世界で最も古くに誕生した[29]古代湖でもある[6][23][20](ザイサン湖は6000万年以上前に誕生したのではないかという説もある)。一般的な湖沼は流入し堆積する土砂
などによって数万年もすれば埋まってしまい姿を消す。しかしバイカル湖は、インド亜大陸がユーラシア大陸に食い込み[30]、これを北東と南西を結ぶ線で引き裂くユーラシアプレートとアムールプレートの境界に当たる[31]地溝(バイカルリフト)の陥没部にあり[6]、現在でも年に幅2 cm、深さ6 mmずつ広がっている[23]ため、長大な時間を経ても湖であり続けている[7]。この沈降によって将来バイカル湖は再び北極海と繋がるという説もある[32][33]。湖の周辺には古くからブリヤート人が居住している[34][35]。彼らは出土した弓の形式などからスキタイとの関係が示唆されていた[36]が、11-12世紀頃にはモンゴル族の影響を強く受け[37]、次第にモンゴル化されていった。バイカル湖のシャーマン岩(オリホン島)の頂には釜と五徳があり、これらはチンギス・カンに縁付くものという逸話も残されている[38]。
17世紀中頃、帝政ロシアがバイカル湖周辺へ進出し[39]、1628-1658年頃に周辺を支配下に置いた[40]。最初にバイカル湖に到達したロシア人は1643年のクーバット・イワノフ(英語版、ロシア語版)と言われる[41]。
シベリア鉄道は1904年に完成した。しかしバイカル湖周辺は敷設が難しい箇所が多かったため、開通時には一部の軌道を氷の上に敷いて間に合わせていた[42]。1920年1?2月には赤軍に追われた白軍とその家族らが大シベリア冬季行軍(英語版、ロシア語版)として知られるようになった逃避行で、凍結したバイカル湖を渡って逃げる際に厳寒の風に襲われてほぼ全員が亡くなり、春になって遺体はバイカル湖の湖底へと沈んだ。
1904年、日露戦争開戦時に戸水寛人は「七博士意見書」を提出し、ロシア帝国へ武力侵攻しバイカル湖以東の東シベリア占領を強硬に主張し、バイカル博士と渾名される。日露戦争末期の1905年にバイカル湖以東を日本に割譲することを講和条件とするよう主張する[43]。
1991年にソ連が崩壊し、また1997年に世界遺産へ登録されてからは、諸外国からも訪問が容易となった。特殊な生物層や景勝、またブリヤートなど多様な諸文化に触れることができるため、観光客も増加した[32]。湖および周辺には天然ガスなど豊富な地下資源があり、またブリヤート共和国の経済成長などを目指す開発が志向されているが、これらが及ぼす環境負荷の懸念も高い[32]。 バイカル湖は寒冷で栄養素に乏しいにもかかわらず[44]、世界屈指の生物多様性を持つ場所である[13]。チョウザメ、オームリ(バイカル・オームリ[4])や、サケ科などの魚類、バイカルアザラシ(サイマー湖、ラドガ湖のワモンアザラシは海水と淡水の両方に生息するため、淡水のみに生息する種としてはアザラシ科では唯一。)など約355属1334種が生息する[23]。うち1017種は固有種であり、全体の70%[23]、生物量では80-90%が相当する[45][出典無効]。鳥類も、2種の固有種が存在する[46]。本格的な調査は1980年代後期に始まったばかりであり、未確認の固有種も少なくないと予想される。 ヨコエビ類の端脚類が適応放散で多数の種になっていることが知られ、淡水産の種が全世界で1000種ほどあるうちのほぼ四分の一にあたる259種が棲み、その中の98%が固有種に当たる[23]。カジカなど魚類は29種がおり、このうち27種が固有種である[23]。ほとんどの種は海から孤立した際に取り残された海生生物
生態系
豊富な固有種
バイカルアザラシも海生から淡水に順応したもので、その起源には2つの説がある。一つは1000-1200万年前に南西ヨーロッパから続くパラテチス海盆を辿って棲み付いたものがその後に陸封されて適応したとするもの。もう一つは250-300万年前に地球が温暖化した影響から北極海が北緯61度程度まで海進したと考えられ、その時にアザラシの亜種が分布したという説である[47][48]。
微生物(原生生物)の中にも固有種がおり、ペリディウム、ギムノディニウム、アステリオネラ、タベラリアなどは水質を浄化させる[47][49]。バクテリア・プランクトンはバイカル湖の透明性に寄与している可能性が指摘されるが、そのメカニズム解明には至っていない[47]。 バイカル湖の周辺は針葉樹の森林が広がる[6]。湖底の花粉調査から、1万8千年前頃にはヤナギ属が繁殖し、続いてハンノキ属、カバノキ属の卓越が見られた後、約1万年前頃からマツ属の針葉樹が広がるようになったことが分かる[6]。花の種類も多く、キルシウム・パルストレ 近年では周辺にある製紙工場からの工業排水流入や、森林への殺虫剤散布の影響による水質汚染が顕著化しており、バイカル湖固有種の中には絶滅に瀕しているものもある。
周辺植生
水質汚染