はじめてバッテリーバックアップを採用したゲームソフトは、1985年秋発売のスーパーカセットビジョン用ソフトの『ポップ&チップス』(エポック社)である。通常サイズのゲームカートリッジを巨大化して単三電池2本の格納スペースを確保することで実現したものであり、後発のスーパーカセットビジョン版『ドラゴンスレイヤー』(1986年4月発売)等でも採用されている。しかし、完成度が低く電池の接触不良等によるデータ消滅が多発した。
MSX用ソフトでの初は1986年11月発売の『ハイドライドII SHINE OF DARKNESS』(T&E SOFT)。パーソナルコンピュータの本体に内蔵することが常識だった16KBのSRAMとリチウム電池をROMカートリッジの内部に内蔵した[3]。なお、前作でパスワード方式を発明したが、『ハイドライドII』でパスワードを採用すると、約50文字の長大なパスワードとなりプレイヤーは入力ミスによる苦痛を味わうと考え不採用となった経緯がある。なお、パスワードについては『ハイドライドII』の翌年に登場したファミリーコンピュータ(ファミコン)版およびMSX/MSX2版の『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』(エニックス)では、懸案だった最大52文字の長いパスワード方式が採用されている。やはり誤入力が多発していたようである。
一方この頃、PC-8800MkIIシリーズ、PC-9800シリーズ、Macintoshシリーズなどではすでにフロッピーディスクが標準搭載となっていた。低価格帯のMSX2などでもフロッピーディスクが普及すると、不安定なバッテリーバックアップに代えてディスクメディアでのセーブが主流となっていく。
ファミコンでの初は、1987年4月発売の『森田将棋』(セタ)[注 4]。その後はRPGを中心に一般化した。RPGでは『未来神話ジャーヴァス』(タイトー)、『インドラの光』(ケムコ)、『ファイナルファンタジー』、ドラゴンクエストシリーズでは、翌1988年2月発売の『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』から同システムが導入された。
セガ・マークIIIで初めて搭載したのは1987年10月18日の『覇邪の封印』。
1990年代中ごろから、フラッシュメモリ(EEPROM)などの、データの保持に電源が不要な不揮発性メモリが小型化および低価格化したために、バッテリーバックアップに替わってこれらが徐々に記憶媒体の主流となっていった。方式移行の過渡期の機種であるNINTENDO64やゲームボーイアドバンスのタイトルでは、セーブ方式にバッテリーバックアップと不揮発性メモリが混在しているものが存在する[注 5]。
2016年頃から、ロムカセットがゲーム用メディアとして使われる事は携帯型ゲーム機のみであり、読み出し専用の光ディスクに、前述の不揮発性メモリを用いた外部記憶装置や、本体内蔵の補助記憶装置(フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ)を組み合わせる方式が主流となった。
フラッシュメモリは、SRAMに比べて記録速度が遅いため、『不思議のダンジョン』シリーズをはじめとするローグライクゲームなど、リアルタイムセーブを採用してきたゲームタイトルの中にはゲーム開始時にペナルティを付加した状態でセーブ[注 6]を行なうなどの仕様変更が行われることもあった。
フラッシュメモリには書き込み回数に制限があるが、ゲームに用いられているものは現実的な使用範囲で限界に達したという例はほとんど無く、普通は説明書等でも触れられていない。
脚注[脚注の使い方]
注釈^ ただし、専用の磁気ディスクを用いるディスクシステムや、EEPROMを内蔵したバンダイの一部ソフトなど、根本的にバッテリーバックアップに頼らないセーブ方式を採用した例はある。
^ ただし、ソフトウェアによってはリセットボタンを押さずに電源スイッチを切るものもあった。ナムコ製のファミコンソフトのバックアップシステムはリセットボタンを押さずに電源を切る仕様だった。
^ ターボファイルは内蔵のコンデンサにより、本体と接続して使用後に電源を切っても1?2分程度の間なら通電状態でなくとも電池交換は可能な仕様
^ ゲームソフト以外を含めると、1984年6月に発売された周辺機器『ファミリーベーシック』が先となる。これは前述のスーパーカセットビジョン用ソフトよりも先である。
^ 『ファイアーエムブレム 封印の剣』『ファイアーエムブレム 烈火の剣』のように、同一タイトルでありながら初期出荷ロットではバッテリーバックアップで発売され、後の出荷ロットでEEPROMに変更されたタイトルも存在する。
^ 予めペナルティーがある状態で記録されているため、リセットを行ってもペナルティーが適用される。