ノルデスチ音楽は、たとえそれが現代的なロックであれ、電子音であれ、ノルデスチ地域の風土、気質、歴史、伝統を色濃く醸し出すことで当地域のアイデンティティを謳歌する傾向があり、これはブラジル他地域にはあまり見られない特徴となっている。それ故、ノルデスチ音楽を理解することは、ノルデスチ地域の文化的気質(地域主義的側面)、植民地時代に先進地域だった歴史(歴史的側面)、民族音楽、あるいは祝祭時の舞踏として細々と受け継がれる諸々の民俗歌謡(民俗的側面)を理解することなしに成しえない。 伝統的歌謡を積極的に取り込み、また乾季の厳しい亜熱帯気候にある気候・風土・土地への哀愁(サウダージ)や奴隷制時代以降も尾を引く厳しい生活感を織り込むノルデスチ音楽の地域主義的側面は、アイデンティティや感情を言葉として表現するというこの地域が持つ文化的気質が音楽を通して表出したものとして理解される。これは、大農園領主への反抗や悲哀と言った感情の爆発を主に詩という形で発露する文化が存在したことに起因すると考えられる。 ブラジル音楽にとって、ノルデスチ音楽を取り入れることは、ブラジルの根源(Raize)を呼び覚ますこととブラジル人には理解される。 ノルデスチ音楽が直接に系譜を引く個々のルーツ音楽は、主に祝祭の音楽や舞踏として各地に残存しており、有名なバイーアのカーニバル(カルナヴァウ)、レシフェのカーニバル(カルナヴァウ)を中心にその他各地の小地域、民族、時には村落単位で個別に残存あるいは発展している。
地域主義的側面
また、ノルデスチ音楽にときおり見られる反権力、脱中心的性向は、植民地時代に経済的中心だった過去に比して、現代のノルデスチ地域は貧困に喘ぐ状態が長く続くというルサンチマン、並びに数度の独立運動が起こった地域主義的思想が背景にある。
歴史的側面
これは、ノルデスチ地域こそが植民地時代には首都(バイーア州サルバドール)もあった先進地域であり、ヨーロッパ諸文化を吸収・消化した草生期の伝統を未だに受け継いでいるという事実と、20世紀前半のブラジルのナショナルアイデンティティー確立期に、この地域からジルベルト・フレイレといった主導的学者たちを輩出したこと、国民的社会学者セルジオ・ブアルキ・ヂ・オランダがブラジルの根源(Raize do Brasil)としてこの地域を重視したことなどを考え合わせて理解される。
また、ノルデスチ音楽に顕著に見られるヨーロッパ音楽、アフリカ音楽、南米土着の音楽の混交および融合こそが脱植民地化したブラジル的なもの(サンバはアフリカ音楽的傾向が色濃い)として評価する向きがあり、これは、歴史的影響から他地域より多い黒人やインディオといった非ヨーロッパ人の割合が多いノルデスチ地域だからこそ、それぞれが独自の音楽的伝統をヨーロッパ音楽に融合しえたという側面がある。
民俗的側面
サルヴァドール(BA)のカーニバル(カルナヴァウ)からはトリオ・エレトリコに代表される独特のフレヴォやアフォシェやアシェ・ミュージックが生まれ、レシフェ(PE)のカーニバル(カルナヴァウ)からはフレヴォやマンギ・ビートが新たに生まれた。ノルデスチ音楽のルーツは、現代の営みとしてノルデスチ各地の祝祭で新たに生み出されつつある。
関連項目
ブラジル音楽
ラテン音楽
民族音楽
ワールドミュージック
ラテンアメリカ文学
ブラジル関係記事の一覧
映画『モロ・ノ・ブラジル』
映画『小さな楽園』
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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