ボランドは本作の最終版に不満を持っており、発売までのスケジュールに余裕がなく自身でアートの彩色を行えなかったことを悔やんでいる(カラリストを務めたのはジョン・ヒギンズである)。「出来上がりは私が望んでいたようなものではなかった。アランの執筆歴で最高クラスの作品と同列だとは思わない」[26]2008年3月にはボランド自身によって全面的にカラーリングがやり直された『キリングジョーク』20周年記念ハードカバー版が刊行され、当初の構想通りのアートワークが公の目に触れることになった。同書は2009年5月に『ニューヨーク・タイムズ』のベストセラーリストに載せられた[27]。 批評家マーク・ヴォグラーは本作が「ジョーカーのもっとも下劣な行為を描くと同時に、共感を込めた背景ストーリーをも生み出した」と書いた[28]。そこに見られる悲劇性や人間的な要素は、ジョーカーとなってからの残忍な犯罪と相まって、問題のキャラクターをより立体的な人物として描き出している。ムーアは『サロン』のインタビューで、ジョーカーの異常性はそれまでの人生における「間違った選択」の結果かもしれないと述べた[1]。ヒラリー・ゴールドスタインは、かつては単なるペテン師として描かれていたジョーカーが虚無主義者という現代的なイメージを獲得したのは本作の影響が大きいと書いた[13]。 フェミニスト批評はバーバラ・ゴードンの扱いについて本書を批判してきた。作家ブライアン・クローニンは「この本の読者はバーバラ・ゴードンに対する暴力は行き過ぎていると感じた。作者ムーアでさえ、後に振り返って、作品の内容に不快感を表明している」と述べている[29]。作家シャロン・パッカーはこう書いた。「フェミニストの批評家がこの件を過大に考えていると思うなら、原典に当たってみることを勧める。ムーアの『キリングジョーク』は徹底的にサディスティックな作品である。作中ではゴードンが衣服を剥ぎ取られて障害の残るような重症を負わされ、その一部始終を撮った写真が、拘束されて猿ぐつわをかけられた警察本部長の父親に見せつけられる。単に怪我で障害を負ったというわけではないのだ」[30] コミック原作者ゲイル・シモーン 本作は単号完結の作品だったが、そこで起きた出来事はコミックブックシリーズ本編のストーリーラインに取り入れられた。DCコミックスは本作で障害を負ったバーバラ・ゴードン(バットガール)をワンショット『バットガール・スペシャル』第1号(1988年7月)で正式に引退させた後に[32]、車椅子のコンピュータ・ハッカーとして『スーサイド・スクワッド』誌に再登場させ、オラクルという新しい名で活動を始めさせた。「キリングジョーク」事件は、直後に正シリーズで展開された「デス・イン・ザ・ファミリー
ジョーカーのストーリーへの影響
フェミニストによる解釈
後の作品への影響
その後のストーリー展開
エピソード
オラクル: イヤー・ワン: ボーン・オブ・ホープ
1996年、『バットマン・クロニクル(英語版)』第5号にジョン・オストランダーとキム・イェールの作品「オラクル: イヤー・ワン: ボーン・オブ・ホープ」が掲載された。同作では、バーバラ・ゴードンの視点を通して、「キリングジョーク」事件や、負傷からの回復やオラクルへの変身といったその余波が語られる。
プッシュバック
2004年のストーリー「プッシュバック」(『バットマン: ゴッサム・ナイツ(英語版)』誌第50-55号。単行本『バットマン: ハッシュ・リターンズ』に収録)は、『キリングジョーク』で書かれたジョーカーの背景ストーリーから多くを引用している。同作で語り手役となるリドラーの説明では、ジョーカーは問題の事件まで「ジャック」と呼ばれており、妊娠中の妻が死んだのは犯罪者が彼を従わせようとしたためである[35][36]。
ノー・ジョーク
2007年、ジェフ・ジョーンズは『ブースターゴールド(英語版)』シリーズで『キリングジョーク』の外伝的なストーリー「ノー・ジョーク」を書いた[37]。そこでは主人公ブースターゴールド(英語版)が時間を遡ってジョーカーのバーバラ銃撃を阻止しようとするが、運命は変えられないこともあるということを学ぶ。