ニョルズは海の神とされ、漁業や魚の取り引きにおける守護者であった。冬の気候の厳しい北欧では夏の間しか漁業ができないことから、夏の神としての面も持っていた。また農業に適した土地が夏のフィヨルド周辺にあったことから、ニョルズは農業においても豊穣の神として崇められた[15]。北欧神話の海神には他にエーギルがいるが、エーギルが海の自然現象を象徴する面が強いのに対し[16]、ニョルズは船や港、貿易、漁業に関係が深い。彼の住居はノーアトゥーンといい、その名前は「港」を意味し、場所も海に近いとされている[17]。前述のスカジとの結婚が破綻したのは、山育ちのスカジが海鳥の鳴き声を嫌ったことも一因であった[6]。ニョルズは天のアースガルズとノーアトゥーンとに住み、エーギルが海で暴風雨を起こすと彼を止めるためにノーアトゥーンに戻ったともいわれている[18]。ある時にはエーギルに向かって「妻のラーンの網を裂く」と一喝したところ、エーギルは引き下がり、荒れ狂っていた海面が静かになったという[19]。
女神ネルトゥスとの関係エミール・デープラーによるNerthus(1905年)。
女神ネルトゥスについては、さまざまなゲルマン民族の部族によって敬われていた神であることが1世紀にローマの歴史家タキトゥスによって著書『ゲルマニア』に記述されているが、この女神とニョルズはしばしば同一視されている[20]。ニョルズの名がアイスランドの文献に現れるまでには約千年の時間がたち、かつ性別の違いがあるものの、ネルトゥス (Nerthus) の名はニョルズの名と語源を同じくしている。またニョルズの子であるフレイとフレイヤのそれぞれの名前の語源も非常に近いものであり、この2名が双子の兄弟姉妹であることから、ニョルズとネルトゥスも性の異なる双子である可能性が指摘されている[21]。結果的に、『ロキの口論』で語られる、ニョルズがフレイヤとフレイをもうけた相手とされる無名の姉妹と、ネルトゥスが同一視された[22]。
脚注17世紀の写本『AM 738 4to』に描かれたニョルズ。1832年に描かれたニョルズ。.mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}ウィキメディア・コモンズには、ニョルズ