バウンティ号の反乱
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航海中にブライは航海長のジョン・フライアを降格し、航海士(上級准士官)の1人フレッチャー・クリスチャンを海尉心得に抜擢している。

1789年4月までパンノキやその他の植物を搭載するためにタヒチ島に滞在し、その期間中、クリスチャンはタヒチの女性と結婚し、多くの船員も現地生活を楽しんだ。3人の船員が脱走の罪で逮捕され、鞭打ち刑を受けた。
反乱バウンティ号とその乗組員の辿った航跡

1789年4月4日にタヒチ島を出航し、喜望峰経由で西インド諸島を目指すため西に向かったが、4月28日トンガフレンドリー諸島で反乱が起きた。途中の死亡者を除き、当時の乗組員44人のうち反乱者はクリスチャン以下12人だった。ブライ艦長以下19人は救命艇に乗せられて追放され、非反乱者のうち13人は船に残された。

ブライの指揮する救命艇は、41日かけてニューギニア島オーストラリア大陸の間の難所トレス海峡を通り、ティモール島にたどり着いた。

一方、反乱者を乗せたバウンティ号は トゥブアイ諸島に3ヶ月滞在したが、その後タヒチ島へ向かった。16人の船員がタヒチ島に残り、クリスチャンと8人の反乱者はタヒチ島の現地人(男6人、女11人、赤子1人)を乗せて、フィジークック諸島を経て、1790年1月15日にイギリスの海図に載っていないピトケアン島にたどり着いた。クリスチャンらはバウンティ号を解体し、その資材を利用して島での生活を始めた。

なお、タヒチ人の中には自ら志願してバウンティ号に乗り込んだ者のほかに、誘拐同然に連れ去られた者もいた。
反乱の鎮圧

1790年3月15日にブライたちはイギリスに戻り、反乱を報告した。1790年11月にフリゲート艦パンドラ号エドワード・エドワーズ艦長)がバウンティ号の捜索のために出航した。1791年3月にパンドラ号はタヒチ島に到着し、14人の元バウンティ号乗組員(大部分は非反乱者)を逮捕、ブライよりもはるかに過酷な取り扱いをした。パンドラ号はその後もバウンティ号の捜索を続けたが、8月30日にグレート・バリア・リーフの近くで、暗礁に乗り上げ沈没し、ピトケアン諸島に渡った反乱者たちを見つけることはできなかった。この沈没で31人の船員と4人の囚人が死に、残った89人の船員と10人の囚人が、1792年にイギリスに戻った。10人のうち、4人が無罪、2人が有罪だが恩赦、1人が法的手続の問題で釈放され、3人が絞首刑になった。

ブライも軍法会議にかけられたが、無罪となり、職務に復帰した。彼の経歴は傷つかず、すぐに別の船プロビデンス号の艦長として、1791年に同様の任務を行い、無事成功した。しかし後に、総督として赴任したオーストラリアで現地の有力者と対立し、配下の治安部隊に反乱を起こされ軟禁されてしまう事件(ラム酒の反乱)を引き起こす。2度目の反乱勃発とあってはさすがに擁護もされず、有罪こそ免れたものの退役同然の扱いとなり、後に提督(中将)にまで昇進はするものの、事件以後は逼塞状態で余生を過ごした。
原因

反乱の原因は諸説ありはっきりしていない。ブライ艦長は部下の扱いが苛酷で人望がなかったとも言われるが、彼の行った処罰は当時の平均と比べて厳しくはなかったという見方もある。パンノキ輸送のために船員の居住空間が犠牲にされたので、航海中の生活環境は劣悪であったが、タヒチ島では快適な暮らしを送ったため、船員の不満が起こりやすかったことも原因の1つと考えられている。

また、反乱が成功した要因としては、クリスチャンが多くの船員の人望を得ていたこと、上級士官の数が少なかったこと、海兵隊を乗船させていなかったことが挙げられる。ブライはその後の航海で、上級士官数を増やし海兵隊員を乗せている。
その後のピトケアン諸島

1808年1月にアメリカ船トパーズ号がピトケアン諸島にやってきた時、バウンティ号の乗組員は水夫ジョン・アダムスのみが唯一生き残っていた。トパーズ号のメイヒュー・フォルジャー船長はクリスチャンの息子サースディ・オクトバー・クリスチャンの案内で、アダムスのほかに子供二十数名、ポリネシア人女性10名がピトケアン島で暮らしていることを知った。その他の反乱者はタヒチ人との衝突で大半が相打ちとなり、数少ない生存者も病気、自殺、喧嘩などにより既に死亡し、生き残ったのはアダムスと女性や子供だけであった。クリスチャンも衝突で殺されたと言われている(アダムスは恩赦となり、1829年に島で死亡した)。

1838年、ピトケアン諸島はイギリス領となって、現在まで続いている。バウンティ号が解体された場所はバウンティ湾と名づけられ、現在でもその残骸が残っている。1831年に300人近くの人口に増えるが小さな島で食料や土地問題を抱えたのでイギリス政府は一時、島民をタヒチ島に移住させた。


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