バイオディーゼル
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軽油と混合される前のFAMEについては、FAMEやNEATFAME混合軽油を製造するにあたっての品質の目安として、軽油と一定割合(5%)で混合することを前提とした標準化が任意規格によりなされている。また、品質確保法による規制は、石油製品は消費者が見た目で品質の適否を判断することができないために設けられたものであることから、例えば消費者が自ら法に定められた基準以上のバイオディーゼル燃料を軽油に混和したとしても、それは自己責任でなされたものであり、同法による規制の対象とはならない。
税金について

バイオディーゼル燃料を軽油等と混和して販売したり、自動車の使用者自らがバイオディーゼル燃料を購入又は製造して軽油等と混和して使用する場合、軽油引取税の課税対象となる[12]

バイオディーゼル燃料を、現行の日本の税法に抵触することなく非課税で自動車に使用するには、軽油等を混和させずに100%バイオディーゼル燃料でエンジンを作動させる必要がある。この場合、軽油とバイオディーゼル燃料の両方を使用可能な車両では、燃料タンクを分離させ、エンジンへの配管途中で弁による切り替えを可能として、燃料の混合を防止させなければならない。
地球温暖化対策との関連について

気候変動枠組条約に基づき地球温暖化防止のため策定された京都議定書では、生物由来となる燃料については二酸化炭素の排出量が計上されないこととなっている。すなわち、化石燃料を燃焼させることは、それに含まれる炭素を二酸化炭素として大気中に新たに追加させることになるが、バイオディーゼルは原料となる生物が成長過程で光合成により大気中の二酸化炭素を吸収していることから、その生物から作られる燃料を燃焼させても元来大気内に存在した以上の二酸化炭素を発生させることはない(カーボンニュートラル)という考え方である。これによれば、バイオディーゼル燃料は太陽光や風力などと同じく、再生可能エネルギーに位置づけられることとなる。

他方、上述・通商産業省の審議会では、原料として日本が大量に輸入することになるパーム椰子の原産国であるマレーシアインドネシアにおいて、ヤシ畑開発のために森林破壊が進行してしまう(環境破壊を進行させてしまう)懸念が指摘されている ⇒[2]

また、ブラジルなどではより収益率の高いバイオ燃料生産のためオレンジ生産などが転換され、それによる果実、穀物の供給不足、高騰が起こり、バイオマスエタノールでの事例と同様に食料を燃料として消費する事に対する疑念、批判も起こっている。
排ガスへの影響について

米国環境保護局(U.S. EPA)の調査によると、軽油中のFAME混合率を高めると、ディーゼルエンジン排ガス中の粒子状物質(PM)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)は減少するが、窒素酸化物(NOx)は増加すると報告されている[13]。NOxが増加するのは、バイオディーゼルには軽油と比較して多くの酸素が含まれており、燃焼するとき吸気中の窒素とより容易に結合することが原因であると考えられている[14]

一方、環境省の中央環境審議会答申によると、FAMEを使用した場合の排出ガス性能に与える影響について以下のようにとりまとめられている[15]

FAMEについてのこれまでの調査により、FAMEを軽油に添加すると、触媒を装着していない場合には、軽油のみを使用した場合に比べ、PM中のSOF(燃料や潤滑油の未燃焼分からなる有機化合物)が増加する。また、NOx、一酸化炭素(CO)がわずかながら増加する場合があり、さらに、未規制のアルデヒド類やベンゼン類も増加する傾向がみられたが、酸化能力の高い触媒を装着することにより、増加していたこれらの排出ガス成分を低減できることが示された。ただし、これまでの調査結果のみでは、FAMEの添加割合に応じたガスへの影響等が定量的に明確にはされていない。

このことから、FAMEを軽油の代替として又は軽油に添加して使用する場合には、酸化能力の高い触媒を装着する必要があり、その旨を徹底することが適切である。しかし、現在までの調査結果によると、FAMEの軽油への添加量の上限値等、FAMEに係る燃料許容限度目標値を設定することは困難である。

使用事例バイオディーゼル燃料を使用するごみ収集車

京都市など一部の自治体は、車両改造や定期的なメンテナンスを行うなどの対策を講じた上で、ゴミ収集車や市バスなどの燃料としてバイオディーゼル燃料を使用している。

2004年から、愛知県東栄町で、町内で発生した廃食用油から作ったバイオディーゼルを、公用車に使用している。

2005年から、千葉県いすみ鉄道で、気動車の燃料に植物油を混ぜて使用する試験が行われている。試験では軽油に5%の植物油を混入して性能試験が行われた。

2007年のダカール・ラリーには、元F1レーサーの片山右京が廃食用油由来の100%バイオディーゼル燃料を使用したトヨタ・ランドクルーザー100で史上初参戦、総合68位で完走した。2008年大会にはトヨタ車体・チームランドクルーザーが廃食用油を混合したバイオディーゼルで参戦を予定していたが、2008年大会は中止になった。2011年は100%バイオディーゼル燃料で参戦する事が発表、見事9000km完走を果たした[16]

2007年夏より3年間、宮城県塩竈市の市営渡船の燃料を軽油からバイオディーゼル燃料に切り替える導入試験を行う予定。農林水産省の補助事業で水産工学研究所が行う。

2008年から、兵庫県の北条鉄道で、バイオディーゼルで気動車を走行させる試験が行われる。

路線バスでの使用例

近江鉄道バス・江若交通がびわこ横断エコバスに使用。

京都市交通局 - 京都市営バス

東京都交通局 - 都営バス

十勝バス自衛隊・稲田線, 北海道拓殖バス一中・療養所線

阪急バス ‐ 2007年12月、大阪府内の遊休農地で栽培された菜種を原料としたバイオディーゼル燃料を、府内4営業所の路線バス96台で10日間使用(混合率5%以下)した[17]。また、2008年12月から豊中病院線で使用される車両1台を100%バイオディーゼル燃料(営業所食堂およびや阪急阪神第一ホテルグループの一部ホテルからの廃油を精製)で運転していた[18]。また、2020年12月に豊中営業所を移転し開設された大阪営業所には社員食堂や阪急阪神東宝グループの給食施設・マンション入居者から集めた使用済み食用を精製したBDFを使う発電機(ヤンマー製)を設置している[19]

山梨交通 - 国際興業グループ(2014年まで)のバス会社。グループのホテル等から出る廃食用油から ⇒精製 し、バスに利用している。

宇部市総合政策部企画課 - 宇部市総合政策部企画課が主体となり宇部市代替バス(コミュニティーバス)の運行を行っており、2008年(平成20年)3月より燃料を食料廃油から生成したバイオディーゼル燃料のみで運行している。定期路線バスの燃料に100%バイオディーゼル燃料を用いるのは全国初の試み[20]

サンクスネイチャーバス - 東京都目黒区自由が丘周辺を走るコミュニティーバスで、1997年から運行開始。VDF(Vegetable Diesel Fuel)という代替燃料を使用している[21][22]

かつて、日本テレビのテレビ番組『ザ!鉄腕!DASH!!』のコーナーにおいて、天ぷらの飾りを付けバイオディーゼルを燃料とした自動車を走行させる実験が行われた。


主な製造技術

油脂は粘度が高いなどの特徴を有しており、そのままディーゼル自動車用の燃料として使用した場合、噴射ポンプや噴射ノズルに析出物が付着して不具合が発生することが懸念される。このため、化学処理を施して原料油脂からグリセリンを取り除くことで、油脂を脂肪酸メチルエステル(Fatty Acid Methyl Esterの頭文字をとってFAMEと略される)等の軽油に近い物性に変換したものがディーゼル自動車用燃料として使用されている。

主な製造技術には、下記の方法がある[23]

均相アルカリ法

金属酸化物法

固定化酵素法

超臨界アルコール法

イオン交換触媒法

水素化分解

均相アルカリ法

均相アルカリ法は[24] アルカリ溶液法とも呼ばれ[25] 比較的小型な装置でも製造を行うことができることから、一定の化学の知識があれば個人や小規模な団体でもバイオディーゼル燃料を製造することは可能である。


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