サウンド的には、歪んだギター・サウンド(ディストーション・サウンド)と直情径行のラウドな音量だった。具体的に表現するなら、チョーキングとアーミングの使用である。ただ、チョーキングとアーミングを使い出したのは、何もハードロックが最初ではない。例えばチャック・ベリーやアルバート・キング[注 15]らはチョーキングを使い、ベンチャーズはアーミングを多用した。
1968年には、ジェフ・ベック・グループ、レッド・ツェッペリンがデビューした。1970年には、後にヘヴィメタルの代表的存在となるブラック・サバスがデビューした。3枚目ぐらいから、ディープ・パープルがハードロックに転向。ディープ・パープルのアルバム『マシーンヘッド』(1972)には、「ハイウェイ・スター」「スモーク・オン・ザ・ウォーター」の有名曲が収録されていた[7]。クイーンも、73年から75年ごろまでは、ハードロック・サウンドが主体だった。1973年には、グラム・ロックの影響の見られる女性ロッカースージー・クアトロがデビューした。他にも、ホークウィンド、スレイド、スウィートらが活躍した。このころには、ハードロックが欧米中心にブームとなった。
アメリカでは、1970年代にはブルー・オイスター・カルトや、アリス・クーパー、カクタス[8]、ジェイムス・ギャング、リック・デリンジャー、モントローズらが活躍した。カナダのゲス・フーの『アメリカン・ウーマン』(1970)も、ハードなヒット曲だった。
エアロスミス[注 16]、キッス[注 17]、クイーン[注 18]は、70年代前半にはすでにデビューしていたが、人気が出てきたのは、70年代後半だった。シン・リジィやナザレスはUSチャートでヒットを出し、アメリカ進出に成功した。ZZトップやレーナード・スキナードなどサザン・ロック・バンドも、ハード・ロック的な音を出していた。一方でジャーニー、ボストン、フォリナー、TOTO、スティクスなどは、”産業ロック”[注 19]というカテゴリーに含まれた。スティックスはハードロックというよりも、ポップなプログレッシヴにジャンル分けするのが妥当である。70年代後半にはパンク・ニューウェイブが一大ブームとなり、ハードロックの人気は下降した。当時の人気バンドとしては、ジューダス・プリースト、レインボー(ブラックモアズ・レインボー)がいた。英米以外の国では、カナダのマホガニー・ラッシュ、オーストラリアのAC/DC、ドイツのスコーピオンズ、オランダのゴールデン・イアリングらが活躍した。ソロ・ギタリストではロイ・ブキャナン、パット・トラヴァース”[注 20]という、ロビン・トロワー”[注 21]というらがいた。日本のハード・ロックでは、カルメン・マキ&OZ、紫、コンディション・グリーン、クリエイション(元のブルース・クリエイション)、VOWWOWらがシーンを盛り上げた。
1980年代前半になると、ツインギターを売り物にしたナイト・レンジャーがデビュー。ポップ性とハード性を兼ね備えたボン・ジョヴィがヒットを出し、アメリカン・ハードロックが注目された。ヴァン・ヘイレンがアルバム『1984』でシンセサイザーを使用し、シングル曲「ジャンプ」が大ヒット。続いてラットやモトリー・クルー、ドッケン、ポイズンなど、ロサンゼルス出身のハードロックバンドが続々とデビューし、ロサンゼルス以外のアメリカ出身であるシンデレラなども併せてLAメタルと呼んだ。一方で、デフ・レパードやホワイトスネイクなど、イギリス系のアーティストも上記のバンド同様にアメリカでヒットを出し、ハードロック・ヘヴィメタルが復権した。
1980年代中頃になると、さらにアメリカから、アンスラックスやメタリカのような、これまでとは違うスピード感と重圧感を売りにしたスラッシュメタルがブレイクした。1980年代後半からは、ハードロックバンド、ガンズ・アンド・ローゼズがヒットを連発した。この頃、テスラやドッケン等、次々にアコースティックの楽曲を取り入れたバンドが続出した。
イギリス勢からは79年ごろから、アイアン・メイデンらのNWOBHM(ニュー・ウェイブ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィ・メタル)が登場した。後年、ドイツではハロウィンらのスピードメタルが、北ヨーロッパからは北欧メタルが出現した。
ジミー・ペイジ[注 22]はレス・ポールのギターを主に使用したが、ファースト・アルバムではテレキャスターを使用していた。リッチー・ブラックモアは、ハードロック期からはずっとフェンダー・ストラトキャスターを使用した。1960年代当時トランジスタはやっと実用化レベルに達したばかりで、今日のような歪み率の低い電気特性の優秀なアンプ(アンプリファイア)は存在しなかった。トランジスタ以前の電気増幅素子は真空管であった。トランジスタに比較して、真空管は与えられた入力の音響特性を変えずに増幅出来る帯域が非常に狹い。しかも、真空管アンプは価格が高額である。だが、暖かみのある独特の音質から需要が存在し続けている。
多くの聴衆に音を聴かせる必要性が増してきたことから、PAシステムと共に楽器用アンプも大出力のものが求められるようになっていった。この要求に応えるべくヴォックス、フェンダー、マーシャル、オレンジなど各社が大出力のアンプをこぞって造し出したが、先述の通りそもそも大音量再生には無理がある真空管で半ば強引に高出力のものを作っていたので、少し音量を上げると非常によく歪んだ[注 23]。
派生ジャンル
アメリカン・プログレ・ハード[注 24]
エクストリーム・メタル
NWOBHM[注 25]
LAメタル
グラム・メタル[注 26]
ゴシック・メタル
ジャーマン・メタル
ショック・ロック[9](アリス・クーパーなど)
シンフォニック・メタル
ストーナーロック
メロディックスピードメタル(メロディックパワーメタル)
スラッシュ・メタル
デス・メタル
ドゥーム・メタル
ネオクラシカルメタル
ヘヴィメタル
パワー・メタル
フォーク・メタル(民俗音楽メタル)/ヴァイキング・メタル