当初、ニューモシスチスは原虫と考えられており、その命名規則には国際動物命名規約が採用されていた[12]。国際動物命名規約に従った場合、iを重ねない P. jiroveci が正しい学名となる[45]。その後真菌へ再分類されたことから、国際藻類・菌類・植物命名規約が採用され、学名は i を重ねる[46] Pneumocystis jirovecii へと変更された[47]。現在国際藻類・菌類・植物命名規約では、1976年の論文を命名の典拠として認め(これにより1999年の再提案は命名典拠としては不要になった)、さらに規約中の第45条・用例7 (Article 45, Ex 7) で学名変更の一例として触れている[48]。P. jiroveci のタイプ標本(レクトタイプ(選定基準標本)ならびにエピタイプ)は、1960年代に行われたヒトの剖検例から採取されたものだった[49]。現在ヒト由来株に P. carinii との学名を使うことは誤りであるが、この学名はラットからの分離株をタイプ標本として、ラット由来株の学名として用いられている[49]。しかしながら、イロベチイとカリニの種差が遺伝的に証明されたことから、欧米では形態学的な差異が必要だとして学名に異議を唱える学者もいる[7]。
ヒト感染を起こす種の学名変更により、かつて「カリニ肺炎」と呼ばれていた疾患は、「ニューモシスチス肺炎」(Pneumocystis (jirovecii) pneumonia) と改められた[34][50][51]。英字では「ニューモシスチス・カリニ肺炎」を意味する "Pneumocystis carinii pneumonia" の頭文字を取って "PCP" という略称が広く使われていたが、学名変更に伴った混乱を避けるため、便宜上頭字語は「ニューモシスチス肺炎」を意味する "Pneumocystis pneumonia 由来として扱われている[34][52][53]。 イロベチイはヒトに対する絶対寄生菌であることから培養不可能である。このためニューモシスチス属のゲノム解析は、多くが実験用ラットに感染させ維持できるニューモシスチス・カリニ
ゲノム解析
現在はニューモシスチス・カリニと、イロベチイなどニューモシスチス属に含まれる他菌種とのゲノム比較ができるウェブサイトも存在する[59]。イロベチイのゲノムは、気管支肺胞洗浄液からのサンプルでシークエンスされた[60]。この論文によれば、イロベチイのゲノムはグアニン・シトシン含有量が少なく、病原性因子、またアミノ酸生合成酵素の多くを欠いていると指摘されている[60]。 初めてニューモシスチス属の存在を報告したのはブラジルの微生物学者カルロス・シャーガス
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