ニューモシスチス肺炎
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膠原病におけるニューモシスチス肺炎ではトリメトプリムとして10mg/kg/day以下(錠剤で4?6錠)で通常用量と同等の治療効果でかつ副作用が少ないとの報告されている[10]。最近のメタアナライシスでも10mg/kg/day以下の低用量治療は通常用量と同等の治療効果でかつ重篤な副作用が少ないと報告されており、ST合剤の至適用量設定の臨床試験が期待される[11]

また、予防投与の場合は連日1錠または1日2錠を週に3回で投与する。予防投与の場合、発熱や皮疹などST合剤による薬剤アレルギーのため継続困難な場合は、一度中止し、症状軽快後に脱感作療法後に再導入が検討される。脱感作療法を行うことにより70%以上の症例で予防量は再導入可能となる[12]。予防量においても1日0.5錠投与や週に2回(1回1錠)などの低用量での予防も報告されている。
ペンタミジン

ペンタミジンは1930年代後半にイギリスで開発された抗原虫薬である。当初はトリパノソーマ症やリーシュマニア症に有効性が見出されていた。1960年代にニューモシスチス・イロベチイに有効であることが判明した。商品名はベナンバックス®であり注射薬と吸入薬がある。PCP治療では注射薬を用いるが添付文章で記載された4mg/kg/dayでは腎障害が高率に出現する。米国では副作用を理由に3mg/kg/dayでの治療も認められている。吸入薬は予防薬としては優れているが治療薬としては推奨されていない。
アトバコン

ST合剤で治療を開始し、ST合剤の変更が必要になった場合はアトバコンへの変更がひとつの選択肢と成る。商品名はサムチレール®である。不快な味がすること、高価であることが弱点である。
副腎皮質ステロイド

HIV-PCPでは副腎皮質ステロイドの有効性が確立している。米国疾病管理予防センター(CDC)はガイドラインを作成している[13]。それによるとPaO2≦70Torr以下またはA-aDO2≧35Torr以上のHIV-PCP患者が副腎皮質ステロイドの適応とされている。投与時期は抗菌薬開始と同時で、できるだけ早期、遅くとも抗菌薬開始3日以内とされている。投与スケジュールはPSL80mgを分2で5日間、40mgを分2で5日間、20mgを11日間の合計21日間というものである。Cochrane summaryによると副腎皮質ステロイドはHIV-PCPに対して1ヶ月死亡率を40%、3ヶ月死亡率を30%低下させる。また人工呼吸器使用を60%低下させると記載している。Non-HIV-PCPでは理論的にはより副腎皮質ステロイドが効果的と予想されるが後ろ向き検討では有効性を示さないという報告が多い。
予防

PCP予防を行うべきかどうかは背景となる疾患によって異なる。予防に用いられる標準薬はST合剤である。予防投与は連日1錠または1日2錠を週に3回で投与する。発熱や皮疹などST合剤による薬剤アレルギーのため継続困難な場合は、一度中止し、症状軽快後に脱感作療法後に再導入が検討される。脱感作療法を行うことにより70%以上の症例で予防量は再導入可能となる[12]。ST合剤の脱感作スケジュールは以下のようなものが知られている。発熱や発疹が出現した場合はその時点で増量を中止し、同量で維持すると症状が消退する。

投与日朝夕
1日目0.005g0.01g
2日目0.02g0.04g
3日目0.1g0.2g
4日目0.4g0.8g
5日目1.0g1.0g

HIV陽性者

PCPの罹患歴がある、あるいはCD4陽性リンパ球<200/μl、口腔内カンジダ症発症がPCP予防内服の適応となる。
造血幹細胞移植

同種造血幹細胞移植の場合には移植後6ヶ月までは予防が行われる。また移植後6ヶ月経過した時点でも免疫抑制薬が投与されている場合は予防は継続する。造血幹細胞の生着を妨げる可能性があるため、通常は生着までは使用されない。造血幹細胞自家移植の場合は造血幹細胞同種移植よりはリスクが低い。しかし免疫不全の程度が強いと判断された場合は予防が行われる。移植後3?6ヶ月予防を継続する。免疫抑制薬投与がされている場合は予防を継続するのは造血幹細胞同種移植と同様である。
臓器移植

全ての固形臓器移植患者において、移植後少なくとも6?12ヶ月はPCPの予防が推奨される。
癌患者

癌患者では急性リンパ性白血病、アレムツマブ治療、プリンアナログやその他のT細胞破壊性治療、長期の副腎皮質ステロイドプレドニゾロン(PSL)換算で1日20mgを4週間以上投与)、デモゾロマイドと放射線治療の併用の場合にPCP予防が推奨される。乳癌肺癌胃癌腎細胞癌などでPCP発症の報告があるが発症頻度が低いため予防の適応の有無をきめることは困難である。
膠原病

膠原病でのPCPの頻度が1?2%と少なくST合剤の副作用が30%と比較的高いことから膠原病患者全例に一次予防を行うことは推奨されない[14]。PCPリスクが3%を超える場合に投与するべきと考えられている[15]。DemoruelleらはPCPのリスク因子を4つあげ、そのうち2つを認められる場合は予防を勧めるとコメントした[16]。その4つの因子は、(1)PSL換算で20mg/day以上を4週間以上投与する時、(2)生物学的製剤を含めて2種類以上のDMARDsを投与する時、あるいは同時に複数の免疫抑制薬を投与する時、(3)総リンパ球数が350/μl未満、(4)既存の肺病変である。厚生労働省では年齢50歳以上で下記3つのいずれかを認めた場合はPCP一次予防を推奨している。その3つは(1)PSL換算で1.2mg/kg以上の投与、(2)PSL換算で0.8mg/kg以上に加えて免疫抑制薬の併用、(3)免疫抑制薬使用下で総リンパ球数500/μl以下である。

疾患修飾性抗リウマチ薬 (DMARDs) によるニューモシスチス肺炎は、抗リウマチ薬開始時にST合剤1錠を5日間投与で予防可能であることが示唆されている[17]
原発性免疫不全疾患

重症混合型免疫不全、特発性低CD4血症、高IgM症候群などでは予防投薬の適応となる。
ステロイド投与中患者

PSL換算で20mg/day以上を4週間以上投与されておりこれに加えて他の免疫不全(血液疾患、他の免疫抑制薬)がある患者ではPCP予防が必要である。
脚注[脚注の使い方]^ Robert F.Miller:Pneumocystis carinii in non-AIDS patients. Current Opinions in infectious diseases.1999 Aug;12(4)371-7
^ Clin Microbiol Rev. 2012 Apr;25(2):297-317. .mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}PMID 22491773


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