ハンナ・アーレント
□記事を途中から表示しています
[最初から表示]
ヨナスに対して、「このネズミは自分と同じようにひとりぼっちなの」と語った[35]。
1948年にメナヘム・ベギン(当時は建国まもないイスラエルの右派ヘルート党(のちリクード)の党首)が訪米した際には、アルベルト・アインシュタインらとともに名を連ね、党の姿勢を批判する書簡を『ニューヨーク・タイムズ』に送っている。
アメリカに亡命したユダヤ人歴史家のラウル・ヒルバーグは、自伝[36]の中で、アーレントを批判している。それによると、彼の書いた「ヨーロッパ・ユダヤ人の絶滅」を、彼女はプリンストン大学の依頼で査読したが、否定的な評価を送った。結局同大での出版は見送られたが、後にアーレントは『エルサレムのアイヒマン」で、彼の著作内容に大きく頼った論述を展開した。だが、初版では脚注にそのことは示されなかった(ただし、第2版で示された)。彼女は、ヤスパースやクラウス・ピーパーに対しても、当の著作の第一章に関する否定的な意見を手紙で書き送った。
著作(日本語訳)
単著
『革命について』(志水速雄訳、合同出版、1968年/中央公論社、1975年/ちくま学芸文庫、1995年)
『革命論』(森一郎訳、みすず書房、2022年)。ドイツ語版を底本とする訳書
『イェルサレムのアイヒマン――悪の陳腐さについての報告』(大久保和郎訳、みすず書房、1969年、新装版1994年、新訂版『エルサレムのアイヒマン――悪の陳腐さについての報告』2017年)
『過去と未来の間に(1) 歴史の意味』、『―(2) 文化の危機』(志水速雄訳、合同出版、1970年)
新訳版『過去と未来の間?政治思想への8試論』(引田隆也・齋藤純一訳、みすず書房、1994年、新装版2011年)
『暗い時代の人々』(阿部斉訳、河出書房新社、1972年、改訂版1995年/ちくま学芸文庫、2005年)
『全体主義の起源 (全3巻)』(大島通義・大島かおり・大久保和郎訳、みすず書房、1972-74年、新装版1981年、2017年)
『暴力について』(高野フミ訳、みすず書房、1973年)
新訳版 『暴力について』(山田正行訳、みすず書房〈みすずライブラリー〉、2000年)
『人間の条件』(志水速雄訳、中央公論社、1973年/ちくま学芸文庫、1994年)、英語版
『活動的生』(森一郎訳、みすず書房、2015年)。ドイツ語版を底本とする訳書
『人間の条件』(牧野雅彦訳、講談社学術文庫、2023年)。同上
『カント政治哲学の講義』(ロナルド・ベイナー編、浜田義文監訳、法政大学出版局〈叢書・ウニベルシタス〉、1987年、新装版2009年)
『完訳 カント政治哲学講義録』(仲正昌樹訳、浜野喬士編訳、明月堂書店、2009年)
『パーリアとしてのユダヤ人』(寺島俊穂・藤原隆裕宜訳、未來社、1989年)
『精神の生活(上) 思考』、『―(下) 意志』[37](佐藤和夫訳、岩波書店、1994年)
『ラーエル・ファルンハーゲン―ドイツ・ロマン派のあるユダヤ女性の伝記』(大島かおり訳、みすず書房、1999年、新版2021年)
別訳『ラーヘル・ファルンハーゲン―あるドイツ・ユダヤ女性の生涯』(寺島俊穂訳、未來社、1985年)
『アーレント政治思想集成 1 組織的な罪と普遍的な責任』、齋藤純一・矢野久美子・山田正行訳
『― 2 理解と政治』(ジェローム・コーン編、みすず書房、2002年)
『暗い時代の人間性について』(仲正昌樹訳、情況出版、2002年)
『アウグスティヌスの愛の概念』(千葉眞訳、みすず書房、2002年、新装版〈始まりの本〉、2012年、新版2021年)
『カール・マルクスと西欧政治思想の伝統』(佐藤和夫編、大月書店、2002年)
『政治とは何か』(ウルズラ・ルッツ編、佐藤和夫訳、岩波書店、2004年)
『思索日記(1) 1950-1953』、『―(2) 1953-1973』、ウルズラ・ルッツ、インゲボルク・ノルトマン編
(青木隆嘉訳、法政大学出版局〈叢書・ウニベルシタス〉、2006年、新装版2017年)
『責任と判断』(ジェローム・コーン編、中山元訳、筑摩書房、2007年/ちくま学芸文庫、2016年)
『政治の約束』(ジェローム・コーン編、高橋勇夫訳、筑摩書房、2008年/ちくま学芸文庫、2018年)
『ユダヤ論集(1) 反ユダヤ主義』(コーン/フェルドマン編、矢野久美子ほか訳、みすず書房、2013年)
『ユダヤ論集(2) アイヒマン論争』(コーン/フェルドマン編、矢野久美子ほか訳、みすず書房、2013年)
共著
メアリー・マッカーシー『アーレント=マッカーシー往復書簡――知的生活のスカウトたち』(キャロル・ブライトマン編、佐藤佐智子訳、法政大学出版局〈叢書・ウニベルシタス〉、1999年)
マルティン・ハイデガー『アーレント=ハイデガー往復書簡――1925-1975』(ウルズラ・ルッツ編、みすず書房、2003年、新装版2018年)
カール・ヤスパース『アーレント=ヤスパース往復書簡――1926-1969 (1・2・3)』(ハンス・ザーナー、ロッテ・ケーラー編、みすず書房、2004年)
ハインリヒ・ブリュッヒャー『アーレント=ブリュッヒャー往復書簡――1936-1968』(ロッテ・ケーラー編、みすず書房、2014年)
ゲルショム・ショーレム『アーレント=ショーレム往復書簡』(マリー・ルイーズ・クノット編、岩波書店、2019年)
映画
『ハンナ・アーレント』マルガレーテ・フォン・トロッタ監督。2013年10月岩波ホール、2014年8月DVD。
受賞・記念
1967年 ジークムント・フロイト賞
1975年 リッピンコット賞
小惑星100027「ハンナ・アーレント」は彼女に敬意を表して命名された。
参考文献
矢野久美子『ハンナ・アーレント「戦争の世紀」を生きた政治哲学者』中公新書、2014年
アーレント, ハンナ 齋藤純一、引田隆也訳 (1994), 過去と未来の間――政治思想への8試論 (原著1968), みすず書房
アーレント, ハンナ 大久保和郎、大島かおり訳 (2017), 全体主義の起原 3 (原著英語版1951,ドイツ語版1955), みすず書房
アーレント, ハンナ 森一郎訳 (2022), 革命論 (原著英語版1963,ドイツ語版1965), みすず書房
豊泉清浩「ヤスパースの全体主義批判における人間の尊厳について:ハンナ・アーレント『全体主義の起源』との関連において」文教大学教育学部紀要53,p 253-270, 2019.
関連文献
マーガレット・カノヴァン『アレント・政治思想の再解釈』(寺島俊穂・伊藤洋典訳、未來社、2004年)
エリザベス・ヤング=ブルーエル『ハンナ・アーレント伝』(荒川幾男ほか3名訳、晶文社、1999年)
マルティーヌ・レイボヴィッチ『ユダヤ女 ハンナ・アーレント』(合田正人訳、法政大学出版局〈叢書・ウニベルシタス〉、2008年)
ケン・クリムスティーン『ハンナ・アーレント、三つの逃亡』(百木漠訳、みすず書房、2023年)、図版解説
日本人による研究書
川崎修『アレント――公共性の復権』(講談社、1998年、新版2005年)
『ハンナ・アレント』(講談社学術文庫、2014年)
太田哲男『ハンナ=アーレント』(清水書院・人と思想、2001年、新装版2016年)
杉浦敏子『ハンナ・アーレント』(FOR BEGINNERSシリーズ:現代書館、2006年)
杉浦敏子『ハンナ・アーレント入門』(藤原書店、2002年)
矢野久美子『ハンナ・アーレント――「戦争の世紀」を生きた政治哲学者』(中央公論新社〈中公新書〉、2014年)
牧野雅彦『精読アレント『全体主義の起源』』(講談社選書メチエ、2015年)
『ハンナ・アレント 全体主義という悪夢』(今を生きる思想:講談社現代新書、2022年)
中山元『アレント入門』(筑摩書房〈ちくま新書〉、2017年)
次ページ記事の検索おまかせリスト▼オプションを表示暇つぶしWikipedia
Size:112 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
担当:undef