ニホンカモシカ
[Wikipedia|▼Menu]
広葉草本、木の葉、芽、樹皮、果実などを食べる[5][4]。下北半島では114種、飛騨山脈ではササ属Sasaやスゲ属を含む95種の植物種を食べていた報告例がある[3]日光国立公園でのメスの遺骸の胃内容物調査では同定が可能なものはチシマザサナナカマドが多く、オオカメノキクロベコメツガカエデ属・地衣類などが検出された例もある(クロベ・コメツガについては地衣類を食べた際に樹皮や落葉を副次的に摂取したとする意見もある)[9]。積雪時には前肢で雪を掘り起こして食物を探す[6]

感染症はパラポックスウイルス属(主にオーフウイルス)による、伝染性膿疱性皮膚炎が挙げられる[10]。パラポックスウイルスによる感染は1976年に秋田県で確定診断が報告(1973年に岩手県で確定診断ではないものの感染・感染した可能性のある個体の報告例がある)されて以降は日本各地で散発的な流行が見られ、1982年までに東北地方6県、後に関東地方、2012年には京都府・和歌山県にかけて感染地域が拡大している[10]。直接接触だけでなく、パラポックスウイルスは環境抵抗性が強いことからマーキングや繁殖行動で擦りつけた箇所から他の個体へ伝搬していると考えられている[10]。例として岐阜県では1981 - 1983年の冬季の調査では153頭で全て陰性反応だったが、1983 - 1984年では189頭のうち1頭が陽性反応、1984 - 1985年では237頭のうち75頭で陽性反応が見られた[10]。感染した個体は口唇・耳介・眼の周囲・蹄の間などに赤色丘疹・結節・び爛・痂皮を形成し、潰瘍や腫瘍にまで発展することもある[10]。患部を木などに擦りつけることで傷つき、ウイルスの感染の増大や寄生虫・ウジなど昆虫による二次感染の危険性が増大する[10]。口唇の感染による摂食困難・蹄間の感染による歩行困難などにより衰弱し、肺炎の併発や二次感染によって重症化し死に至ることもある[10]。本州および九州では疥癬の感染が報告されている[10]。岐阜県で1981 - 1983年に捕殺された455頭の抗体検査では、414頭のうち25頭でトキソプラズマ、156頭のうち20頭でレプトスピラ症(反応したのは全てワイル病抗原)、197頭のうち21頭でオウム病の抗体が検出された報告例もある[11]

繁殖様式は胎生。10 - 11月に交尾を行う[7][4]。妊娠期間は215日[4]。5 - 6月に主に1回に1頭の幼獣を産むが[7][6]、複数頭を出産することや毎年出産することは少ない[4]。幼獣は生後1年は母親と生活する[5][4]。生後1年以内の幼獣の死亡率は約50 %で、特に積雪が多い年は死亡率が高くなる[6]。オスは生後3年で性成熟し、メスは生後2 - 5年(平均4年)で初産を迎える[4]。寿命は15年だが、雌雄共に20年以上生きた個体もいる[4]。飼育下での記録は33歳(立山博物館カモシカ園「クロ」)である[12]

@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}崖地を好み、犬に追われた場合など崖に逃げる傾向が強い。好奇心が強く、人間を見に来ることもあると言う。「アオの寒立ち」としても知られ、冬季などに数時間、身じろぎもせずじっとしている様子が観察される。理由は定かではないが、山中の斜面を生活圏としていることから、反芻(はんすう)をするときに、寝転ぶ場所がないからともいわれている。カモシカの糞はシカの糞とほぼ同じ形で、楕円形である。野外において、この両者を見分けるのは簡単ではない。一つの目安はシカは糞を少数ずつ散布するが、カモシカは塊を作ることである。盛り上がった糞塊が作られていれば、カモシカの可能性が高い。これは、シカは歩きながら糞をするのに対してカモシカは立ち止まって糞をする傾向があるからである。森下正明は糞塊からカモシカの個体数推定を行うモデルを造った[要出典]。
人間との関係

『日本書紀』皇極天皇2年(643年)10月2日条に、童謡(わざうた)が歌われており、「岩上に 小猿米焼く 米だにも たげてとおらせ 山羊(カマシシ)の老翁(おじ)」と記され、老人の踊りをカマシシ=カモシカに例えている。近世期の『和漢三才図会』の「獣類」の項にも図と共に記載があり、音読みで「リンヤン」と読み、表記は「九尾羊」とも記し、羊に似ているとする[要出典]。

後述のように保護の対象とされているが、駆除された個体が許可を得たうえで食用とされたり毛皮が利用されたりすることもある[1]。長野県の樋口五反田遺跡で1972年から翌年までに行われた調査では、弥生時代の住居跡から火を通した本種の骨の発掘例があり、少なくともこの地域では弥生時代にはすでに食用とされていた可能性もある[13]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:56 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef