オラクルという新しい名で活動を始めさせた。「キリングジョーク」事件は、直後に正シリーズで展開された「デス・イン・ザ・ファミリー
(英語版)」でジョーカーが当時のロビンを殺した件とともに、「犯罪界の道化王子」に対するバットマンの意識を個人的な執着のレベルにまで高めた。バットガールの名は後にカサンドラ・カイン[33]へ、さらにステファニー・ブラウンへと受け継がれた[34]。