ハウスキーパーは女主人の代行者であり、料理人、小間使い以外の女性使用人すべてを統括する。家令が置かれる場合を除いて、ハウスキーパーは執事と同じく使用人としては最高位に位置し、メイドとははっきり地位が区別されており、未婚・既婚を問わず、ハウスキーパーは姓に「ミセス」を冠して呼ばれた。執事とハウスキーパーは家長と女主人、それぞれの雇い主に由来する別々の指揮系統に属するため、どちらが上とは言うことができないが、家長の代行という権威の点で執事がやや上であった。しかし公的な立場では執事に一歩譲るとしても、男性使用人自体が希少であり、屋敷内における実際上の影響力という点ではハウスキーパーに敵うものはいなかった。ハウスキーパーは下級の女性使用人に対する全ての権限を持っており、生殺与奪の権利を握っていたと言っても過言ではない。鍵束の音(施錠出来る全ての部屋の鍵を持ち歩く資格を得ていた)とともに屋敷を見回るハウスキーパーは年若い使用人(必ずしも女性使用人に限らない)の恐怖の象徴とも言われ、下級の使用人がハウスキーパーに反抗することは極めて少なく、場合によっては管理下にある若い使用人の給料を着服する不心得なハウスキーパーも存在した[6]。
脚注^ 当時でも、現在のように"Housekeeper"という語が曖昧な定義のまま使われる場合があった。ホーン、2005、p.84
^ Beeton, 2000, p.33
^ ホーン、p.87-91
^ 前掲書、p.85
^ この内訳はハウスキーパーを雇用する家庭より1ランク下の家庭(年収1000ポンド程度)。Huggettによればハウスキーパーを雇用可能な年収1500以上の家庭で雇用する使用人は男2人、女4人(Huggett, 1977, p.54)。
^ マーロウ、1994、p.176
参考文献
P.ホーン 『ヴィクトリアン・サーヴァント』 子安雅博訳、英宝社、2005年
S.マーロウ 『イギリスのある女中の生涯』 徳岡孝夫訳、草思社、1994年
Beeton, Isabella. Book of Household Management. Oxford : Oxford University Press, 2000
Huggett, Frank E. Life Below Stairs. London : Book Club Associates, 1977
関連項目
家事使用人
家庭内労働者
家政婦
メイド/英国(主にヴィクトリア朝)におけるメイドの種類
ヴィクトリア朝
社会史
バトラー
典拠管理データベース: 国立図書館