ニトログリセリン
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爆発性

ニトログリセリンは低速爆轟を起こしやすいため、衝撃感度が高く小さな衝撃でも爆発しやすい。そのため、アセトンなどと混ぜて感度を下げるか、ニトロゲル化して取り扱う。

ニトログリセリンは8 °Cで凍結し、14 °Cで融けるが、一部が凍結すると感度が高くなる。つまり、液体のときよりも弱い衝撃でも爆発しやすくなる。膠化した物でも、凍結と解凍を繰り返すと液体のニトログリセリンが染み出して危険である。ダイナマイトなどに加工された状態であっても凍結は避けなければならない。自然な気温で凍結したり溶けたりしないように保管時の温度管理は必須である。

融かす場合には湯煎するなどして間接的に加熱する。直接火にかけると火にあたっている部分の温度が高くなって微少気泡が発生し、そこがホットスポット となって爆発する。そのため、気泡が入らないように瓶の縁に空気を残さない、かき混ぜない、振らない、などの取り扱い上の注意が必要である。これらの問題は膠化してしまえば無くなるが、膠化する作業中に微少気泡が入ると同じように爆発するので加工には注意が必要である。
事件事故

朝鮮戦争中、冬の韓国の寒冷地で、発射薬に用いられていたダブルベース火薬(後述)の感度が上がり、小銃弾薬が爆発した。

フィリピン航空434便爆破事件 - 使用された薬品がニトログリセリンである。

2022年3月1日午後1時50分頃、旭化成グループの「カヤク・ジャパン」東海工場(宮崎県延岡市水尻町)で、爆発事故が発生し男性社員1人が死亡、「旭化成エンジニアリング」の男性社員1人が負傷した[2][3][4]

用途
医薬品

血管拡張作用があるので狭心症の薬になる[5][6]。一般に硝酸エステルが血管拡張薬として利用されるようになった始めのもので,アルフレッド・ノーベル自身も晩年には薬として使用していたという逸話がある。その生理作用の機構は長らく不明であったが、硝酸エステルから分解で生じる一酸化窒素NOの作用であることが解明されて、1998年のロバート・ファーチゴット、ルイ・イグナロ、フェリド・ムラドのノーベル医学・生理学賞に至った。

体内で加水分解されて生じる硝酸が、さらに還元されて一酸化窒素 (NO) になり、それがグアニル酸シクラーゼを活性化し 環状グアノシン一リン酸(cGMP)の産生を増やす結果、細胞内のカルシウム濃度が低下するため血管平滑筋が弛緩し、血管拡張を起こさせることが判明している。

現在医薬品として用いられている物は硝酸イソソルビドなどのニトロ基を持つ硝酸系の薬品が主である。経口投与するとニトログリセリンは初回通過効果のため代謝され効果を示さない。ニトログリセリンは経皮や舌下投与でないと有効でない。また半減期が短く薬効が不安定である。医薬品のニトログリセリンを使用する場合であっても添加剤を加えて爆発しないように加工されている。ただし、それらを加工して爆薬を作ることは可能である。
副作用や禁忌

血管拡張作用の結果として血圧低下が起こるため、アルコールやシルデナフィル(バイアグラ)などとの併用は禁忌である。
爆薬・火薬

加熱や摩擦によって爆発するため、爆薬としてダイナマイトの原料になる。

ニトロセルロース(強綿薬=硝化度の高い綿火薬)にニトログリセリンを加えて錬ってゲル化(膠状)したものをダブルベース火薬(それをさらに炭素の粉でコーティングした粒を拳銃や小銃の薬莢内に入れて発射薬として)、さらにニトログアニジンを加えた物をトリプルベース火薬と呼び、主に大口径火砲の装薬として使用される。
法規制

日本の消防法において、第5類危険物(自己反応性物質)である硝酸エステル類に属する。

アメリカ合衆国では、医薬品のニトロも爆薬・兵器として扱われ、敵対国への輸出は禁止されている。
物語に登場するニトログリセリン

ニトログリセリンの性質は様々な物語で取り上げられている。アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督のサスペンス映画恐怖の報酬』(1953年)では、油田火災を爆風で消火するため、ニトログリセリンをごくごく普通のトラックで運ぶことになった男たちの恐怖が描かれている。また、1978年にはウィリアム・フリードキン監督によりロイ・シャイダー出演でリメイクされている(恐怖の報酬)。

稲垣理一郎著「Dr.STONE」という漫画にも登場している。
その他
結晶化に関するデマ

ライアル・ワトソン「生命潮流」に書かれたとする、グリセリンの結晶化に関する「間違った逸話」が、ニトログリセリンに置き換えられて語られることもある。「……熱力学に詳しいある二人の科学者が偶然に結晶化したグリセリンを入手し、これを種結晶にしたら実験室の全グリセリンが密閉容器内のものを含めて自然に結晶化し、その日を境に世界中のグリセリンが 17.8 °C で結晶化するようになった……」という、結晶を作り難いグリセリン[7]を元にした「伝説」をニトログリセリンに置き換えて脚色したものである。もちろん前述のとおりニトログリセリンは面倒な手順を経ることなく凍るため、凍結・解凍による小銃弾の爆発事故も起きている。「グリセリン#結晶化に纏わる都市伝説」も参照
亜酸化窒素との混同について


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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