1920年代、ニューヨーク市はアフリカ系アメリカ人の大移動で南部から来たアフリカ系アメリカ人にとっての主要な行き先となった。1916年までに、ニューヨーク市に住むアフリカ系都市移住者は北アメリカで最多となった。禁酒法時代にはハーレム・ルネサンスが栄え、それと同じころ急激な経済成長にともない超高層ビルが競うように建てられ、街の風景は大きく変わった。1920年代初頭にニューヨーク市はロンドンを抜いて、世界で最大の人口を擁する都市となった。またニューヨーク都市圏の人口は、1930年初頭に1,000万人を超え、人類史上最初のメガシティとなった[40]。世界恐慌の時代には、改革派のフィオレロ・ラガーディア(Fiorello LaGuardia)が市長に選出され、市政を牛耳ってきた利権団体タマニー・ホールは80年に及ぶ政治的支配を失った[41]。
第二次世界大戦からの兵士の復員によって戦後経済の勃興が始まり、クイーンズ東部で広大な住宅地域の開発が進んだ。ニューヨークは戦争の傷跡を見せずに、世界の一流都市へと成長した。ウォール街はアメリカを世界経済の覇者へと押し上げ、国際連合本部ビル(1950年完成)の設置はニューヨークの政治的影響力を知らしめた。ニューヨークで生まれた抽象表現主義は、この街をパリに代わる世界の芸術の中心地へと変えた[42]。9.11テロの前のロウアー・マンハッタン(2001年8月)
1960年代のニューヨークは経済的停滞・犯罪率の上昇・人種間対立の高まりに苦しみ、1970年代にピークを迎えた。1980年代は、金融業の盛り返しによって市の財政は改善を見せた。1990年代までに人種間対立も緩和し、犯罪率は劇的に下落した。そしてアジアとラテンアメリカからの新しい移民の波が訪れた。シリコンバレーのような新しい産業部門も興り、ニューヨークの人口は2000年の国勢調査で史上最高に達した。
ニューヨークは2001年9月11日の同時多発テロの現場のひとつとなり、ワールド・トレード・センターの崩壊で、3,000人近くの人が命を落とした[43]。跡地には2014年に開業した1 ワールドトレードセンター(旧称フリーダム・タワー)を含む新たな高層ビルが慰霊の広場やテロに関する記念館を囲む形で建設されている。現在も工事は続いており、再開発の完了は2028年頃を予定している。
自然
地勢Hamilton Parkから望むマンハッタン島ニューヨーク都市圏の中心部を写した衛星写真。ここに写った地域に1,000万人以上が暮らす。
ニューヨーク市は北東部にあるニューヨーク州の南東部に位置し、ワシントンD.C.とボストン(マサチューセッツ州)のおよそ中間にある[44]。緯度経度は北緯40度46分 西経73度54分 / 北緯40.767度 西経73.900度 / 40.767; -73.900で、緯度は日本の青森市とほぼ同じ。ハドソン川の河口に当たる。ハドソン川は、天然の港に流れ込み、さらに大西洋へつながっており、街の交易都市としての発展に貢献してきた。ニューヨーク市の大部分はマンハッタン・スタテンアイランド・ロングアイランドという3つの島の上にある為陸地面積が狭く、人口密度が高い原因となっている。
ハドソン川はハドソン渓谷[45]を通ってニューヨーク湾に流れ込み、河口はニューヨーク市とトロイ市の間の三角江となっている[46]。またハドソン川によってニュージャージー州とニューヨーク市が隔てられている。イースト川(実際には海峡)はロングアイランド湾から流れ、ブロンクスおよびマンハッタンと、ロングアイランドとを隔てている。ハーレム川(実際にはイースト川とハドソン川をつなぐ海峡)は本土の一部であるブロンクスと、マンハッタンとを隔てている。
市の地形にはかなり人の手が加わっている。オランダ植民地時代から、川岸に沿って大規模な埋め立てが進められたためである。埋め立てがもっとも進んだのはロウアー・マンハッタンであり、1970年代から1980年代にかけてバッテリー・パーク・シティの開発が行われた[47]。自然の地勢は、特にマンハッタンにおいては平坦にならされた[48]。マンハッタンはもとは丘の多い地形で、非常にしっかりとした岩盤(マンハッタン片岩)が地下にあるため、超高層ビルの建設に適した地形である。
市の総面積は1,214km2、うち水面面積は425km2、陸地面積は789km2である[8][9]。標高がもっとも高いのはスタテンアイランドのTodt Hillの124.9メートルであり、これはメイン州以南の東海岸の中で最高地点である[49]。その頂上付近は、スタテンアイランド緑地帯(英語: Staten Island Greenbelt)の一部をなし、ほとんど森林に覆われている[50]。 ケッペンの気候区分によれば、ニューヨーク市の気候は温暖湿潤気候(Cfa)である。日照のある日(晴れまたは一時曇り)は年平均234日ある[51]。0℃等温線を基準とすると、温帯湿潤気候に含まれる大都市としては、北アメリカの中では最北に位置する。 夏期は一般に高温・湿潤で、平均最高気温は26度から29度、平均最低気温は17度から21度である。32度を超える日は年平均19日ある。冬は寒く、陸から海へ吹く卓越風により、大西洋の影響は限定されているが、それでも大西洋の存在により内陸北アメリカの同緯度の都市(シカゴ、ピッツバーグ、シンシナティなど)に比べれば温暖になっている。もっとも冷え込む1月の平均気温は0度であり、零下になる日は年平均75日、また零下15℃を下回る日は年平均1日ある。春と秋の気候は変わりやすく、肌寒い日から暑い日まであるが、おおむね湿度は低く、快適である[51]。 年平均降水量は1,180ミリメートルで、季節による降水量のばらつきは少ない。年平均積雪量(積雪の深さ累計)は71センチであり[51]、それほど多くはないが、年によってはノーイースターと呼ばれる爆弾低気圧により積雪50センチを超えるような大雪となることもある。
気候