地形的に大まかな境界を見ると、北端がビスケー湾、北東端がアドゥール川、東端がアニ峰、南端がエブロ川、西端がネルビオン川である[8]。 バスク地方北東部をピレネー山脈が占め、2,504mのアニ峰、2,044mのアルラ峰、2017mのオリ峰など、スペインとフランスの国境をなす稜線には標高2,000mを超す山々が連なっている[9]。ピレネー山脈はバスク山脈(カンタブリア山脈東部)に接続しており、バスク山脈はナバーラ州とギプスコア県、ギプスコア県とアラバ県、アラバ県とビスカヤ県の境界を東西に伸びている[9]。バスク山脈の主要な山には、アンディア山地、ウルバサ山地、1,427mのアララール山地、1,551mのアイスコリ山、1,361mのアンボト岩山、1,537mのゴルベア山地などがある[9]。フランス側は山地の標高が低く、923mのアルツァメンディ山、678mのウルスヤ山などがある[9]。 フランス領バスクではアドゥール川とニヴェル川の2河川がビスケー湾のコスタ・バスカ(バスク海岸)に流れ込んでいる[9]。スールの中央部を南北に流れるセゾン川はソーヴテール=ド=ベアム(フランス語版
山地
水文
ナバーラ州内に水源を持つビダソア川は下流部の数キロでスペイン=フランスの自然的国境となり、河口部にはイルンやオンダリビア(いずれもスペイン)とアンダイエ(フランス)などが国境を跨いだチングディ湾都市圏を形成する。スペイン・バスクにはアドゥール川に匹敵する河川はないが、河口にサン・セバスティアンを形成するウルメア川、オリア川、デバ川、自然保護区のウルダイバイ河口(ゲルニカ川)、河口にビルバオを形成するネルビオン川などがビスケー湾に注いでいる[9]。ピレネー山脈やバスク山脈はおおまかに大西洋と地中海の分水嶺となっており、ナバーラ州やアラバ県を流れる河川の多くはやがてエブロ川となって地中海に注ぐ。この分水嶺はバスク語の言語境界線とも似通っており、山脈以南ではバスク語話者の比率が低い。ナバーラ州東部にはアラゴン川、中央部にはパンプローナを流れるアルガ川、西部にはエステーリャを流れるエガ川があり、アラバ県にはビトリア=ガステイスを流れるサドーラ川がある。ナバーラ州とアラバ県にありながら河川が大西洋に注ぐ地域は、両地域の北端部などに限られる。
コスタ・バスカはリアス式海岸が連続しており、高い崖や奥まった入江を持つ天然の良港を抱える[11]。コスタ・バスカに砂浜海岸は少なく[9]、アンダイエ、サン=ジャン=ド=リュズ、サン・セバスティアンなどに限られている。ビスケー湾沿岸のビアリッツやサン・セバスティアンは、それぞれ19世紀以後にフランス王侯貴族やスペイン王侯貴族の保養地となった。 バスク地方の湾岸部は西岸海洋性気候(Cfb)であり、内陸部は大陸性気候に属している[12]。イベリア半島内でもっとも降水量が多い地域だが[13]、南部は石灰質土壌のために保水力が弱い[9]。東部のピレネー山脈の稜線部では降雪量が多く[9]、平地でも降雪や厳寒がみられるが[13]、標高150m以下ではほとんど降雪はない[9]。山間部はトドマツ、ブナ、モミが主体の亜高山帯であり、南部はヨーロッパアカマツ、ツゲ、セイヨウヒイラギが顕著であり、北部はヨーロッパナラ、セイヨウトネリコなどの大西洋岸種や、ギョリュウ、イチゴノキなど半島北東部種が支配的である[9]。
気候・植生
ビアリッツの砂浜海岸