ニュー・ウェーブ_(SF)
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[14]ジュディス・メリルの観測では「『ニュー・ワールズ』は、当時のニューウェーブの潮流を記録した、出版される温度計だった。アメリカでは熱い議論が繰り広げられた。イギリスではそれを興味深く見ていた人々も、そうでない人々もいたが、アメリカではそれを異端とするか素晴らしい革命とするかの両論があった。」[15]という。
影響

『ニュー・ワールズ』に発表された中では、T.M.ディッシュ『虚像のエコー』(1966年)、『キャンプ収容』(1967年)、S.R.ディレーニイ「時は準宝石の螺旋のように」(1969年)、H.エリスン「少年と犬」(1969年)、などが傑作として残っている。ノーマン・スピンラッドが1967年に連載した『バグ・ジャック・バロン』は全編暴力と性の描写に埋められた問題作で、多くの批判に晒された。またバラードは破滅もの長編『燃える世界』『結晶世界』に続いて、前衛的文芸誌『Ambit』メンバーとの交流を経て、1966年から「残虐行為博覧会」など自ら「濃縮小説」と呼ぶ実験的で難解な短篇小説群を発表し、1970年代になると『クラッシュ』『コンクリートの島』『ハイ-ライズ』のテクノロジー三部作など新しいスタイルへと移行していく。B.オールディスもまた『世界Aの報告書』(1968年)、『頭の中の裸足』(1969年)を経て、言語実験小説『マラキア・タペストリー』(1976年)へと完成度を深めて行った。

『ニュー・ワールズ』では、ラングドン・ジョーンズ、パミラ・ゾリーン、M・ジョン・ハリスンジョン・スラデックといった作家が活躍し、ニュー・ウェーブには批判的なイアン・ワトスンもここでデビューした。しかし『ニュー・ワールズ』は実験性が過度になって勢いを失って行き、1971年頃には月刊から季刊へと移行する。

アメリカでは、デーモン・ナイト編のアンソロジー・シリーズ『オービット』が1966年から発行され、多くの新しい作家を育てた。若手だけでなく既存の作家でも、ロバート・シルヴァーバーグはニュー・ウェーブの影響で実験的でシリアスな作風に変わり、ニュー・シルバーヴァーグと呼ばれた。1950年代から複雑で特異な作品を発表していながら注目度の低かったフィリップ・K・ディックは、ニュー・ウェーブの視点がもたらされたことで高い評価を得るようになっていった。主流文学の作家であったカート・ヴォネガットや、ジョン・バーストマス・ピンチョンらのSF的な題材の作品も、SF界からはニュー・ウェーブという位置付けで見られるようになる。また1960年代のカウンター・カルチャーの興隆に伴い、生態学的視点を持つフランク・ハーバートデューン』(1965年-)や、コミューン的な共同体を描くR.A.ハインライン異星の客』(1961年)がベストセラーとなっている。
^ Gunn, James. "Alternate Worlds: 1949?1965", in Alternate Worlds. The Illustrated History of Science Fiction (N.J.:Prentice-Hall, 1975)
^ Kyle, A Pictorial History of Science Fiction, pp. 119?120.
^ 1950年代にはR・A・ハインラインアイザック・アジモフらにより従来のSFに社会科学的なテーマを盛り込んだ傑作が多数生まれ「SFの黄金期」と呼ばれる。
^ Ballard, J. G. (1962) "Which Way to Inner Space?" New Worlds Science Fiction, May. Reprinted in A User's Guide to the Millennium: Essays and Reviews, HarperCollins, London (1996)
^ Aldiss, Brian and David Wingrove (eds.). Trillion Year Spree. The History of Science Fiction (London: Paladin Grafton, 1986)
^ Brian Aldiss and Harry Harrison (eds.) Decade the 1950s (London: Pan Books, 1977)
^ Ballard, J. G. "Myth Maker Of The 20th century" New Worlds, No. 142, May/June 1964
^ Roberts, Adam. The History of Science Fiction (New York: Palgrave Macmillan, 2005)
^ Brackett, Leigh (2000) Martian Quest: The Early Brackett, Haffner Press (introduction)
^ Greenland, Colin. The Entropy Exhibition (London: Routledge & Kegan Paul, 1983 ISBN 978-0-7100-9310-3). Chapter: "The 'Field' and the 'Wave': The History of New Worlds" in James Gunn and Matthew Candelaria (ed.), Speculations on Speculation. Theories of Science Fiction (Maryland: Scarecrow Press Inc., 2005). Page number refer to this reprint
^ 伊藤典夫訳、『SFマガジン』1997年3月号


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