この曲はその後多くの指揮者と世界中のオーケストラ、しかしソロパートはほとんど全て鶴田錦史と横山勝也によって、何百回という演奏に恵まれた。小澤指揮サイトウ・キネン・オーケストラ、1991年のフィリップス録音のCD解説によれば、鶴田は「150回目くらいまでは数えていたが、後はわからなくなってしまった」という。
鶴田、武満、そして横山が亡くなった現在では、彼らの次世代の演奏家たちへとその演奏が受け継がれている。特に間の取り方や図形楽譜によるカデンツァの演奏方法は、伝統邦楽と同様にほぼ口伝による指導が行われたという[4]。ただし、武満が亡くなった直後のジョン・海山・ネプチューンの尺八による演奏会では、彼のカデンツァ部分があまりに従来の慣例と掛け離れてジャズ的であったため賛否両論に分かれ、当時の音楽雑誌などではほぼ不評であった。 本作はニューヨーク・フィル創立125周年記念の委嘱作だが、創立150年記念の際も武満に『系図』という作品を委嘱した。 『ノヴェンバー・ステップス』にはこの曲の他、当初『ノヴェンバー・ステップス第2番』と名付けられ、子供のための音楽と位置づけられたもう一つの曲があった。それは『ノヴェンバー・ステップス』とは大分印象が異なり、ずっと調性的でドビュッシーの『遊戯』からの影響があるため、当時の現代音楽の批評家からは退嬰と映り、批判的であった。題名は『ノヴェンバー・ステップス』があまりにも有名になったため、この第2番を『グリーン』と改題した。[5] その他、もう一つの同編成の楽曲として、琵琶、尺八、オーケストラのための『秋』が存在する(鶴田錦史による委嘱)。鶴田のためにはまた三面の琵琶のための『旅』も書かれており、鶴田が一人で演奏した多重録音によるレコードがある。(いずれも1973年。) 武満以外の作曲家で同様に琵琶と尺八の編成を持つ作品としては、石井眞木作曲の「琵琶、尺八、ハープ、フルートとオーケストラのための『ポラリテーテン』」(1973年、CD表記では「独奏者とオーケストラのための」という副題)、野平一郎作曲の「琵琶、尺八、リュート、リコーダーのための『河間地』」(2003年、日蘭友好400周年委嘱作品)などが挙げられる。
関連楽曲
脚注^ スコア『地平線のドーリア』音楽之友社、1968年、巻末の略歴による
^ ご存知ですか? 11月9日は武満徹「ノヴェンバー・ステップス」が初演された日です - 文春デジタル
^ 以上、軽井沢および題名についての出典は『音、沈黙と測りあえるほどに』武満徹・著、新潮社、1971年初版発行
^ 武満徹『秋』ほか、沼尻竜典指揮東京都交響楽団、デンオン録音CD解説
^ 『武満徹 響きの海へ』船山隆・著、音楽之友社 1998年初版発行