ニューヨーク市地下鉄
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建設にあたって、ビーチは馬車業者や政敵で当時市政を牛耳っていたタマニー協会の「ボス」ことウィリアム・M・トウィードの妨害を避けるため、郵便物用の気送管と偽って許可を取得し人目につかないよう夜間にひっそりと工事を進めた[13][11][10][6]。トンネルは市庁舎の真横、ブロードウェイとワーレン・ストリートの交差点からマレー・ストリートまでの1ブロックだけで延長はわずか312フィート(95メートル)しかなかったが、注目を集めるため駅の待合室には豪華な装飾が施されていた[11][14][6][15]

ビーチが1870年2月28日にトンネルを一般公開すると地下鉄はたちまち市民の注目の的となり、1873年4月にはトンネルをセントラル・パークまで延長する計画が許可された[14][16][17][15]。しかし、同年に発生した1873年恐慌の影響で必要な資金を調達できなくなったこと、また空気圧による制御が難しいという技術的な問題があったことなどから支持を失い、資金を使い果たしたビーチは1874年に運行を停止し、トンネルを封鎖した[16][18][17][15]

その後、ビーチの地下鉄は人々から忘れ去られたが、1912年になりBMTブロードウェイ線シティホール駅の建設現場で偶然発見され、取り壊されて同駅の一部となった[18][19][15]
高架鉄道の発達

ビーチの試みが失敗に終わった一方、地下鉄開業以前のニューヨークでは高架鉄道が発達した。最初の高架鉄道は技師のチャールズ・ハーヴェイがグリニッジ・ストリートに建設したウェストサイド・アンド・ヨンカーズ・パテント鉄道(West Side and Yonkers Patent Railway,後のIRT9番街線[20])である[21][22][15]

この路線は全長4分の1マイルの高架式ケーブルカーで、ビーチの地下鉄同様デモンストレーションを目的とし1867年7月3日に最初の試験走行を行った[22][15]。試験結果は良好で、ハーヴェイは路線を9番街を北上してマンハッタンの北端まで延伸する許可を得たが、1869年に発生した金融危機によって同社は破産宣告され、1871年にニューヨーク高架鉄道 (New York Elevated Railroad Company) として再出発し蒸気機関車による運行を開始した[23][24]

その後、1880年までにニューヨーク高架鉄道が3番街と9番街、新たに設立されたメトロポリタン高架鉄道 (Metropolitan Elevated Railway) が2番街6番街に高架鉄道を開業させ、1879年には両社はともに鉄道王ジェイ・グールドの支配するマンハッタン鉄道 (Manhattan Railway Company) の傘下に統合された[25][26][27][28][24]。高架鉄道は1880年には6803万1757人、1890年には1億8820万3877人を輸送するようになっていたが、騒音や煙を撒き散らすとともに街路への採光を妨げ、激しい混雑や運行速度の遅さなど都市高速鉄道としては問題が多く、住民の反対運動を招くことになった[29][28][19]
地下鉄の開業
地下鉄建設へIRT路線図(1906年)1904年10月27日に最初に開業した駅の一つIRTレキシントン・アベニュー線シティホール駅

高架鉄道への不満が高まるに連れて地下鉄への関心も次第に高まり、1888年に当時のニューヨーク市長エイブラム・ヒューイットは、ニューヨーク市自らが地下鉄を建設することを決定した[30]

ヒューイットは市当局や納税者の負担を抑えつつ地下鉄網を整備するため、市の負担で地下鉄を建設した後運営権を民間企業にリースする方法を考案し、土木工事の請負業者であるジョン・B・マクドナルドが落札して1900年2月21日にコントラクト・ワン (Contract 1) と呼ばれる契約を交わした[31][32][30][33][34]。しかし、マクドナルドは契約に必要な担保を用意できなかったことから、資産家のオーガスト・ベルモント・ジュニアの支援を受けざるをえなくなり、実権はベルモントが握り、マクドナルドは単なる請負人という立場にとどまることになった[32][33][34]。コントラクト・ワンに基づく路線の建設工事は1900年3月24日に開始され、1902年には完成後の受け皿としてインターボロー・ラピッド・トランジット (Interborough Rapid Transit Company、IRT) が設立された[32][33][34]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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