ハンナ・アーレント
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^ 「革命(revolution)」という言葉は、もともとは天体の周期的で合法的な回転運動を意味していた。したがって、すべての革命の主役たちにとりついた観念、すなわち、自分たちは旧秩序にはっきりと終止符を打ち新しい世界の誕生をもたらす過程の代理人であるという観念ほど、「革命」という言葉のもともとの意味からかけ離れた観念はない。革命が初めて政治的用語として用いられたのは、1660年に英国で残部議会が打倒され、君主制が復古したときであり、それは、既に以前確立されたある地点に回転しながら立ち戻る運動を暗示するのに用いられた。非常に逆説的なことであるが、この用語が政治的、歴史的な言葉としてはっきり定まった事件、すなわち名誉革命は少しも革命とは考えられず、君主の権力が以前の正義と栄光を回復したものと考えられたのである。このように、「革命」という言葉はもともとは復古を意味し、したがって我々には革命の全く正反対と思われる事柄を意味する。イングランドにおける最初の近代革命の短命な勝利は正式には「一つの復古」として、すなわち、1651年の国璽の銘刻文にあるように「神の加護により復活した自由」として理解されていた。」
^ 「フランス革命の人々のうち、生き残って権力の座につくことができたのは、大衆の代弁者となって、法律を大衆が突き動かされていた力、根源的な必然性の力に委ねた人たちだけであった。フランス革命は、自由の創設から、苦悩からの人間の解放へとその方向を変えたとき、忍耐の障壁を打ち壊し、不運と悲惨の破壊力を解放したのである。」
^ルイ16世が「これは反乱だ」と叫び、側近のド・ロシュフコーが「いいえ陛下、これは革命です」と訂正したとき、革命という言葉の強調点が周期的な回転運動の合法則性からその不可抗力性に完全に移っている。不可抗力的な運動という概念は、19世紀になるとすぐに歴史的必然という概念に観念化されるが、フランス革命のページの最初から最後まで響き渡っている。理論面で言えば、フランス革命のもっとも深い帰結はヘーゲル哲学の近代的歴史概念の誕生に見られる。」
^ 「フランス革命の足跡を辿ったすべての人たちが、自分たちはフランス革命の人々の後継者であるばかりか、歴史と歴史的必然の代理人でもあると考えた。この結果、自由のかわりに必然が政治的かつ革命的な思想の主要な範疇となった。世界を火のなかに投じたのはアメリカ革命ではなくフランス革命であった。したがって、アメリカを含め、いたるところで「革命」という言葉の現代的な使い方にその含意と響きを与えたのはフランス革命である。」
^ 「ロシア革命の人びとがフランス革命から学んでいたことは、歴史であって活動ではなかった。彼らは、歴史の偉大なドラマが自分たちに割り当てる役ならどんな役でも演じる能力を身につけていた。だから、悪役以外に役がないばあいにも、ドラマの外に残されるくらいなら喜んでその役を引き受けたのである。彼らは歴史によって愚弄されたのであり、歴史の道化となったのであった。」
^ 「人はしばしば革命家たちの格別な無私の態度に感動するが、それを「理想主義」やヒロイズムと混同してはならない。フランス革命以来、革命家たちがリアリティ一般に対し、特に人間のリアリティに対して無感覚になったのは、彼らの感傷の際限のなさに原因がある。彼らは、自分たちの「教義」や歴史の進路や革命それ自体の大義のために、人々を犠牲にするのに何の良心の呵責も感じなかった。これはルソーの行動、その現実離れした無責任さと信頼性の無さに、きわめてはっきりとあらわれているけれども、ロベスピエールが分派闘争のなかに持ち込んだとき、はじめて重要な政治的要因となった。政治面で言えば、ロベスピエールの徳のもつ悪は、彼の徳がいかなる制限をも受けつかなかった点にあった。」
^ 「革命が勃発すると、問題になったのは経済的・財政的問題よりは人民であった。彼らは政治的領域にただ闖入してきただけでなく、そのなかへ崩れこんできたのである。彼らの要求は暴力的であり、いわば政治以前のものであった。自分たちを力強く迅速に救ってくれるものはただ暴力だけであるように見えた。」

出典^ “ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説”. コトバンク. 2018年2月12日閲覧。
^ a b c d 豊泉清浩「ヤスパースの全体主義批判における人間の尊厳について:ハンナ・アーレント『全体主義の起源』との関連において」文教大学教育学部紀要53,p 253-270, 2019.
^ 『ハンナ アレント』 - コトバンク
^ 『アーレント』 - コトバンク
^ Kazin "New York Jew" p.199
^ 『ハンナ・アーレント伝』p87
^ The Origins of Totalitarianism
^ 矢野久美子『ハンナ・アーレント「戦争の世紀」を生きた政治哲学者』中公新書、2014年、187-188頁。
^ 矢野久美子 『ハンナ・アーレント「戦争の世紀」を生きた政治哲学者』、中公新書、2014年、198頁。
^ 「悪夢と逃避」『アレント政治思想集成』 vol.1. p.182
^ 「近年のヨーロッパ哲学思想における政治への関心」 『アレント政治思想集成』p.300
^ a b c アーレント 2017, p. xix-xx..
^ a b アーレント 2017, p. 70.
^ アーレント 2017, p. 131-132.
^ a b c アーレント 2017, p. 208-211.
^ アーレント 2017, p. 230.
^ アーレント 2017, p. 231.
^ アーレント 2017, p. xiv.
^ 『反右派闘争』 - コトバンク
^ アーレント 2017, p. xv.
^ アーレント『全体主義の起源3 全体主義』「緒言」
^ 『革命について』
^ a b c d e アーレント 2022, p. 64-66.
^ 『革命について』『暴力について』
^ 資本論第1巻第7篇第24章第6節 「産業資本家の生成」
^ a b c d e f アーレント 1994, p. 24-27.

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