この映画のナレーションは、アフガニスタン戦争とイラク戦争に従軍した架空の退役軍人であるカートによって行われる。
1963年のこと。ディック・チェイニーはアルコール依存症のためイェール大学を中退した後、ワイオミング州で架線工夫として働いている。チェイニーが飲酒運転で交通警官に止められると、妻のリンは、自分の人生をやり直すように強く言い、さもなければ別れると言う。
1969年、チェイニーはニクソン政権下のホワイトハウスでインターンとして仕事に就く。ニクソン大統領の経済顧問ドナルド・ラムズフェルドの下で働きながら、チェイニーは妻と2人の娘、リズとメアリーとの約束をこなしながら、物事に精通した政治工作員となっていく。チェイニーはヘンリー・キッシンジャーがリチャード・ニクソン大統領とカンボジアへの秘密爆撃について話し合っているのを耳にし、行政府の真の力を見せつけられる。ラムズフェルドの攻撃的な態度は、ラムズフェルドとチェイニーをニクソンから遠ざけることにつながり、ウォーターゲート事件には関与しなかった2人にとって有利に働く。ニクソン大統領辞任後、チェイニーはジェラルド・フォード大統領の首席補佐官に昇進し、ラムズフェルドは国防長官に就任する。メディアは後にこの突然の閣僚級の異動を「ハロウィーンの大虐殺」と名付ける。首席補佐官在任中、若きアントニン・スカリア(のちの連邦最高裁判事)がチェイニーに「一元的行政府理論」(注:大統領が憲法第2条により連邦政府の各省庁全てを一元的に掌握、指示を出来るとするトップダウンによる独裁的政治を可能とする理論)を紹介する。
フォード大統領が1976年の大統領選挙で負けると、チェイニーはワイオミング州から連邦下院議員に立候補する。ぎこちなくカリスマ性の無い選挙演説を行った後、チェイニーは初めての心臓発作を起こす。夫が療養する間、リンは夫に代わって選挙運動を行い、そのお陰でチェイニーは当選する。レーガン政権時代、チェイニーは化石燃料産業に有利となる多くの保守的で企業寄りの政策を支持し、連邦通信委員会の公平原則の廃止も支持した。これがFOXニュースや保守系トークラジオの台頭、そして米国における政党の二極化の昂進につながった。チェイニーは次に湾岸戦争中にジョージ・H・W・ブッシュ大統領の下で国防長官を務める。政治以外のことでは、チェイニーとリンは、レズビアンであるとカミングアウトした次女メアリーのことを受け入れるようになる。チェイニーは大統領に立候補するという野心を抱くようになるが、世論の支持が盛り上がらないこととメアリーをメディアの標的にしないために公の場から引退することを決意する。
チェイニーはハリバートン社のCEOとなり、妻はゴールデンレトリバーを飼育し、本を執筆する。映画は皮肉たっぷりの偽エピローグとなり、チェイニーが残りの人生を公の場でないところで健康で幸せに過ごしたと語られ、エンドクレジットが流れ始めるが、それは突然打ち切られる。
チェイニーは、2000年の米国大統領選挙でジョージ・W・ブッシュの副大統領候補になるよう要請される。ブッシュは自ら権力を掌握するよりも父親を喜ばせることに興味があるという印象を持ちつつ、チェイニーは、ブッシュが行政上の責任を彼に委任し、同性愛者の権利拡大に反対する共和党の姿勢にチェイニーを巻き込むことを避けるという条件で同意する。チェイニーは副大統領として、ラムズフェルド国防長官、デイヴィッド・アディントン法律顧問、メアリー・マタリン、スクーター・リビー首席補佐官らと協力し、主要な外交政策と国防に関する決定を管轄する。
2001年9月11日のテロ攻撃を受け、チェイニーとラムズフェルドは、アフガニスタンとイラクへの米国の侵攻を開始・指揮するために策動する。他にも副大統領時代の様々な出来事が描かれており、その中には一元的行政府理論への支持、プレイム事件、ハリー・ウィッティントン銃乱射事件、同性婚を巡る娘2人の間の緊張などが含まれる。チェイニーの行動は数十万人の死者とイラクのイスラム国(IS)の台頭につながったことが示され、その結果、ブッシュ政権の終わりまでにチェイニーの支持率は記録的な低さとなった。
再び心臓発作を起こしたチェイニーが死の床で家族に別れを告げるナレーションをしている最中、カートは車に轢かれて死亡する。 彼の健康な心臓はチェイニーに移植される。数か月後、落選に終わったワイオミング州からの連邦上院議員選挙の運動中の娘のリズが同性婚に反対すると表明した時、チェイニーは反対しなかった。これにメアリーは怒り、家族から距離を置くことになる。2年後、リズは嘗て父親が保持していた連邦下院議員の座を獲得する。インタビュー番組の収録中に、質問を受けて激怒したチェイニーは「第四の壁」を破り、聴衆に対して独白を行い、自分のキャリアの中で行ったことに何一つ後悔していないと宣言する。
エンドクレジットの中ほどで、この映画を評価するフォーカスグループのメンバーの中には、この映画の効果やドナルド・トランプ政権について激論を交わすメンバーもいる一方で、それらの話題には興味を示さず、むしろ最新作『ワイルド・スピード』について議論したいメンバーもいる。 ※括弧内は日本語吹替[7]
キャスト
ディック・チェイニー - クリスチャン・ベール(宮内敦士)
17歳のディック・チェイニー - アレックス・マクニコル
12歳のディック・チェイニー - エイダン・ゲイル
リン・チェイニー - エイミー・アダムス(中村千絵)
17歳のリン・チェイニー - ケイリー・スピーニー
12歳のリン・チェイニー - カロリーナ・ケネディ・デュレンス